Stay Foolish

バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

コートの中のライン



トップチームがSNSを使って、チームの日常の練習風景を綴ることが当たり前になっているが、その中で私が気にしてしまうのが、コートの中にテープを使って貼られている「ライン」である。


こんなの。
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それらは主にディフェンスの位置取りを示したものがほとんどで、そのラインはやや大仰に言えば監督の哲学、戦術を如実に表すものであり、まさに「ガイドライン」といえよう。
そのラインを用いて、監督は選手にどのようなプレーを求めているのか、そのラインが導く戦術とはどのようなものかを考えるのもなかなか一興である。


ただ、このラインを貼ることができる条件というものもある。多くのクラブでは試合を行うコートでそのまま練習をすることがほとんどで、そういった場合、手間の観点からあまりラインを貼ることはあまりない。試合の時に貼っておくわけにもいかないので、試合のたびはがして、終わったらまた貼ってという手間がほぼ毎週と考えると現実的ではない。


試合を行うホームコートがほかのスポーツチームも使うであるとか、大きすぎるから、本拠地から遠いからという理由で、練習拠点を持つチームも多く、いわゆる練習コートを持っているチームがコートにラインを貼ることが多い。
話はずれるが、アメリカ代表リベロのE.ショージの所属するファケルなんかは普段はモスクワで練習しているが、ホームコートはノヴィ・ウレンゴイというモスクワからは飛行機で3時間半かかる場所。ホームゲームのたびにこの3時間半の移動を行うらしい。ロシアはそのようなチームが多く、移動だけで大変である。
Passing: A Series Part 2 – Gym Rats



では具体的な例を見ていこう。

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コート中央に台形を形どったラインが引かれているのがわかるだろう。
ラリーが続かないのでわからないが、基本的にはこれは相手のセットが上がるまではこの台形の中に後衛の3人が入っていることを求めるものであると思う。
またあくまで想像になってしまうが、ミドルからの攻撃やサイドのはやい攻撃に対しては、台形の中を守る意識、ブロックが2枚、3枚そろうようなときは台形の外を守る意識を求めているのかもしれない。
もちろんフロアディフェンスはブロックの枚数、形によってその守る位置、範囲は変わってくるが、守るべき範囲をある程度可視化することができれば、上げられるボールの数は増えるだろう。
所詮は想像をしているだけで、実は単にタイトなベースポジションをとる、という意味かもしれないし、ミドルはこの台形ゾーンを外してスパイクを打つという意識づけかもしれない。


次は柳田君の所属するフランクフルト。
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なんだがごちゃごちゃしている印象だが、ひとつづつ見ていく。
ネット際のセンターラインと並行しているラインは、ミドルが線の後ろから踏み切ることを求めるものであると思う。入りすぎずにネット、ブロッカーとの距離をしっかりとるという意識づけ。
サイドラインから変な角度で伸びているラインは相手サイドからのクロススパイクに対する前衛ディフェンダーと後衛ディフェンダーの守備範囲の分かれ目だろうか。
アタックラインあたりも何本か引かれているが、パイプの種類別の目安だろうか。この答えはいまいちしっくりこない。
お互いのコート後方にも引かれているが、これはサーブの的という可能性もあるので何とも言えない。


少し珍しいのが韓国のヒュンダイ

この左側コートの中心角90度の扇形のラインが何を示しているのかは謎なわけだが、おそらくはブロックカバーの陣形もしくは、相手サイドからの攻撃に対するフェイントの守備範囲あたりだろう。



ルーベは、バックセンターの位置にラインが引かれているが、これもトレントと同様、あまりバックセンターが動かないことを目的としているように思う。
サイドライン際のラインはストレートのディフェンスがここまで下がれという意味だろう。


ほかにも色々見つけたものがあるのでリンクのみ張っておく。

https://www.instagram.com/p/B3AJpEfnIDP/
https://www.instagram.com/p/B2PbUHCAOqV/
https://www.instagram.com/p/BzKNwWKlXMa/


コート上に貼るラインには大まかに分ければ下記の目的があるといえよう。

・戦術、決まり事の徹底
・守備範囲の可視化
・意識づけ

ただこのラインを引くというのは、選手のプレーの幅を狭めてしまう恐れもある。バレーボールで起こりえるカオスな状況では位置取りにこれ、という正解は存在しない。
状況状況に応じて最適な選択が求められる。練習からラインを引くことは、その自立的な選択の余地を奪ってしまう可能性がある、という考え方もあるだろう。


将来的に、今シーズンのドイツスーパーカップで見られたようなLEDフロアがもっと普及したら、よりインタラクティブにこの状況ではここにいたほうが良い、といったいわば可変ラインが練習で使われるかもしれない。