静岡県牧之原市(旧榛原郡相良町)大江(おおえ)の臨済宗妙心寺派 吸江山 平田寺(きゅうこうざん へいでんじ)は、鎌倉時代の弘安6年(1283年)に龍峯宏雲(りゅうほう こううん)が開きました。
静岡県内最古の国宝「聖武天皇勅書」(しょうむてんのうちょくしょ)を所蔵(非公開、牧之原市史料館にレプリカを展示)しています。
奈良時代の天平感宝元年閏5月20日(749年7月9日)、聖武天皇が十二大寺(東大寺、興福寺、薬師寺、大安寺など)に墾田、稲、綿、布などを寄進した際のもので、平田寺のものは大安寺あての勅書のようです。
県指定文化財 平田寺多宝塔、田沼意次(たぬま おきつぐ)が再建した市指定文化財 本堂、田沼意知(たぬま おきとも)供養碑、ジャコモ・プッチーニのオペラ『蝶々夫人』で国際的に活躍したソプラノ歌手 三浦環(みうら たまき)の記念碑「聲(声)の碑」などがあります。
臨済宗妙心寺派 吸江山 平田寺
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臨済宗妙心寺派 吸江山 平田寺の地図
静岡県牧之原市(旧榛原郡相良町)大江459
TEL 0548‐52‐0492
無料駐車場あり
アクセス
・東名高速道路 相良牧之原ICの南東、相良牧之原ICから車で約20分
臨済宗妙心寺派 吸江山 平田寺
案内板
案内板
寺号標(じごうひょう)
地蔵菩薩坐像(じぞうぼさつざぞう)
左手には宝珠(ほうじゅ)、右手には錫杖(しゃくじょう)を持つ孔がある地蔵です。
山門(さんもん)
扁額(へんがく)
境内社 弁財天(べんざいてん)
鐘楼(しょうろう)
石仏、平田寺裏山西国三十三番 観音像十三仏像土台修理記念碑、西國三十三所 観音霊場巡拝記念碑
西国三十三観音霊場 第1番札所 石仏
天台宗 那智山 青岸渡寺(和歌山県東牟婁郡那智勝浦町)の本尊 如意輪観世音菩薩(にょいりんかんぜおんぼさつ、如意輪観音(にょいりんかんのん))が刻まれた石仏です。
忠霊塔(ちゅうれいとう)？
題額(だいがく)に「□國」と刻まれた石碑。
地元出身の戦没者を供養するため、建てられたものだと思われます。
題額(だいがく)「□國」
忠霊塔(ちゅうれいとう)？
題額(だいがく)に「護國(ごこく)」と刻まれた石碑。
地元出身の戦没者を供養するため、建てられたものだと思われます。
題額(だいがく)「護國(ごこく)」
聲(声)の碑(こえのひ)
ジャコモ・プッチーニのオペラ『蝶々夫人』で国際的に活躍した、ソプラノ歌手 三浦環(みうら たまき)の記念碑です。
明治17年(1884年)2月27日、三浦環(本名 柴田環)は静岡県城東郡下朝比奈村下朝比奈(現在の静岡県御前崎市下朝比奈)出身の柴田熊太郎孟甫の長女として、東京府東京市京橋区(東京都中央区京橋)で誕生。
祖母は、鶯小町(うぐいすこまち)と呼ばれた美声の持ち主でした。
環は東京女学館を卒業後、東京音楽学校(東京芸術大学音楽学部)へ入学。
陸軍の三等軍医正 藤井善一との結婚を条件に、父が環の東京音楽学校への入学を許可。
明治36年(1903年)7月、在学中の環が日本人歌手のみで初めて開催したオペラ『オルフェオの百合姫』に出演し好評を博しました。
明治40年(1907年)、環は藤井善一と離婚。
大正2年(1913年)、静岡県の医師 三浦政太郎と再婚。
大正3年(1914年)5月、政太郎と共にドイツへ留学。
環はドイツのリリー・レーマンに師事する予定でしたが、第一次世界大戦が勃発したため、ベルリン到着直後にイギリスへ移動。
ロンドンで世界的音楽指揮者ヘンリー・ウッドのオーディションを受けた際、同席していたランドルフ・チャーチル夫人(後にイギリス首相となるウィストン・チャーチルの母)の推薦で、アルバートホールの音楽会への出演が決定。
大正3年(1914年)10月24日、アルバートホールで開催された音楽会はオーケストラ300人・コーラス1000人・観客2万5000人(当時の収容人数は約8000人なので誇張されている？)の大規模なものでした。
