長編 夕暮れ魔法使い 第4章 | 優平の童話館

優平の童話館

創作童話を発表しています。
できれば、絵本を描きたかった。
絵が描けないので「絵のない絵本」童話を書いています。
今までに書きためた過去の創作童話童話や、新作童話の発表で更新します。

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「うん。確かにあのネコだったと思う」


「ふーん。黒マントが消えて、

とつぜんあらわれた黒ネコか……」


 そういいながら、マコトはユウヘイに、

目で合図を送った。

ユウヘイも小さくうなずき、ゆっくりマコトと

すべり台の方へ歩きはじめた。


 とつぜん、ふたりは二手に分かれ、

マコトはネコの前に、

ユウヘイは後ろに飛び出す。


「ニャー!」

とひと鳴き、サッとネコは後ろを向いて駆けだし、

ちょうどユウヘイの両手の中に飛びこんだ。


 しり餅をつくユウヘイ。


「ナイスキャッチ!」と、マコト。


「フゥゥゥー!」

ネコはユウヘイの腕を引っかき、

ものすごい速さで公園の水飲み場の方へ走っていった。


「いててっ!」

 ユウヘイは腕をおさえる。


 マコトが心配そうに近づいてきた。

「だいじょうぶ? ちょっとキズ見せて」


 ユウヘイはそっとおさえた手をはなした。


「あれっ!」引っかかれた腕はキズ一つなくて、

なぜか痛みも消えている。


「どうなってるの!」と、ユウヘイ。


「ボクがききたい」と、マコト。


 ふたりは、首をかしげる。


「それに」と、気味悪そうにユウヘイ。

「あのネコ、ボクの手に飛び込んできたとき

、一瞬だけど、すっごく重かったんだ」


 顔を見合わせ、二人は同時につぶやいた。


「魔法?」


 急に背中がゾクゾクと寒くなり、マコトがつぶやく。


「ユウヘイ、ボクこわいよ」


「ボクもこわい」


 公園は、いつのまにか夕暮れ時も終わろうとしていた。


 遊んでいた子供たちも、

おかあさんに連れられたヨチヨチ歩きの赤ちゃんたちも

みんないなくなり、

ユウヘイとマコトの二人きりになってしまった。


「きょうは、このくらいにしておこう」


「よし、この辺でゆるしてやろう!」

 大きな声でそういって、二人はゆっくりと出口の方へ歩き始めた。


「ニャ~」と、背中の方からネコの鳴き声。


「うわぁー!」


二人は全速力で駆けだし、

そのままうちに帰り着くまで走り続けた。


           つづく


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