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「シュタイナーの名言です。」?

 ツイッターに「教育は科学であってはなりません。それは芸術でなければならないのです シュタイナー」というツイートがかなり頻繁に投稿されています。ツイッターの他にもシュタイナーの名言としてあちこちに紹介されています。みなさんもどこかで見たことがあると思います。
 これはシュタイナーがそう言ったのでしょうか?疑問に思って少しだけインターネットで検索してみました。
 すると、某雑誌が2000年にシュタイナーの言葉として「教育は学問であってはならない。芸術であるべきだ。」と掲載したことを紹介するページがありました。
 他には、某A大学の先生がシュタイナーの教師像について「教育は科学であってはならない。それは芸術でなくてはならない。」として紹介するページがありました。
 しかし、この某A大学の先生がリンクしているページでは、1981年に某B大学の先生が行った講演の中で、シュタイナーは「教育は学問ではなく、芸術であるべきだ」と述べたと講演されたことが紹介されていました。その講演記録は本として出版されているそうです。
 某雑誌の紹介内容も、某A大学の先生の紹介内容も、時期的に情報源と見られる約30年前に某B大学の先生が行った講演会の講演記録の内容とは少しずつ異なる内容を紹介しているように見えます。
 では、某B大学の先生が約30年前に講演会で紹介した言葉はシュタイナーの言葉なのでしょうか?英語で検索してみました。
 すると、ウィリアム・K・フランケナ(William K. Frankena, 1908-1994)の「教育(EDUCATION)」で引用されている、イギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミル(John Stuart Mill, 1806-1873)の著書「論理学体系」の記載"education is not a science, but an art"がヒットしました。
 (as "In J. S. Mill's language (A System of Logic [1843], Book VI, Chs. V, XI), education is not a science, but an art."
 (http://www.ditext.com/frankena/education.html))
 シュタイナーは講演集「A modern art of education」(教育における現代芸術)にまとめられた講演の中でもジョン・スチュアート・ミルについて言及しています。
 つまり、ジョン・スチュアート・ミルの「論理学体系」に記載されている「Education is not a science, but an art」(教育は科学ではない、しかし芸術である。)の誤訳か、誤解か、あるいは、もしもシュタイナーがそれを語ったとしたら・・・という独自の解釈かは知りませんが、30年位前に某B大学の先生がシュタイナーは「教育は学問ではなく、芸術であるべきだ」と言ったと紹介したらしく、それが後に某雑誌で「教育は学問あってはならない。芸術であるべきだ。」とシュタイナーが言ったと紹介され、更に、某A大学の先生がシュタイナーは「教育は科学であってはならない。それは芸術でなくてはならない。」と言ったと紹介したということでしょうか?そうだとしたら、まるで伝言ゲームのようですね。確かに科学や学問ではなさそうです。
 そのような経緯で、日本では「教育は科学であってはなりません。それは芸術でなければならないのです。」が「シュタイナーの名言です。」として流布されているということでしょうか?つまり、少なくともジョン・スチュアート・ミルの言葉になぞらえていると思われる、シュタイナーの言葉かどうかも判らない言葉が、更に手を加えられながら、「シュタイナーの名言です。」として流布されているのではないのですか?
 これは本当にシュタイナーの名言といえるのですか?好意的に見ても、織田信長が「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」と言ったとかいうレベルの話なのではないでしょうか?要するに作り話なのではありませんか?ミルではなくて、シュタイナーの代表的な言葉として拡散していいのですか?後に「全部嘘じゃないか!」と非難されることにはなりませんか?
 そして、このことに気付いたのは、過去30年で私が初めてなのでしょうか?なんだか日本は文化的に孤島なんだなと思い知らされる結果で、今はこのことをこれ以上追いかける気がしませんので、誰か真相を知っている人がいたら教えて下さい。私はこの名言がもう少し拡散された頃に、再び調べてみようと思います。
 そもそも、この名言(みなさんは名言だと思いますか?)として紹介されている言葉が何を言わんとしているのか意味不明です。シュタイナーは「科学教育をしてはいけません芸術教育以外は教育と認めません。」と言ったとでもミスリードしたいのでしょうか。シュタイナーはそんなことは言っていないと思うのですが。シュタイナーは、科学教育も、芸術教育も両方大切だと言っているのではないですか?そして、なぜそれほど多くの人がこの変な名言に「その通りです!共感します!」とか言っているのか理解できません。余程つまらない科学教育を受けた人が多いのか、あるいは学校の先生の芸術に深く感動した人がたくさんいたということなのでしょうか?
 こういう創作名言?を有難く崇めるものの総体が日本のシュタイナー教育でなければ良いのですが。子どもはともかく、大人がそのレベルでいいのですか?反科学、反知性といった偏った大人の心情を子どもに押しつけているのではないのですか?子どもが芸術について勘違いをしてしまいませんか?そんなことではいつまでたってもフリースクール扱いのままだと思うのですが。


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