Q.仮執行宣言付きの支払督促とは?
A.支払督促について,仮執行宣言が付されているものをいう。
支払督促
民事裁判手続の1つに支払督促という手続があります。支払督促手続とは,金銭支払いなどの請求について,裁判所の書記官が支払を督促してくれるという裁判手続です。
裁判手続ではありますが,訴訟などのように裁判所に出頭して主張等をするなどの必要はなく,書面審理によって手続が進められます。
具体的には,支払督促の申立書を簡易裁判所に提出して申立てをすると,書記官がその書面を審査し,形式面に不備が無ければ,裁判所から支払督促の書面が債務者に送達されることになります。
債務者は,この支払督促に対して異議を申し立てることができます。異議が申し立てられた場合には,事件は通常の訴訟に移行します。
債務者のもとに督促状が送達されてから2週間以内に異議が述べられなかった場合は,この支払督促に仮執行宣言を付けるように申し立てることができます。
債務名義となる仮執行宣言付きの支払督促
支払督促に仮執行宣言が付されると,債務名義 となります。したがって,その仮執行宣言付き支払督促に基づいて強制執行することが可能です。
債務者は,この仮執行宣言が付された後でも,仮執行宣言付き支払督促の送達から2週間以内であれば,異議を述べることが可能です。その場合もやはり訴訟に移行することになりますが,すでに仮執行宣言がなされているので,強制執行をすることは可能です。
ただし,この場合には,後の訴訟で支払督促とは異なる判断がなされる可能性があります。判決で支払督促よりも少額しか認められなかったり,請求が全部棄却されたりした場合には,仮執行宣言付き支払督促によって執行した金銭を返さなければならなくなったり,あるいは損害賠償を支払わなければならなくなったりするおそれもありますので,強制執行するかどうかはよく検討しておくべきでしょう。
なお,仮執行宣言付き支払督促送達から2週間を経過した後は,もはや債務者から督促に対する異議を述べることができなくなります。