ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ

2020-04-07 23:46:13 | ま行

なるほどねえ。

エミール・クストリッツァ版と比較しても

実に面白いです。

 

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「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」71点★★★★

 

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2012年の国連でのスピーチで、一躍、

世界的に有名になった

元ウルグアイ大統領、ムヒカ氏を追ったドキュメンタリー。

 

ムヒカ氏についての詳細は

先だって公開された

エミール・クストリッツァ監督による「世界でいちばん貧しい大統領」

を参照していただきたいのですが

 

こちらは同じ人物を

若いフジテレビディレクターが追いかけている。

 

「人生の百戦錬磨」っぽいクストリッツァ監督と比較するのは

あまりに酷であることは承知ですが

最初は正直、

ひょこひょこおっかなびっくりムヒカ氏に会いに行く監督の「甘さ」が、

鼻につきもしまして

 

自分の息子が生まれたシーンから始まるとか

オレオレ主張が強すぎない? どうよ?って(苦笑)

 

しかし、これが意外に意外な展開を見せてゆく。

 

「オトナの了解のもと」って感じの

クストリッツァ版もいい味なんだけど

 

こちらは

より包括的にムヒカ氏の成り立ちや人生を描いていて

魅せるんですよ。

 

なにより、若者ならではの無防備さを受け入れてくれた

ムヒカ氏本人からの言葉をしっかり引き出していること、

 

そして「日本」をキーワードに

ムヒカ氏と日本の意外な関わりを明かにした点もおもしろい。

 

 

来日した氏が学生に向けて講演する映像には

マジで泣けました。

 

ムヒカ氏は

日本の若者に未来への希望がなく

政治参加意欲も投票率も低いことをちゃんとご存知で

自身の厳しい過去、その経歴を振り返りながら、

日本の若者たちの背中を押してくれるような

いいメッセージを投げてくれるんです。

 

「人生で大事なことは成功ではなく、歩み続けること。

仕事を失っても、打ち負かされても、また立ち上がり、進むんだ」。

 

この映画を試写で観たときは、

ここまで新型コロナで世界が変わるとは想定しておらず

このメッセージは

うつ病や転職など、さまざまな理由で

一度つまずくとなかなか立ち直ることを許されない日本社会への提言だ、と感じたけれど

 

 

先の「ビッグ・リトル・ファーム」(20年)と同様に

この言葉とこの映画を知っていたことで

ワシはいまのこの状況に対して、相当に心構えができた気がするんです。

 

焦っても、しょうがない。

仕事を失っても、打ち負かされても、また立ち上がり、進むんだ!

 

こういうときだからこそ

こういう映画を観てほしいと強く願います。

 

ただ、盛り上げ系の音楽は

もうちょっと抑えた方がよかったかな~とも思うけど。

 

★近日公開。

「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」公式サイト

※公開情報は公式サイト、劇場情報をチェックしてください。

状況を鑑みて、無理なきように

よきタイミングでご鑑賞いただけることを願っています。


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