12月の感想ですが、あげたいお芝居はUPしていきます😅

モジョミキ初日の夜は、新宿に移動して…佐川和正さん&西岡野人さん出演のTinT!「餌」。
女優・劇作家の染谷歩さんが「観たいもの」を作るために立ち上げた劇団です。

あらすじ。
1977年にアメリカで起きた、複数の人格を持つビリー・ミリガンによる事件をモチーフに、事件のその後を描くフィクションです。
多重人格のルークは主治医ダグラスのもとで順調に人格を統合していた。彼をサポートする弁護士ジュリアとの関係も良好だったが、ルークを選挙に利用しようとする州の下院議員マシューが現れ、事態は思わぬ方向へ動いていく…


ルークを思いやる、多重人格の仲間たち。
ルークの心を守るために生まれた人格たちは23人。
でも、彼らはダグラスたちのお陰でルークの心が落ち着いてきたと安心して、1人ずつ「眠り」について…いまは起きているのはたった6人。

佐川さん演じるルークと6人の人格。
役者さんだから「演じてる」んだけど…劇中で「芝居だろう」と言われる場面もあるけど、それこそ芝居を感じさせず自然で素晴らしかったです😆
幼い少女の人格とジュリアの会話が優しい✨


マシューは「悪い人」ではない。
マシューは自分が選挙に当選するために、ルークを「危険」と決め付けて迫害しようとする「悪い人」に見えます。ジュリアたちとも敵対するし。
でも、マシューの背景を見ていると、実の母親から常に出来の良い兄と比較されて、どれだけ頑張っても認めてもらえない。下院議員に当選しても「みんな上院なのに」と褒めてもらえない。
母メレディスはハッパをかけてるつもりなのかもしれないけど、マシューは(見ているワタシも)母から「愛されてない」と感じる。どこまで頑張ればいいのか…追い詰められて苦しそうなのがわかってくるんです。そして周囲に恵まれているルークを、無意識の中で羨ましくさえ思っているのでは?って。
マシューは西岡野人くんが演じていますが、座ではあまり観ない役で新鮮でしたニコラブラブ

「母に認められる」ために生きてる様だったマシューが、ジュリアと出会うことで「それ以外の生き方」を見つけるのが素敵なんですキラキラ←母親の呪縛から外れる
マシューたちをみているとダグラス医師のいう「心の抑圧」が特別なものではなく…ワタシたちの生活のすぐそばにあると感じます。あのままでいたら、マシューも兄と同じように追い込まれて…自死していたかもって。

感情の呪縛は連鎖する。
マシューの母メレディスがつらいんです。
夫からの愛情を得られず、彼女の価値観において自分を保つためには長男に依存するしかなかったんだろうなって。そうすることで夫を見返す…ことに縋っている、みたいな。

ゲイであることを母親に言えなかった長男。優秀でいなければいけない苦しみを、彼は母にぶつけることが出来なかったのだと思います。
…母を愛していたから。
だからといって、マシューが母を愛していないのではなく。「愛しているからこそわかってほしい」こともありますよね。依存し縛ることは愛や友情ではなくただの執着で、「あなたのため」という言葉は時に暴力でさえあります。
その関係性は、ルークたちと同じで。なにも変わることはないと思いました。

登場する人みんな、ルークが移された場所の看守でさえ「背景」がしっかりあって。「ただ身勝手な人」がいないの良いです。←ちょっとウォレンみたいだった✨

ジュリアとグレイ。ジュリアとマシュー。
話の中で、ルークの人格であるグレイとジュリアの会話がときめくのです照れ
グレイがふたたび「眠った」あとの場面の、ルークとジュリアの会話で「ルークはジュリアに恋してない」って伝わって。台詞にはないんだけど「別人なんだ」って痛いほどわかるのが切なくて、胸がきゅっとしました。
ジュリアにマシューの電話が繋がらなかったのも(笑)←マシュー頑張れw

「餌」という題名。
タイトルの「餌」。
なぜ「餌」なのだろうと思って観ていたけど、後半のジュリアの台詞にハッとしたりして。

傷ついたことがある人は、自分や人の痛みに敏感になるといいます。
自分の痛みにだけ敏感な人は多いけど…そうではなく、ルークたちやダグラス、そしてジュリアのように。ワタシの中の痛みを、人の痛みを想像する糧になる「餌」にできたら…と思いました✨

そうしたら、少しずつ人は人に優しくなれる…生きやすい世界になるんじゃないかなって。
そして、演劇っていうのは人の心を「想像する」力になる。そんな希望を感じる舞台だと思いましたニコ


今年の年末にもTinT!の公演があるそうなので…楽しみですニコルンルン