夏の北海道旅行記2日目 【青い池の神秘と大雪山の無常、北海道の雄壮な大自然・前編】

 素早く片付ける予定が10月に入ってようやく2日目の旅行記を書くという我ながら信じられない遅延ペースなのだけど、それだけ本業が激務であるという言い訳もそこそこに、本編に入ろうと思う。ツイッターをする暇はあるんだけどブログを書く暇がないというのは当初から懸念していた事態ではあるのだけど、ツイッターは癒しでブログは本気という文章への取り組みの差異も大きい。


【冬に行った小樽・登別・函館編】

(以下敬体文)

 北広島市にあるホテル「札幌北広島クラッセホテル」で一泊した我々は、朝食前に昨晩も入った温泉に入浴しました。前夜は暗い中での入浴だったのでその真髄に気付かなかったのですが、ここの湯は黒いのです(正確には「黄褐色」)。ホテル周りの大自然、朝の爽やかな風景が温泉の水面に映ってとてもキレイなのに感動させられました。



 前回触れた通りホテルの周囲は大自然なのですが、ゴルフコースも設営されているようです。早朝はまだ誰もいませんでしたがここでゴルフをするのが目的でやって来る宿泊客も多いのでしょう。私たちはゴルフに興味はないのですが、素人目にも立派なコースでした。


 さて、温泉を満喫したあとは朝食です。朝食はバイキング形式でした。最上階の見晴らしの良いラウンジでの朝食です。6月という季節も相まって緑の地平と白くかすむ早朝の空のコントラストが素敵な景観でした。


 さて、本日はまる1日北海道での自由時間なので、いろいろ回ってみようと思います。この日は大雪山方面に向かおうという大まかな予定はあったものの、細かい部分は行き当たりばったりで行くつもりでした。ここでも予定には無かったのですが、道中に「ぜるぶの丘」という観光名所があるとのことでしたので行ってみることにしました。


 頼れるのは昨日に引き続き、有能カーナビゲーションのみどりさんと有能コーディネーターの持って来た観光ガイドの導きです。途中経過はあまり記憶に残っていないのですが、今ググってみたら岩見沢美唄旭川を通過して、なんと170kmもの大移動だったようです。北海道は広いなと改めて思い起こされます(その間、記憶に残るものが特に無いという次元で)

 みどりさんは相変わらず「劇的ビフォーアフター」みたいな淡々とした言葉遣いで適切にルートを教えてくれます。いつ「なんということでしょう……」とか言い出すかとハラハラしましたが(ウソ)。



 有能ナビにより無事にぜるぶの丘に到着しました。




 広大な施設で中をバギーやカートで回ることが出来るそうです。ラベンダーが満開の時期に来ればさらに美しい景色が見れたと思うのですが、6月下旬でもまだその時期には早かったようです。昨日も寒くて購入した長袖のカーディガンがこの日も手放せませんでしたしね。



 展望台にも登りましたが、我々が訪れた時期はスズメバチが発生していたらしく「スズメバチ注意!」の張り紙に、チキンな我々は早々に降りて来てしまいました。見晴らしは最高だったので残念です。有名なケンとメリーの木もこの展望台から見えます(ここには写っていませんが)。




 スカイラインの古き懐かしきCM。第15作、11分48秒に映るポプラの木は、このCMキャラクターだったケンとメリーの名を取ってケンとメリーの木と名付けられたそうです。このCMが大ヒットしてスカイラインはバカ売れ、ちなみにケンとメリーはこの次の16作目のCMで結婚し、シリーズは終了するという壮大なストーリーになっています。BGMも素敵だし、全部見るのも楽しいですよ。


 なお、いまホームページを見に行った情報によりますと、ぜるぶの丘の2014年度の営業は10月17日で終了するとのことです。今年中に見たいという方は急ぎましょう。


 さて、ぜるぶの丘のおみやげ販売所に立ち寄った際、店員さんから興味深い観光地を教えてもらいました。それは「青い池」という場所。大雪山へのコースからそれほど離れていないということで有能コーディネーターも予定に収めてはいたそうです。……というか青い池もその後向かう白金温泉も、大雪山国立公園の範囲内だそうです。さすが東京都よりも広い日本最大の国立公園。

 青い池……いかにも神秘的な名称で、今回の訪問を逃すと次はいつになるか分からないということで、我々は貪欲に青い池に向かうことにしました。



 北海道視点でなくともそれほど遠くないところに青い池はありました(18km)。



 駐車場から少し入ったところにある案内図。これによると青い池は昭和63年に噴火した十勝岳からの堆積物による火山泥流災害を防ぐため、美瑛川本流に複数建設された堰堤のひとつに水が溜まったものということです。つまり人造の池ということですね。水酸化アルミニウムなどの微粒子の影響により青く見えるそうです。Mac OS X Mountain Lionの壁紙に使用され、世界的に有名になったそうです。


 青い池の画像は世界中の有名カメラマンが撮影しており、今さらトーシロの安っすいカメラで撮影した画像など載せる価値なしなのかもしれませんが、ここは私のブログですし主催者権限で載せます。







 偶発的に生まれた人造湖とは思えないほど、とても神秘的で美しかったです。立ち枯れした木々や生物は一切存在し得ない池が醸し出す雰囲気は、エヴァンゲリオンセントラルドグマを連想しました(あっちは赤い水だったけど)。



