『昭和史の論点』(文春新書 坂本 多加雄/秦 郁彦/半藤 一利/保阪 正康著)を読了しました。

 

 

2000年に発刊されたものですが、2018年時点で第14刷となっています。それだけ反響があり、多くの人が読み継いできたということでしょう。

 

日本史において、知の巨人ともいうべき4氏が対象から敗戦に至るまでの日本の歴史について、その膨大な知識量をもとに忌憚なく問題点、論点について座談会形式で語られています。

 

本書で対象とされるのは大正10年のワシントン体制の成立から昭和27年の日本の独立回復までの約30年間。とはいえその大半が戦争に関する記述となります。特に昭和の最初の20年間、日本は“戦争期”だったということでしょう。

 

昭和戦前の疑問点である「なぜ日本は戦争に向かったのか」「なぜ敗れたのか」というさまざまな疑問について、4氏がそれぞれの豊富な知識を活かして論戦を行っており(推測も多かったですが)、読み応え十分です。

 

総じて政府や軍に否定的でしたが、それでも話がいろんな方向に飛んでいくのは座談会ならではで、そこも読んでいて面白かったですね。

 

空襲でひどい目に遭った半藤氏は、軍部のやり方に対して多少感情的になっていることが行間から浮かび上がっていました。また、秦氏が語った日本軍は南でなく西に進むべきだった、という話にはそういう考え方もあるのか、と驚かされましたね。

 

保阪氏と坂本氏は比較的冷静に、日本史を俯瞰しながら語っておりこれも印象的でした。ただ坂本氏は最年少ながら本書の出版から2年後に惜しくも逝去されています。

 

テキストで歴史を学ぶのもいいですが、学者や識者の話の方が頭に入ってきやすいということもあるので、そういう意味では興味深い一冊であるといえます。

 

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