野村昭子さんが亡くなられてしまった。
もう名前は知らなくても、そのお姿を見れば、「ああ、この人」と誰でもわかる女優さんである。
橋田寿賀子とかそのあたりの一般的なところは、他の由緒正しきサイトを確認されたし。
お生まれは昭和2年1月。
と言えば、昭和と平成のすべての時期を走り続けた方と言うことが分かる。
お名前の「昭子」も昭和からついたものなのだろう。
神田の医療器具問屋のお嬢さんで、上野の薬学専門学校を出た薬剤師さんの資格を持つ方だったのだそうだ。
東京大学医学部付属病院に薬剤師として勤務していたのだそうだが、大学の演劇サークルの手伝いをした関係で、演劇を志したのだそうだ。
俳優座第一期生となり、映画やテレビ、演劇等で活躍した人である。
個人的には、「ウルトラQ」の「カネゴンの繭」のお母さん役か。
この人の演ずるおばさん、お母さんは、リアリティそのものであった。
この時期のさまざまなドラマに登場する姿が、筆者同世代にとってのこの女優さんの示準である。
有名なところでは、黒澤明監督の「赤ひげ」で、小石川養生所の4人の賄婦の一人・おふく役が心に残る。
二木てるみ演ずるおとよに意地悪をしながらも、彼女を連れ帰そうとする娼家の女主人・きん(杉村春子、好演)を文字通り体を張って守る役が、本当に感動ものだった。
(なんでも、杉村春子を叩くための大根がなくなり、撮影所付近の八百屋で大根が売り切れたとか。)
代表作は、晩年の二時間ドラマや連続ドラマ等の脇役になるのかもしれない。
でも、1950-60年代から、半世紀以上も同じイメージとキャラクターを観客側に持たせ続けた人なのだから、素晴らしい女優さんだったと言えるのである。
野村昭子さんのご冥福を心からお祈りします。