私が・・・
小学生の頃、一時期ですが父が川釣りに凝った事があり、
日曜の朝、明るくなる前に無理矢理起こされ、新宿経由で、 京王線に乗って多摩川に連れて行かれたわけです。
そんな・・・
ある日、何かの弾みで父が川にメガネを落としてしまい、
竿に引っ掛かけて拾おうとしたのですが、上手く拾えずに、
川底に沈み込んで見えなくなってしまったのです。
すると・・・
「てつ!」と私の名前を呼び、顎の先で川底を指すわけで、
私に対し「メガネを拾って来い!」と言うの無言の圧力で、
仕方なくパンツ一枚になって川に入ったわけです。
そして・・・
メガネを拾ったわけで、そんな日はランチが豪華になり、
とんかつ屋でメンチかつ定食の大盛りを食べさせてくれて、
お腹一杯になった事をおぼろげながら覚えています。
また・・・
違うある日は、私が川に糸を垂らそうとして竿を投げたら、
釣り針が父の顔面の右頬に突き刺さり「痛えっ!バカ!!」
と怒鳴られ、ランチはおにぎり1個だったわけです。
ですから・・・
日曜日になると、まだ暗い父が起きるよりも早く起きて、
野球の自主練習と言う口実で、近所をランニングしたり、
近くのガソリンスタンドで素振りをしていたのです。
その後・・・
しばらく一人で釣りに行っていたようですが、そのうち、
休みの日は、毎回囲碁と将棋の対戦をテレビで鑑賞して、
日経新聞、読売新聞、スポーツ報知、四季報を熟読して、
夕方になると決まって剣菱の熱燗を飲んでいました。
そうした・・・
父の背中を見て育った私は、詰まらない人生だと感じて、
真逆の人生を歩み、一見遠回りしてしまったようですが、
大学を卒業して安定した企業にに入り、退職金を目的に、
一生を捧げたいと一度も思った事が無かったのです。
つまり・・・
時代の違いもありますが、私が中2の時に起きた出来事が、
衝撃的だったわけで、当時の土曜日は正午までの半ドンで、
父が勤めていた信託銀行で、父は当時50歳、課長クラスで、
37歳の東大卒の支店長が赴任して来て、その土曜の午後に、
歓迎会を開催した様子で夕方酔って帰宅したのです。
父「よく聞け~!東大卒なんか大した事ないぞ~!!」
私「えっ・・・」
父「俺と2時間討論してな、徹底的に論破してやった!」
私「へぇ~・・・」
父「奴はなぁ~、ガキでな~、まる馬鹿なんだ~!」
私「・・・」
父「なにが東大だ~!ガキが~」
(プ・ル・ル・ル・ル・ル~!電話の鳴る音・・・)
母「パパ、ホンジョウさんから電話よー!」
(顔から血の気が引き、白い顔で慌てふためく父・・・)
父「ドゥーモッ!ドゥーモッ!先ほどはドーゥーモッ!!」
(直立不動で右手に受話器を握り、直角のお辞儀をする父)
父「ドゥーモ!ドゥーモ!ドゥーモッ!!」
(ペコペコペコペコとコメツキバッタのような父・・・)
私「ホンジョウさんって誰?」
母「パパの銀行の新しい支店長!」
私「大した事ないって人?」
母「それはパパ(笑)」
という事で・・・
「サラリーマンはつらいよ!」でした!!