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事案
国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民(在外国民)に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査(国民審査)に係る審査権の行使が認められていないことの適否等が争われた。

 

裁判所「最大判令4.5.25

 

判旨 前記……のとおり審査権と同様の性質を有する選挙権については、平成10年公選法改正により在外選挙制度が創設され、平成17年大法廷判決を経て平成18年公選法改正がされた後、衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙をも対象に含めた在外選挙制度の下で、現に複数回にわたり国政選挙が実施されていることも踏まえると、上記のような技術的な困難のほかに在外審査制度を創設すること自体について特段の制度的な制約があるとはいい難い。そして、国民審査法16条1項が、点字による国民審査の投票を行う場合においては、記号式投票ではなく、自書式投票によることとしていることに鑑みても、在外審査制度において、上記のような技術的な困難を回避するために、現在の取扱いとは異なる投票用紙の調製や投票の方式等を採用する余地がないとは断じ難いところであり、具体的な方法等のいかんを問わず、国民審査の公正を確保しつつ、在外国民の審査権の行使を可能にするための立法措置をとることが、事実上不可能ないし著しく困難であるとは解されない。そうすると、在外審査制度の創設に当たり検討すべき課題があったとしても、在外国民の審査権の行使を可能にするための立法措置が何らとられていないことについて、やむを得ない事由があるとは到底いうことができない。
 したがって、国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは、憲法15条1項、79条2項、3項に違反するものというべきである。

 

※この他にも、立法の不作為(在外審査制度を創設する立法措置をとっていなかったこと)に関する判断があります。

 

宇賀裁判官の補足意見 ……在外国民の審査権を制約することは原則として許されず、その制約が例外的に許されるか否かの合憲性の審査に当たっては、権利の重要性に鑑み、厳格な審査基準が適用され、その制約がやむを得ないと認められる事由があるといえるのは、国民審査の公正を確保しつつ在外審査制度を設けることが事実上不可能ないし著しく困難な場合に限られると考えられる。
 そこで、本件における上記のやむを得ないと認められる事由の有無について検討すると、平成10年公選法改正により在外選挙制度が部分的に創設され、平成17年大法廷判決を経て、平成18年公選法改正で衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙も在外選挙制度の対象とされたこと、平成19年制定の国民投票法においても在外国民に国民投票における投票権が認められていること、憲法79条4項は、審査に関する事項は法律で定めるとしているところ、国民審査法16条1項は、点字による自書式投票を認めているように、記号式投票以外の投票方法も選択肢となり得ること、情報通信技術が急速に発展し、国際的な通信に要する時間が短縮されるとともに、通信し得る情報の質や量も飛躍的に向上していること等に照らすと、在外国民の審査権の行使を一律に否定することには、やむを得ない事由があるとはいえず、違憲であるといわざるを得ないと考える。
 なお、憲法79条2項は、国民審査は、「衆議院議員総選挙の際」行われることとし、これを受けて、国民審査法13条は、「審査の投票は、衆議院小選挙区選出議員の選挙の投票所において、その投票と同時にこれを行う。」と定めているところ、これは、全国で一斉に行われる衆議院議員総選挙の機会を利用することによって、投票所に赴く国民の負担を軽減するとともに、投開票事務に係る行政コストを削減する点においても、合理的な方法といえる。もっとも、理論的に考えれば、国民審査の投票やその結果の確定が衆議院議員総選挙の投票やその結果の確定と同時となることは不可欠の要請とまではいえない。したがって、在外国民について、仮に技術的理由から、衆議院議員総選挙と国民審査との間に投票日やその結果の確定日について若干の差異が生じたとしても、憲法79条2項に違反するとはいえないのではないかと思われる。

 

本判例は、憲法のみならず行政法に関するものとしても重要なものといえるもので、しっかりとチェックしておく必要がありそうです。