激戦を制した静岡学園が24年ぶりの選手権優勝(その2) | Purely Belter

激戦を制した静岡学園が24年ぶりの選手権優勝(その2)

■鉄壁の守備陣に穴を開けた静岡学園のアタッカー

この試合の両チームは対照的な戦い方でした。青森山田はカウンターやロングボールを駆使したシンプルな戦い、一方の静岡学園は細かなパスや個人技を活かして攻撃を組み立てました。

 

流石は「サッカー王国」のチームだけあり、静岡学園の攻撃陣がボールを持つたびにスタンドが大きく沸きました。ドリブルで複数の選手を引きつけたり、空いたサイドのスペースを上手く使ったりと、静岡学園の攻撃には様々なバリエーションがありました。

 

しかし、青森山田のDF陣は最後のところで蓋をし、静岡学園に決定機を作らせませんでした。サイドからクロスが上がっても、中央には常に3枚のDFが揃っていたため、しっかりと弾き返すことができていましたし、個人技に対しては何人もの選手が粘り強く体を当て、ボールを奪うことができていました。青森山田DF陣としては、「やられた」という感触はほとんどなかったでしょう。

 

青森山田は、ピッチ中央付近では思い切ってファウルで止める場面が幾つかありましたが、ディフェンディングサードではファウルなしにボールを奪うことができていました。しかし、前後半1回ずつ自陣の低い位置でファウルを犯してしまい、そこからのセットプレーで2点を失ってしまいました。何かい奪われても、自分たちの技術を信じて立ち向かった静岡学園の攻撃陣。その姿勢がファウルを誘い、ゴールへ繋がったのでしょう。

 

この試合唯一流れの中で生まれた、静岡学園の同点ゴールも見事でした。華麗な反転から左足を振り抜いた加納選手のプレーは言うまでもなく素晴らしかったですが、彼にパスを出したMF草柳祐介選手の判断も光りました。静岡学園の選手は高い位置でボールを持つと迷わず仕掛けるシーンが目立っていました。これに対して青森山田の選手は人数をかけて対処し、ボールを奪っていました。

 

おそらく、あの場面でも、青森山田のDF陣は草柳選手がドリブルを仕掛けてくると思っていたでしょう。青森山田は3選手ほどが草柳選手へ寄せていました。そんな中でDF陣が寄せきる前に逆を突く縦パスを入れたことで、加納選手はマーカー1枚を剥がしてシュートを決めることができました。草柳選手から加納選手へのパスはシンプルなものでしたが、とても大きなパスでした。

 

■今後も注目の高校サッカー…来年度の注目校は!?

高校年代のチームは、高体連に加盟する高校サッカー部のほかに、Jリーグの下部組織であるユースチームがあります。よく両者を比較すると、全体のレベルで言えば、ユースチームの方が高いのでしょう。しかし、今回の選手権で上位に入ったチームは、いずれもユースチームの強豪とも互角以上の勝負ができると思います。

 

一年を通して全国各地で行われている高円宮杯JFA U-18サッカーリーグでは、一時期ユースチームの強さばかりが目立っていました。しかし、近年は再び高校サッカー部が巻き返しており、高校生年代真の日本一を決定するチャンピオンシップでは、青森山田が名古屋グランパスU-18を下しました。また、プリンスリーグでも上位に入る高校サッカー部が目立ちました。

 

今年の高校年代のプロ内定者は84人、このうち高校サッカー部出身は24人となっています。ユース出身者と数の開きこそありますが、高校サッカー部はJリーグクラブという後ろ盾がなく、内部昇格が望めません。そんな高校サッカー部の選手が24人もプロの道に進んだということからも分かる通り、高校サッカーの注目度は上がっているといえるでしょう。

 

さて、来年度の高校サッカーですが、やはり青森山田が軸となることは間違いないでしょう。青森山田は中学生年代でも全国屈指の強さを誇っており、6年連続で全国中学サッカー大会の決勝にコマを進めています。中学から持ち上がったメンバーと高校から新たに加わったメンバーが融合し、毎年のように全国大会で上位進出を果たしています。

 

彼らを追うのが、前橋育英高等学校サッカー部(群馬県)や船橋市立船橋高等学校サッカー部(千葉県)といった名門校。いずれも本選手権では振るいませんでしたが、2年生や1年生も多く登録されていましたから、来年度が楽しみです。また、復権を目指す東福岡高等学校サッカー部(福岡県)、青森山田と同じく中高一貫教育を手掛ける日章学園高等学校サッカー部(宮崎県)や神村学園高等部サッカー部(鹿児島県)も上位を狙うことができるでしょう。来年度もハイレベルな戦いを見ることができそうです。

 

24年ぶりの選手権優勝を果たした静岡学園。「サッカー王国」復活を印象付けた。

 

 

 にほんブログ村 サッカーブログへ