翌日のロンドン新聞は、三浦環を「今シーズン最大のホープ」と絶賛。
ヨーロッパオペラ界のリーダーであったテノール歌手 ウラジミール・ロージンからは、ジャコモ・プッチーニのオペラ『蝶々夫人』(ちょうちょうふじん)を歌ってみないかと勧められました。
オペラ『蝶々夫人』は、長崎を舞台にした日本人女性 蝶々さんとアメリカ海軍士官 ピンカートンとの恋愛悲劇です。
大正4年(1915年)5月31日、三浦環はわずか2週間の練習期間でロンドン・オペラハウスでのオペラ『蝶々夫人』に出演。
しかし、ドイツ軍のツェッペリン飛行船(LZ38)による初めてのロンドン空襲があり、公演が中断され観客・出演者一同は避難を余儀なくされました。
空襲で中断された『蝶々夫人』は話題となり、5日間の予定だった公演は15日間に延長。
ヨーロッパでの成功はアメリカに伝わり、環はニューヨーク市のメトロポリタン劇場やレキシントン オペラ ハウスでの公演も大成功を収めました。
昭和10年(1935年)、イタリア・シチリア島パレルモで『蝶々夫人』出演通算2000回を達成。
昭和11年(1936年)6月26日、東京・歌舞伎座で『蝶々夫人』2001回記念公演を実施。
昭和11年(1936年)12月、彼女自身の邦訳歌詞による大阪公演を開催。
昭和21年(1946年)5月26日、東京帝国大学(東京大学)付属病院で膀胱癌(ぼうこうがん)のため死去(62歳没)。
遺言に基づいて、前年に亡くなった母が眠る臨済宗妙心寺派 海雲山 寿徳寺(山梨県山中湖村平野)へ埋葬されました。
石碑の高さ30�僉�幅38��
田沼意知供養碑(たぬまおきともくようとう)
江戸時代中期の天明6年(1786年)、江戸幕府の老中で相良藩主 田沼意次(たぬま おきつぐ)の嫡男 田沼意知(たぬま おきとも)の三回忌法要で建立された石碑。
天明4年3月24日(1784年5月13日)、若年寄であった田沼意知が江戸城内で旗本の佐野政言(さの まさこと)に襲撃され負傷。
天明4年4月2日(1784年5月20日)、田沼意知は35歳で死去しました。
今村君製茶功績碑(いまむらくんせいちゃこうせきひ)、茶業碑(ちゃぎょうひ)
今村君製茶功績碑(いまむらくんせいちゃこうせきひ)
大正5年(1916年)11月3日、静岡県志太郡小長井(現在の静岡県榛原郡川根本町東藤川字小長井)の芹澤儀作(せりざわ ぎさく)が発起人となって建立。
牧之原茶の手揉み技術者 今村茂兵衛(いまむら もへえ)が、品質向上に貢献した功績を称える石碑です。
台座の高さ130�僉∪佝蠅旅發�235�僉�幅113�僉�奥行15��
題額(だいがく)「今村君製茶功績碑(いまむらくんせいちゃこうせきひ)」
茶業碑(ちゃぎょうひ)
大正4年(1915年)9月、アメリカに茶を輸出していたヘリヤ商会が建立した珍しい英文の石碑。
品質の良い茶を生産していた、牧之原茶の手揉み技術者 今村茂兵衛(いまむら もへえ)・茶葉の蒸し加減を深める方法を「誘進流」(ゆうしんりゅう)と名付けて広めた戸塚豊蔵(とづか とよぞう)・川根茶を発展させた山本長右衛門(やまもと ちょうえもん)の功績を称えたものです。
台座の高さ70�僉∪佝蠅旅發�155�僉�幅95�僉�奥行9��
市指定文化財 本堂
江戸時代中期の宝暦年間(1751〜1763年)に本堂を焼失。
天明6年(1786年)、相良藩主 田沼意次(たぬま おきつぐ)が現在の入母屋造銅瓦葺(いりもやづくりどうかわらぶき)の本堂を再建。
藩主田沼家専用の唐破風(からはふ)式台付の玄関が造られています。
桁行11間半、梁間8間半
山号額(さんごうがく)「吸江山(きゅうこうざん)」
藩主田沼家専用の玄関
地蔵菩薩立像(じぞうぼさつりゅうぞう)
稲荷社(いなりしゃ)
圓(円)通堂？
扁額(へんがく) 「圓(円)通堂」？
宝蔵(ほうぞう)
県指定文化財 平田寺多宝塔(へいでんじたほうとう)が納められています。(撮影禁止)
鎌倉時代の延慶三年(1310年)の文字が刻まれた中世石塔で、もとは墓地に建立されていました。
塔身が角柱状なのが特徴。
平田寺裏山 西国三十三番 観音霊場
