ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

泣く子はいねぇが

2020-11-21 21:46:28 | な行

仲野太賀氏の

また新たな飛翔を見ました。

 

「泣く子はいねぇが」73点★★★★

 

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若くして結婚した

たすく(仲野太賀)に娘が生まれた。

 

喜ぶたすくだが

妻・ことね(吉岡里帆)はいらだちを隠せない。

たすくには、どこか子供っぽさが抜けず、父親になる覚悟がみえないのだ。

 

大晦日の夜、たすくは「酒を飲まずに早く帰る」と約束し、

伝統行事「ナマハゲ」に参加する。

 

が、酒を断れなかったたすくは

酔っ払い、ナマハゲの面をかぶったまま

全裸で男鹿の街に飛び出していき――?!

 

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是枝裕和氏が惚れ込んだという

佐藤快磨監督の長編デビュー作。

 

秋田県出身の監督にとって

やっぱりどこかトラウマな伝統の祭り(笑)=「ナマハゲ」を題材に

なかなか大人になりきれない青年のもがきを描いています。

 

テーマは別段新しいというわけじゃないけど

なーんか、こころにしょっぱく、やさしい

不思議な魅力を持った映画なんですよね。

 

監督の人物造形も、演じる太賀氏も、見事なんだと思います。

 

まず

フラフラはしてはいても、優しそうな主人公たすく(仲野太賀)は

決してDV夫とかじゃないし、ダメんずって感じじゃない。

 

逆に

若くして「父」になった彼の

「いや、オレ、まだ自分の足元すら定まってないんだけど?

え?娘? いや、いいんだけど、え?ええ!」な気持ちは

よーくわかるし

 

こんなヒト、いくらでもいるんじゃないか?と思う。

 

思うんだけど、そんな彼を

妻ことね(吉岡里帆)は、あっさりザクッと切る(笑)

まあナマハゲの事件がきっかけかもしれないけど

それがなくても、斬られてただろうな(苦笑)

 

見放され、離婚されたたすくは東京で、どうにもモヤッとした日々を送り

でも、妻にも娘にも未練があって

また地元に帰ってくるが――という展開。

 

 

どこも大げさでなく

極めて淡々と自然だけど

ラフそうでいて細部に目が配られ、ユーモアもあって

自然に気持ちに入ってくるんですよ。

 

たすくのクイックルワイパーのシーンの可笑しさ(笑)とか

ツボもうまいし

 

弟を迎える兄(山中崇)や母(余貴美子)、

たすくの友人役の寛 一郎氏ら、登場人物の造形も魅力的。

 

 

土地に根ざし、子をなし、家族をつなげ、

社会をつなげていくことがデフォな世界で

大人になるのって

ワシが思う以上に、しんどいんだろうなあと。

 

ラストの叫びは

「生きちゃった」(20年)とはまた違う刺さり具合で

太賀さん、ほんとすごいなあと思うのでした。

 

西川美和監督「すばらしき世界」(2021年2月11日公開)

での存在感もすばらしかったです。

 

★11/20(金)から全国で公開。

「泣く子はいねぇが」公式サイト


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (映画マン)
2021-01-19 18:02:24
こんにちは。映画ブログを運営しているものです。
仲野太賀さんが出るなら、観てみたいですねー。太賀さんの演技好きなので。
始めて観たのが、「ゆとりですけどなにか?」ですね。
このドラマに出演していた太賀さんの狂気的な演技がすごかったです。

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