ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

淪落の人

2020-02-01 16:09:47 | ら行

ちょっと「最強のふたり」を思わせるビジュアル。

実際、監督が街で目にした風景なのだそう。

 

「淪落の人」72点★★★★

 

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仕事中の事故で

半身不随になってしまったチョンウィン(アンソニー・ウォン)は

妻とは離婚し、一人息子とも離れて暮らし、

人生半ば投げたように、日々を過ごしていた。

 

そんな彼のもとに

フィリピン人のエヴリン(クリセル・コンサンジ)が

住み込みの家政婦として雇われる。

 

はじめは言葉が通じず、イライラするチョンウィンだったが

エヴリンもまた、つらい事情を背負っていることを知り、

次第に、彼女と心を通わせていく――。

 

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観ながら、なんとも優しい感情が溢れ出くる

いい作品でした。

 

淪落とは、落ちぶれることの意味だけど

監督は白居易の『琵琶行』の一節から

「どん底にいる二人でも、縁あって出会ったのなら

縁を大切にすべきでは」との意味を込めたそう。

 

まさに

車椅子生活になり

「なんで、オレが?」と人生半ば投げている主人公と

(香港スター、アンソニー・ウォンがいい感じの枯れ具合!)

夢を諦めたフィリピン人家政婦の縁は、そんな感じで

 

自分も大変な主人公が、彼女を助けよう、と動き出す展開に

こんなことあり得ない、と思いつつも

でも本当にそうだろうか。

いや、あってほしい、と思えるんですね。

 

それを促すまなざしの確かさに

実は監督のお母さんが事故で

車椅子生活となった経験があると知って

なるほど、と納得しました。

 

アンソニー・ウォンが脚本に共鳴して

ノーギャラで出演していたり

 

家政婦が車椅子の後ろに乗り、街を駆け抜ける

印象的なシーンのモデルになった人たちもいるそうで

 

まだまだ、世界は捨てたものでないのかもしれない、と

思ったりした。

 

そういえば

「AERA」でアンソニー・ウォンさんにインタビューさせていただいたのですが

フランス版、米国版ともに

「最強のふたり」を観た、とおっしゃっていた。

モデルになったふたりも、

もしかしたら、観ていたのかもしれない。

そう思おうと、なんだかいいなー。

 

アンソニー・ウォンさんのインタビューは

AERAdot.でも読むことができますので

ぜひ映画と併せてお楽しみいただければ!

 

★2/1(土)から新宿武蔵野館ほか全国順次公開

「淪落の人」公式サイト


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