そういう人に私はなりたい
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今日の朝は、自分が昔どのような人間だったかを思い出すことがありました。昔と言ってもアメリカの上場企業で役員をしていた頃の私です。その頃の私は基本的には自分の事しか考えていなかったと思います。社会的には同僚のみんなとうまくやってはいましたが、人の事よりまずは自分の事でしたね。それで社会的には何の問題も無かったのです。
そしてそれが別に悪い事でもなく、みんなそのように生きているので、自分も当たり前のようにそのように生きていたと思います。もちろん人のためにしたことも色々ありました。そして困っている人の事を可哀そうに思ったこともありましたが、それは今から思うと全く表面的なことで、心の奥底は世間はどうであれ、「自分と自分の家族がうまくいけば良い。みんなそうでしょう」と当たり前のように思っていました。
そして自分のように企業や社会でうまくできないのは、その人のせいで能力や努力が足りないからだと思っていたのですね。自分の邪魔になる人間は押しのけていたと思うし、自分の邪魔になるのはそいつが悪いからだと思っていました。押しのけた後のその人の人生などもちろん考えても居なかったですね。
能力至上主義のアメリカ企業では、表面的にはどうであれ、心の奥底ではそれが当たり前の事だったと思います。昔の私はそういう程度の人間だったのですね。しかし世間では上場企業の役員だし、日本法人の社長をしているので「エライ」という事になっていたのです。優秀という事になっていたのです。そしてそれで良いのだと私は思っていました。
今から考えると本当にどうしようもない人間ですね。社会的な肩書は立派で、また色々な権限や収入や資産などもあるけど、人間としては全く下の下ですね。もし敵対買収騒ぎで社長をクビにならずに、そのまま退職金を貰って退職していたとしたら、今頃私は「自分は偉いのだ。優秀なのだ。」と思い込んでいるとんでもないジジイで一生を終ることになっていたでしょう。
本当にお陰様で社長をクビになって、その後１０年間苦労して、嫌な思いもいっぱいして、仏道修行と縁ができて、その苦労と嫌な思いと修行のお蔭で、今の私ができたのですね。その途中で自分が普通には無い、人の災いを取り除く色々な能力があることにも気づいて、人様のお役に立てる仕事が今のようにできるようになりました。昔の自分から見れば１８０度の転換です。
お釈迦様は、
「自分が愚者であると思っている人間は賢者である。自分は愚者なのに賢者であると思っている人間は本当の愚者である。」
と説いています。アメリカの上場企業で役員をしていた時の私は、自分の事しか考えていないにもかかわらず、自分が優秀であるから本社の役員をし、現地法人の社長をしていると思い込んでいたので、本当に愚者の標本みたいな人間でした。
今、企業の経営者や官僚の中に昔の私のような人間をいっぱい見ます。昔の私がそうであったように、心の中で何を思っているか、頭の中にどのような世界観が構築されているのかが、よく分かるので可哀そうな人間だなと思います。その人達は私のような経験が無ければ、そのような人間で死ぬのです。別に経営者や官僚でなくてもこういう人間はいっぱい世の中に居ます。
今の私は優秀でなくても、肩書やお金が無くても、一生懸命毎日を生きて、困った人が居ればその人の事を思い、何とか自分でできる範囲で助ける人が本当に素晴らしい人間なんだと思います。先日私の大好きな叔父が９０歳で亡くなりましたが、その叔父のお母さんは、早くに夫を亡くし、叔父を含めて５人の子供を女手一つで北海道の小樽で魚の行商をしながら立派に育て上げました。
冬の極寒の小樽では吹雪の中を魚を載せたそりを引いて行商していたらしいです。そしてその苦労を子供達には一つも見せず、周りの人たちを助けながら黙々と毎日働いていたのです。それで叔父は大学まで進学して、最後は京都の仏教大学で講師として教鞭をとっていました。私はこのお母さんこそ本当に偉い人間であると心から思います。これこそ本物の人間です。
表面的には良い人で、何だかんだ言っても世間的にはうまく立ち回りながら、自分と自分の家族がまあまあちゃんとうまく行っていればいいやと思う人間ではなく、自分がどんなに苦労をしていても、心から困った人に慈悲の感情が湧いて出てくる人間こそが人生を全うする素晴らしい人間だと思います。そういう人に私はなりたいと心から願っています。
合掌
仏光
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