第101回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)
第13日は20日、準決勝2試合があり、
履正社(大阪)と星稜(石川)が決勝に勝ち進んだ。
21日は新たに設けられた休養日で、決勝は22日午後2時に試合開始予定。
どちらが勝っても初優勝となる。
履正社は初めて決勝に進んだ。
大阪勢としては昨夏の大阪桐蔭に続いて2年連続となる。
今大会屈指の右腕奥川を擁する星稜は、
準優勝した第77回大会(1995年)以来2度目の決勝進出。
北陸勢としてもこの時以来2度目で、北陸勢初の優勝がかかる。
2校は今春の選抜大会1回戦で対戦しており、
この時は奥川が17三振を奪って完封し、3―0で星稜に軍配が上がった。
選抜大会の対戦校がその年の選手権決勝で対するのは、
2012年春に決勝を戦った大阪桐蔭―八戸学院光星(青森)以来7年ぶり。
その前は85年春2回戦で対戦したPL学園(大阪)―宇部商(山口)までさかのぼる。
(20日、高校野球 星稜9-0中京学院大中京)
星稜・奥川の投球は申し分なかった。
一回、中京学院大中京の高畠にいきなり安打を打たれたが、
その後は藤田の1安打のみで余裕をもって七回までで交代した。
威力ある直球に加え、曲げてよし、落としてよし。
しぶとい中京打線も攻略しようがなかった。
攻めては一回に内山の犠飛、二回に東海林の安打で1点ずつ。
三回は福本、山瀬の適時打などで4点を奪った。
七回は奥川、山瀬の二塁打で加点。
早めの継投で目先を変える中京に対し、
各打者が大振りせず、コースに逆らわない打撃を見せた。(編集委員・安藤嘉浩)
星稜の先発は、最速154キロ右腕の奥川恭伸(3年)。
3日前の智弁和歌山との3回戦で延長14回1失点、
23奪三振を記録したとき以来の登板となったが、
「準々決勝はみんなに助けてもらって休むことができた。
まだ万全ではないが、投げられる状態」。
その言葉通り、エースらしい投球をこの日も見せつけた。
一回、先頭打者に安打を許したが、落ち着いていた。
簡単に2死とし、4番の藤田には128キロのスライダーで空振り三振。
これで波に乗った。
二~六回はひとりの走者も出さないほぼ完璧な投球。
七回の攻撃では2点適時二塁打を放つなどバットでも活躍。
この回リードを9点に広げ、八回から2番手の寺沢にマウンドを譲った。
「高校では初めて」という左翼のポジションで勝利の瞬間を迎えた。
この日の最速は153キロ。
試合後、奥川は
「まだまだ球が浮いたり、ボール先行になってしまった」と反省しきり。
それでも7回を投げて被安打2、10奪三振、無失点。
22日の決勝へ向けて「すべてを出し切って、後悔がないようにしたい」。
大会屈指の右腕が最後の一戦を見据えた。(辻隆徳)
中京学院大中京が奮い立つときがきた。
「さあ七回だぞ」。準々決勝まで19得点のうち、13点が七回。
星稜の奥川に1安打に抑えられていた打線には、何かきっかけが必要だった。
だが、簡単に2死。ここで主将の藤田が食らいついた。
【写真】中京学院大中京―星稜 一回表中京学院大中京2死一塁、藤田は三振に倒れ渋い表情。捕手山瀬=柴田悠貴撮影
高校日本代表候補合宿で佐々木朗希(岩手・大船渡)の163キロを受けたのが藤田。
それに匹敵すると感じた一方、じっと狙っていた。
「1試合に1球あるかないかの甘い球を捉えました」。
高め直球を詰まりながらも右前に飛ばした。
残念ながら小田は二ゴロで無得点。
奥川には7回で10三振を喫し、終盤も2番手に封じられた。
結局、誰も二塁を踏めなかった。
ただ、投手でも活躍した元は2年生で、小田は1年生。
藤田が打って気合が入ったという小田は
「出合ったことのない直球の伸び、変化球のキレでしたが、
1年生でそれを経験できたのは大きい」といった。
奥川の残像はチームをさらにレベルアップさせるだろう。(隈部康弘)
◇
●小田(中) 1年生三塁手。
三回1死三塁で三遊間に抜ける強い当たりを横っ跳びで好捕。
「強打者が多いので予想していた。速く反応できた」
●赤塚(中) 身長193センチの背番号18は、甲子園で4試合すべてに登板。
「去年の夏はベンチにも入れなかった。甲子園で自信をつけた」
●橋本監督(中)
「うちの力はすべて出し切ったが、
奥川君は思っていた以上に直球も変化球のキレも素晴らしかった。打線も脅威だった」
昨夏、今春の選抜を含め、1番打者としてこの球場の一回の打席に立つのは、9試合目。
「最初の打席で打てば、相手に与えるインパクトは大きい」と星稜の東海林(しょうじ)航介。
低めの難しい変化球をとらえて中前へ。次打者への2球の間に相手投手の癖を確認した。
3球目、二盗に成功。四球を挟んでの犠打、犠飛で先制の本塁を踏んだ。
【写真】中京学院大中京―星稜 二回裏星稜2死一、二塁、東海林は右前適時打を放つ=柴田悠貴撮影
先発マウンドは3日前、延長14回の激闘で165球を投じた奥川。
「少しでも早く安心して投げさせたかった。投手を助けるためにも初回の得点を意識していた」。
二回2死一、二塁で迎えた第2打席では、右前へ適時打を運ぶ。
つかんだ流れを確かなものにした。
自らを戒めて今大会に臨んだ。
石川大会の打率は2割1分1厘。
4安打しか打てなかったのに、そのうち3本が本塁打だった。
「大振りになって、三振も増えた。
1点が大事になる甲子園で自分がこんなスイングをしていてはダメ」。
シュアな打撃を取り戻し、ここまでの計11安打はチームトップだ。
2年生右腕・荻原は小学生の頃から遊んだ仲良しだ。
今大会中も宿舎の部屋を訪ねて、しゃべったり、寝たりする。
奥川に代わって、その後輩が先発した2回戦でも、
準々決勝でも、一回の打席で塁に出た。
投手を思い、決勝の舞台でも、最初の打席に神経を研ぎ澄ませる。(竹田竜世)
◇
○山瀬(星) 9番打者で、3安打3打点。
「調子は悪かったが、点につなげられてよかった。
自分たちのために甲子園があるというくらい楽しめている」