ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

旅のおわり世界のはじまり

2019-06-13 23:27:25 | た行

前田敦子氏は

「途上にある人」の役がハマる。そして、うまい。

 

「旅のおわり世界のはじまり」74点★★★★

 

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中央アジアのウズベキスタン。

葉子(前田敦子)は、バラエティ番組のレポ―ターとして

この地にやってきた。

 

葉子はテレビクルーのカメラマン(加瀬亮)、ディレクター(染谷将太)、

通訳兼コーディネーター(アディズ・ジャポフ)、

そしてアシスタント(柄本時生)の4人と撮影に挑むが

カメラマンをはじめ

クルーはビミョーに低体温で、なんだかなー、な感じ。

撮影もなかなか段取りどおり進まない。

 

そんななか、葉子は必死で

レポートを務めようとするのだが――?!

 

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黒沢清監督の新作です。

 

ウズベキスタンに撮影に来たリポーター(前田敦子)と

クルー(加瀬亮×染谷将太×柄本時生)たち。

 

異国での孤独、さまざまな「え?」のなか、

クルーたちの低体温を感じつつも

黙々と仕事をこなす前田敦子氏がおかしみを併せ持ち、

 

「ロスト・イン・トランスレーション」ウズベキスタン版&前田敦子編、という感じもして

なかなかおもしろす!な作品でした。

 

前田敦子氏の

ある意味、オーラのない希薄な存在感がうまくて

ヒロインの異国での孤独を浮き立たせている。

 

人生に悩むヒロインを描きつつ、

自分と違う何かに関わろうとしなければ

他者とわかり合うことはできない

そして、結局、自分をわかることもできないんだ、と

 

そんな人間の極意をスッと教えてる感じ。

 

 

プラス、他国の事情を自分の尺度で測ることの偽善、も考えさせる。

黒沢監督の手腕はすごいなと感じました。

 

 

撮影クルーにとにかくぞんざいに扱われ、

苦行のようなレポートを与えられながらも

黙々とそれをこなす

前田敦っちゃんの姿がけなげで、気の毒であり、おかしみがある。

 

彼女は満足度や幸福度の低そうな役、途上にある人、の役が

とにかくハマるし、うまいなと再確認しました。

 

おなじみ「AERA」の来週6/17発売号にて

黒沢清監督×前田敦子氏の対談取材をさせていただきました。

 

撮影後に結婚&出産をされた前田さんが

その決意を決めた「意外な」理由に迫り、

かつ、黒澤監督がタジタジ……というおもしろ内容だと思います!

映画と併せてぜひ、ご一読くださいませ~!

 

★6/14(金)テアトル新宿、渋谷ユーロスペースほか全国で公開。

「旅のおわり世界のはじまり」公式サイト


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