ウィークエンド ★★★★☆

 デートに出掛けたラブラブカップルが、やがてお互いに幻滅して破局するまでのストーリー。

 ベタだけどおもしろかったです。最初と最後の落差が大きくて笑えます。

 

幸福の谷 ★★★★☆

 女性がよく夢に見る光景、それはどこかの谷とそこにある一件の家。彼女は夢のその場所に不思議な安らぎの感情を抱いていた。やがてひとりの男性と知り合い恋に落ちるが・・・という話。

 

 これは今までのデュ・モーリアのアンハッピーな男女ものに比べるとだいぶ幻想的な雰囲気で印象に残りました。作中に出てきた小さな男の子はやっぱり・・・。

 結末は悲劇的なのかもしれないけど、いちおう結ばれてるわけだからそこまでバッド・エンドでもないのかな。静かな物悲しさをたたえた作品です。

 

そして手紙は冷たくなった ★★★★☆

 情感のあるタイトルですね。

 書簡形式で書かれた作品で、「ウィーク・エンド」のようにラブラブな男女の愛が冷めていき、やがて破局するまでを描いています。前者は普通のカップルだけど、こちらは不倫ですね。

 

 男性の筆まめっぷりがちょっと笑うけど、当時の時代だとこういうものだったのかな。

 不倫なのにそんなに手紙で証拠を残して大丈夫なのか。アガサ・クリスティーの作品でよく出てくるフレーズで「女は手紙を処分しないもの」というのを思い出しました。

 

笠貝 ( 「あおがい」 過去記事にてレビュー済みなので省略 )

 

総評 ★★★★☆

 ヒッチコックのサスペンス映画『鳥』の原作等で知られるダフネ・デュ・モーリアの短編集。

 初期作品集ということで、短めの小品という感じの作品が多いですね。

 

 短く簡潔にまとまりながらも、人間の嫌な部分を身も蓋もなく描いているのがとてもおもしろかったです。

 ただ人の醜さを赤裸々に描くんじゃなくて、皮肉やユーモアまじりに描かれているので胃にもたれるような感じもないし。

 

 「いざ、父なる神に」と「天使ら、大天使らとともに」に出てくる牧師なんかも、めちゃくちゃ嫌な奴なんだけど、だいぶユーモラスかつ軽妙に表現されているのでけっこう好きだったりします。