四国の特異な鉄道隧道や橋梁 | 次世代に遺したい自然や史跡

次世代に遺したい自然や史跡

毎年WEB初公開となる無名伝承地や史跡、マイナーな景勝・奇勝を発表。戦争遺跡や鉄道関連、坂本龍馬等の偉人のマイナー伝承地も。学芸員資格を持つ元高知新聞主管講座講師が解説。

川床のトンネルや現行と廃線跡、4線が立体交差

過去に紹介したものもあるが、鉄道ファンにお勧めの四国四県のトンネルや鉄道橋を紹介したい。尚、四国の鉄道ファンなら、既知のものが殆どではないかと思う。

(1)川底の大明神川隧道(愛媛県西条市)

JR予讃線伊予三芳駅南東の今治小松自動車道の東沿いに「川床トンネル」と通称される大明神川隧道(全長65.5m)がある。このトンネルは通称の通り、大明神川の川床を貫くトンネルである。

伊予三芳駅は大正11年10月に開業したのだが、これにあたり、東西に流れる大明神川が問題となった。この川は川床が高い位置にある「天井川」のため、橋梁が架けられないのである。

そこで川の底にトンネルを掘ることになった。長雨時の建設中にトンネルが崩落する事故があったものの、通常、大明神川は水流がなく、トンネルの南口寄りから川床に下りることができ、トンネルの天井の上を歩くことができる。

 

(2)トンネルを抜けるとそこは跨線橋だった(高知県四万十町)

撮り鉄に取ってはそんなに珍しい風景ではないかも知れないが、一般観光客に取っては、トンネルを抜けた先にアーチ型の跨線橋があり、そこを抜けるとすぐ駅(JR窪川駅)がある風景は、少し面白いかも知れない。鉄道写真にももってこい。

窪川駅は昭和26年11月、開業したが、その北方、龍馬も越えたことのある呼坂峠下にトンネルを掘った。トンネル南口の南方は線路が深い堀切のようになったため、線路の西側と東側の地が分断された。そこで跨線橋が架けられた。アーチ型の橋故、景観も良い。

跨線橋西袂から北に折れる道路からは、跨線橋越しに窪川駅が見えており、トンネルから出てきた列車が跨線橋を抜け、ホームに入る様子を撮影できる。尚、写真の新幹線型ホビートレインは通常、この路線は通らない。

 

(3)山がない「町内トンネル」(徳島県海陽町)

JR海部駅のすぐ北にある全長44mの「町内トンネル」も、四国の鉄道ファンの間では有名。このトンネル、実は山がない。台形のコンクリートの塊にトンネルが開口している状態。

が、昭和48年5月の竣工時は普通の形状のトンネルだった。その後、トンネルが貫く尾根が宅地開発で削られていき、昭和51年、周辺の尾根が麓からまるごとなくなった。

これではトンネルの意味がないが、撤去するとなれば相当な費用がかかるため、そのまま残されているのである。無人駅である海部駅のホームからトンネルを見ることができる。

 

(4)現行鉄道と廃線の4線が立体交差(香川県琴平町)

これも以前紹介した。JR土讃線琴平駅の前身は明治22年5月に開業した讃岐鉄道の琴平駅で、当時は象頭山麓にあった。明治37年、山陽鉄道に買収されたが、その2年後、国有化された。

大正11年、陸軍特別大演習に際し、駅は現在地に移された。その後、昭和2年に琴平電鉄、昭和5年に琴平急行電鉄が琴平まで延伸され、国鉄線と琴平駅付近で交差する形となり、国鉄の下を民有の二線が抜けることになった。そうして、その二線と琴平電鉄の引込線の合わせて3線が抜ける国鉄のカルバート型(飽く迄見た目。構造的には違う)陸橋が建設されたのである。

ここを通る琴平電鉄は正式には「高松琴平電鉄琴平線」で、この北に琴平急行電鉄廃線跡、南に琴平電鉄引込線の廃線跡が僅かな距離だが、残っている。

 

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