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『現金給付10万円から解る貨幣の真実』(前編-1)』三橋貴明 AJER2020.5.26

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三橋TV第241回「緊縮財政のせいで我々は一人6500万円の所得を失ったんだよ!」

https://youtu.be/bgEZQ00DWp0

 

 何となく、経営科学出版好みのタイトルにしてみた。
 第二次補正予算が閣議決定されました。今回の補正予算は「読み解く」のが極めて難解なのですが、色々と入ってきた情報に基づき、分析、整理してみましょう。

 まずはご理解頂きたい点ですが、財務省は第一次補正予算(新規国債発行25.7兆円)が決まった4月末時点で、
「25兆円も国債を発行してしまった(泣) もう新規国債発行を伴う補正予算はやらない」
 と、狂った決意(演技かも知れないけど)を自民党の政治家(主に二階派)にインプットしまくっていたという事実です(複数ルートから耳にした)。

 というわけで、当初(GW中)は、
「第二次補正予算はやらないか、やっても秋」
 という「空気」が醸成されていたのですが、それがひっくり返ったのが5月7日。厳密には、GWに地元で罵声というか「悲鳴」を浴びせかけられた自民党の議員たちが、平場の議論で大規模補正を求め、大紛糾。

 元々は「第二次補正組むのは仕方がないけど、数兆円だけ」といった自民党の空気が一変することになりました。

 この辺りの流れは、昨日の安藤裕先生と藤井聡先生の対談動画をご覧くださいませ。
 
【緊急速報】2次補正、真水32兆円決定の裏側〜自民党の内部で一体、何が起こっているのか?|藤井聡(京都大学大学院)×安藤裕(自民党衆議院議員)
 というわけで、自民党サイドは岸田文雄政調会長、官邸サイドが西村康稔経済再生担当大臣を窓口に、第二次補正予算の議論が進められたのです。

 予算規模は、5月26日時点でも「13兆円程度」という報道が流れていましたが、実際には31.9兆円となりました

 財源は、建設国債(公債金)が9.3兆円、赤字国債(特例公債)が22.6兆円。

 あと、どうでもいいですが、議員歳費削減により「予算が浮いた」分が20億円。ゴミですな。
「身を切る改革! 議員歳費削減で財源確保!」
 などと一度でも口にしたり、書いたりしたことがある人は、自分がどれだけ「アホ」なのか自覚しましょうね。

 それはともかく、新規国債発行31.9兆円は評価するとして、やはり重要なのは中身です。中身は大きく三つに分かれており、
 
1.雇用調整金拡充、家賃支援、医療提供体制等の強化、地方創生臨時交付金の拡充など、即座に真水(GDP)になりそうな予算が10.2兆円
2.新型コロナウイルス感染症対策予備費 10兆円
3.資金繰り対応の強化 11.6兆円
 
 と、実に「特徴的」になっています。詳しくはこちらを。

 1は良いとして、問題は2と3です。

 予備費10兆円(でかい!)には、「感染症対策」という名目がついているため、経済対策に使えるかどうかは不明です。とはいえ、とりあえず「枠」を確保したという考え方もできます。 

 つまりは、来月以降、破滅的な経済指標が出てくることを受け、緊急経済支援に回すわけです。

 

【三橋貴明の音声歴史コンテンツ 経世史論】

http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
皇統論「第十六回 仏教伝来」、歴史時事「第十六回 疫病の人類史」がリリースになりました。

 

 より難解なのが、3、です。3の資金繰り対応について、ブレイクダウンしてみます。
 
3.a 中小・小規模事業者向けの融資〔88,174億円〕
3.b 中堅・大企業向けの融資〔4,521億円〕
3.c 資本性資金の活用〔23,692億円〕
 
 現在、3.aの「中小・小規模事業者向けの融資」は、無利子、さらには売上減少の幅により、保障料・金利ゼロで借入債務の100%を信用保証協会が補償する制度もあるため、事実上の「無利子・無担保・無期限」の融資もあります。

 というわけで、貸し倒れ前提(※返済不要)の予算ではないかとの「推察」もできます。だからこそ、「融資」の割に、財源が財政投融資ではなく「国債」なのでしょうか。

 また、3.cの資本性資金の活用は、これは資本注入でしょう。

 制度によっては3の「資金繰り対応の強化」も、真水的な支出になりえます。資金繰り対応や資本注入が主目的と考えると、分からないでもありません。

 とはいえ、逆に考えてみると、2の予備費にせよ、3の資金繰り対応の強化にせよ、状況や「やりよう」によっては、全くGDPに向かわず、真水にならない可能性もあるわけです。

 つまり、自民党側は、
「とりあえず、30兆円を越す枠を確保し、具体的内容はこれからごり押しする。何しろ、財源が国債だ」
 と、理解し、財務省側は、
「とりあえず、即座の真水は10兆円程度に抑えた。あとは、2と3を使わせなければ、結局、PB赤字の拡大は10兆円で抑えられる」
 と、考えるという、実に「玉虫色」の決着が図られたように見えるのです。

 もっとも、そうであったとしても、新規国債発行31.9兆円や、岸田政調会長、西村大臣の頑張り、踏ん張りは評価するべきでしょう。何しろ、4月時点では「第二次補正予算はゼロか、数兆円」というのが既定路線だったのです。

 また、現在の日本は、早急に政界において、
「財政拡大に努力した国会議員は、国民に褒められる。緊縮財政を推進した国会議員は、国民からさげすまれ、恨まれ、罵倒され、落選の恐怖に怯えながら日々を過ごすことになる」
 といった「空気」を醸成することが必要です。その意味でも、いつもは容赦なく批判していますが、今回の予算については、岸田政調会長や西村大臣のご尽力に感謝したいと思います。
 
 無論、31.9兆円の新規国債発行(しかも、最悪、真水が10兆円強)では全く不足ですし、粗利補償、二度目の現金給付、消費税廃止という本命には全く踏み込めていません。第三次補正予算が必要です。

 第三次補正予算を十分な金額で、速やかに成立させるためにも、「財政拡大はウケる。緊縮財政は罵倒される」という環境を構築する必要があると考えるのです。

 さらに、重要な事実は、
「地元の自民党議員に、悲鳴を上げると、政治が動く」
 という、民主制の国家としては当たり前の光景を、我々が目撃したことです。地元からの叫びを受け、自民党の国会議員が動き、「数兆円の二次補正」というふざけた路線が壊された。

 声をあげましょう。
 
 今回、我々は「国民の声」で政治を動かすという成功体験を手に入れた。確かに、不十分極まりない規模で、内容も危うい玉虫色ですが、それでも「最悪」よりはわずかながら「良い」の方向に進めた。
 
 財務省が恐れる事態が起きた。財政主権を持っているのが、実は日本国民であることが露呈し始めた

 この種のスモールサクセスを繰り返すのです。少しでも、わずかでも、たった一歩でも、前に進む。

 この世に救世主はいません。いきなり、状況が劇的に好転することもありません。カタルシスを得るほどの完全勝利もありません。
 それでも、足掻き、声を上げ、政治を動かす。わたくしたちはいま、民主制の国民国家の主権者として、財政主権を財務省から取り戻そうとしているのです。 

 

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