新型コロナウイルス 冬のピークはいつ来るか | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

冬場の環境要因で呼吸器系に感染するウイルスの感染者数が増えることは必然であり、

例年インフルエンザなどが冬に猛威を振るうことで立証されております。

 

昨年頭から中国より日本国内に持ち込まれた新型コロナウイルスが春、夏と一定の陽性者数を出しながら、

冬に入るにあたってその数がぐっと増えるのは当初から誰もが予想していたことでした。

 

案の定、冬の到来と同時に寒波の到来が早く人口密度が高い地域から陽性者数増加が報告されました。

その先駆けが札幌だったと思います。

このタイミングでGoToとの関連を指摘するメディアや識者が多いようですが、私は論理的でないと思っています。

何故ならば、GoToは夏からずっと継続されていましたし、例えば北海道への観光客も夏以降多い状態が続いていたからです。

GoToによって感染拡大が起きるのならば夏からずっと増えなければ理にかないません。

また、GoToなど、旅行で感染者数が増えるのであれば、感染の舞台となる旅行地で陽性者数が増えるはずですが、

現実的には京都や箱根、草津など有名観光地の地域でそのようなデータは見られません。

 

結局は、人口密度が高く、冬が到来した地域から陽性者数の報告が増えていると考えています。

ここまでは予測されていたことです。

では、問題はどこまで増えるかということです。

 

私は様々な問題から陽性者数は参考地程度としており、重傷者数の方を主に見ています。

全国の重症者数が300人程度となった頃にこの重症者数が1000人程度となるかと予測していました。

それには明確な根拠はありませんが、冬場には病院に担ぎ込まれる重傷者が増加するのが常ですので、

冬という環境要素だけでもそのくらいまで増えることもあるのではないかと考えました。

 

この感覚は、私が脳外科医であるためかもしれません。

前回も書きましたが、脳卒中や心臓血管、また肺炎などの感染症は冬場に重傷者が増えます。

特に脳卒中はその傾向が顕著なため、夏は暇、冬から春は忙しい、というのが我々現場の常識です。

季節労働者と自分たちを揶揄しているくらいですから。

その感覚で言えば、冬に重傷者が増えるのは普通のことです。

そして、最も忙しくなるのが冬の入りです。

 

これはおそらく、気温変動が激しいためだと思われます。

脳卒中の分野で言えば、気温変動が激しいときには血圧の変動が起こりやすく、

血管が破れたり詰まったりすることが多いのではないかと皆考えています。

同様に、気温変動が激しく、しかも冷え込みが厳しくなる時期には呼吸器系の感染症が増えます。

これは体が冷えることで免疫力が落ちるためだと考えています。

 

冬の入りが一番厳しいという経験則が私たちにはあります。

逆に冬に入って寒さが安定すると、少し患者さんは減ってきます。

これは人間の方でも服装なども含め、寒さへの対応に慣れてくるためです。

 

そして今はちょうど冬の入りの時期が過ぎ、寒さに少し我々が慣れだす時期なのではないかと思います。

そこで直近の数字を見ると、

 

上昇を続けていた重症者数が500弱程度のところで少し伸びが弱まり、2日の時点では前日比で若干の減少となっています。

ここが重症者数のピークとまで分かりませんが、少なくとも3000、4000と今後なるような指数関数的な勢いではないことがわかります。

 

今後伸びれば1000程度まで増えることもあるかもしれませんが、ここ数日の経過によってはこの500前後でピークという可能性も出てきたのではないかと思います。

 

そこで、医療の現在の状況ですが、

私のようなコロナや感染症非専門医が勤務する、その他大勢の一般病院では現在も特に変わりなく業務を遂行しています。

先週から今週は脳卒中の重症搬送が多く、緊急も含め1日で5-6件手術がある日や、

日によってムラが多いにありあますが、重症者が5-6人以上1日で入院するような日もありました。

1週間で数十人の新規入院患者の中で今のところ新型コロナ抗原検査で陽性になった方はいませんでした。

 

つまり、現在にいたっても特に我々のような一般病院で医療崩壊は起きておりません。

通常通り、忙しい冬の診療を続けています。

医師会長のいうような「命を救う体制の崩壊」という大げさな状況は全く起きていません。

 

マンパワーが切迫しているのは新型コロナ重症者を引き受けている一部の大病院の、

その中で更に重症者の治療に当たる感染症指定ベッドやICUなどの一部の専門部署のスタッフの状況であり、

決してその他大勢の医療全体が現在コロナのせいでひっ迫しているわけではないと思います。

 

その証拠に私が常勤、外勤などで出入りしている病院は小さな診療所から、

比較的大きな総合病院まで何か所かありますが、どこも通常通り運転しています。

連絡をとりあう友人医師の医療機関も概ね問題なく運転しています。

 

イギリスやアメリカでは今月中にもワクチン接種が開始されることになっているようです。

2009年新型インフルエンザの際にはワクチン接種が開始されて数か月で感染は鎮静化しました。

私はこのワクチンには期待している人間の一人です。

 

ワクチンという出口が見えつつある中、今後1週間程度である程度冬のピークが見えれば、

安心できる人も多いのではないでしょうか。

 

最後に素人みたいなアドバイスですが、私の経験として、

風邪をひくのはいつも体が冷えたとき、睡眠不足のとき、無理をしたときです。

あとは都内で満員電車で通勤していたときは年に風邪をひく回数が多かったことを考えると、

3密は避けるべきでしょう。

 

皆さんもご自愛ください。

 

 

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