西国三十三観音霊場(さいごくさんじゅうさんかんのんれいじょう)は、平安時代に成立したと考えられる(伝承によれば、奈良時代の養老2年(718年)に長谷寺(奈良県桜井市初瀬)の開基 徳道上人(とくどうしょうにん)が霊場を定めたという)近畿地方を中心とする霊場です。
平田寺裏山には、西国三十三観音霊場の第1番札所 天台宗 那智山 青岸渡寺(和歌山県東牟婁郡那智勝浦町)から第33番札所 天台宗 谷汲山 華厳寺(岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲徳積)までの本尊を刻んだ石仏が安置されており、西国三十三所巡りにならったミニ巡礼ができます。
千手観世音菩薩(せんじゅかんぜおんぼさつ)
2本の手が、胸前で合掌(がっしょう)する千手観音(せんじゅかんのん)。
聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)
手につぼみの蓮華(れんげ)を持つ聖観音(しょうかんのん)です。
薬師如来(やくしにょらい)
左手に宝珠(ほうじゅ)を持ち、右手は掌(てのひら)を正面に向けた施無畏印(せむいいん)。
聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)
手につぼみの蓮華(れんげ)を持つ聖観音(しょうかんのん)です。
歴代住職の墓
左から、無縫塔(むほうとう)、県指定文化財 平田寺多宝塔(へいでんじたほうとう)のレプリカ、石塔(せきとう)。
無縫塔(むほうとう)
県指定文化財 平田寺多宝塔(へいでんじたほうとう)のレプリカ
鎌倉時代の「延慶三年(1310年)庚戌正月日 願主沙弥如蓮」の銘文が刻まれた、遠江(静岡県西部)で最古の紀年銘塔です。
遠江国榛原郡相良庄(さがらのしょう、静岡県牧之原市)を本貫(ほんがん)とする御家人(ごけにん) 相良(さがら)一族のうち、鎌倉時代前期の建久9年(1198年)に肥後国球磨(くま)郡人吉庄(ひとよしのしょう、熊本県人吉市)の地頭職となった後も、相良庄に残留した相良頼綱(さがら よりつな)の供養塔(くようとう)だとされてきました。
しかし、鎌倉時代中後期という年代から、相良頼氏(さがら よりうじ)・頼宗(よりむね)の子や兄弟のものと考えられます。
上から、相輪(そうりん)・笠(かさ)・軸(じく)・基礎(きそ)の4部材で構成。
昭和56年(1981年)、墓地から宝蔵へ移されました。
相輪上部のみ砂岩製の部材で補われた緑色岩製(レプリカは花崗岩製)で、緑色岩の石切場(いしきりば)は虚空蔵山(こくぞうさん)周辺(静岡県焼津市浜当目)にもあります。
全高197.5��
石塔(せきとう)
宝篋印塔(ほうきょういんとう)と五輪塔(ごりんとう)の部材が混在する、寄せ集めの石塔です。
左端の石塔は、上から五輪塔の空風輪部(くうふうりんぶ)・宝篋印塔の笠(かさ)・五輪塔の水輪(すいりん)・五輪塔の水輪？・宝篋印塔の基礎(きそ)。
右端の石塔は、上から五輪塔の空風輪部・五輪塔の火輪(かりん)・五輪塔の水輪・五輪塔の地輪(ちりん)ですが、水輪が大き過ぎます。
参考文献
・案内板
・『仏像の見方 見分け方』河原由雄 2002年8月5日
・『ふるさとの石碑 相良町』岡村福彦 1984年7月20日
・『静岡県歴史人物事典』静岡新聞社出版局 1991年12月1日
・『牧之原市の文化財』牧之原市文化財保護審議会 2012年4月1日
・『焼津・藤枝・島田・志太・榛原 歴史散歩』杉山元衛 1993年4月1日
・『社会科資料 歴史人物副読本 牧之原市の偉人』歴史人物副読本編集委員会 2013年3月
・『ふるさとシリーズ�� 郷土における観音信仰』榛原町文化財保護審議会 1985年12月1日
・『相良町埋蔵文化財調査報告 第7集 相良城址 相良町学校給食センター建設に伴う埋蔵文化財調査報告書』静岡県相良町教育委員会 2005年3月25日
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