 青い池からわずか5分ほどの位置に白金温泉と白ひげの滝があるという有能コーディネーターの言葉に従い、そこまで足を伸ばすことになりました。




 橋の上から白ひげの滝の雄大な光景が広がります。ここの水も底の方は青い色が付いており、温泉地特有の水質であることを想起させます。



 そしていよいよ本日のメイン、大雪山国立公園に向かうのですが、それは次回の更新で書かせていただきます。その日のことは一回の更新で書くのがこれまでのポリシーだったのですが、今回は2日目の濃さと3日目の薄さを考えてちょっとネタを残すことにします(ケンとメリーの木の情報を調べるうちに力尽きたとも言う)。予定変更しちゃってごめんなさい。今年中には終わるのかと私事ながら心配している更新頻度なのですが、可能な限り早い機会に続きを書きたいと思います。



 次回、【青い池の神秘と大雪山の無常、北海道の雄壮な大自然・後編】に続く。



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夏の北海道旅行記1日目 【サッポロビール園編】

 ブログの更新が長らく滞っていて、お待ち頂いている方々には大変申し訳ない。そんな中、久しぶりの更新が旅行の記事という当ブログ本来の傾向とは違うイレギュラーな更新になってしまったことも申し訳ない。

 そもそも旅行になど行ってるからブログ更新が遅れるというお怒りの言葉もありそうな気がしつつ、旅行からもすでに1ヶ月以上経過しており、記憶が曖昧になる前に一気に書いてしまおうと思う。お許しいただきたい。



(以下敬体文)

 実はもうすでに曖昧になりかかっているのですけど……撮り溜めた写真から記憶を振り絞り、それでも分からない点は同行者に聞くという手法で頑張ります。

 6月21日〜23日にかけて、2泊3日で北海道旅行に行きました(貴重な有給をつぎ込んで)。北海道はこれで3回目ですが、今回は札幌と富良野を中心にその周辺で行けそうなところに行ってみようという割とアバウトな企画旅行です。ちなみに2回目の際の小樽・登別・函館編は以前ここで記事にしていますので興味がおありでしたらご覧下さい。


 前回と同じメンバーでおなじみの関西国際空港から出発。関空国内便のスペースではポケモン関空店がオープンする予定でした。残念ながら我々の出発時点でまだ開店していませんでしたが。



 2014年6月26日オープンとあるので今は開店していることでしょう。相変わらず限定版に弱い私は関空限定ピカチュウが欲しかった……。


 
 で、北海道に行くというのに関空内の回転すし店で昼食を取りました。向こうで美味しい本場の寿司をたらふく食べれば良いというのに……。今回の旅行を企画した敏腕コーディネーターの言うことには今夜はジンギスカンを食べるので、これで良いのだとのこと。




 飛行機内での過程は省いて日が西に傾きかけた時刻に新千歳空港に無事到着。夏の時期の北海道は私は初めての経験です。梅雨のない北海道はとても快適でしたが、むしろ涼しすぎるというのが印象でした。


 基本、旅行時はドライバーの私の運転でレンタカーを走らせ、本日の目的地、サッポロビール園に向かいます。近年ではキリンビールアサヒビールも札幌でビール園をやっているという、ジンギスカンだけに仁義なき戦いが行われている状況なのですが、やはり札幌と言えばこの地で生まれたサッポロビール園に行くべきだと思うのです。



 この赤レンガがビール園のシンボルですね。後ろには同じくシンボルであるサッポロビール工場の煙突が見えます。



 ちなみに手前はサッポロビール博物館。我々の現地到着時刻が遅く、残念ながら見学は出来ませんでした。


 ここ、サッポロビール園なのですが、観光客の多さを考慮してなのでしょう、3つの食事施設が用意されていました(ジンギスカンホール、ライラック、ガーデングリルの3つ。ジンギスカンホールはさらに3つのゾーンに分かれています)。ただ時刻は7時頃にさしかかり、ちょうど混み合う夕食時。施設3つでも捌ききれないほどの満員状態でした。とりあえずどの施設で食事するのかを待合所で決め、予約を入れ順番が来るまでしばらく外で待つことになりました。






 夕暮れが迫って実に良い雰囲気なのですが、6月下旬とは思えない涼しさが夏真っ盛りの服装の私を苛みます。この時期の札幌の夕暮れは涼しいなんてもんじゃない、震えがくるほど寒いのです。



 ふと見るとビール園の隣にアリオ札幌がありました。ちょうど待たされていることもあるし、軽く上に羽織るものをここで購入しました。



 寒さはこれでしのげましたが、ひもじさは未だ満たされません。あとたらふくビールを飲みたいというお酒飲みの喉の渇きの欲求も。


 で、待たされること90分あまり。かなり待たされてようやく我々一行の名が呼ばれ、席が空いたという放送が流れました。ビール園を観光地の一つにしようと計画されている方は事前予約は必須だと思われます。



 どこの施設予約だったのかという記憶が、この時点で食べることしか考えられなかった私にはすっぽりと抜け落ちているのですが(有能コーディネーターに雑事を全振りしていたためでもある)、この画像でどこなのか分かる方もおられると思います。かなり広大な空間で、これが幾つもあるのに90分待たされるとか、いかに観光客が訪れているかの証左となると思います。


 事前予約もしていなかったくせに有能もないものですが、コーディネーターがここからのドライバー役を引き受けてくれるので(この辺が有能)、気兼ねなく本場のビールを味わうことが出来ました。ジンギスカンも注意して焼かないと焦げてしまうという難しさはあるものの、非常に美味しかったです。肉だけおかわりしたぐらいです。



 美味しい食事を堪能した我々は、本日の宿へと向かいます。予定よりかなり遅くなってしまいました。札幌から逆方面の新千歳空港の方向に戻った北広島市にあるホテル「札幌北広島クラッセホテル」が本日の宿です。

 緑の中にぽつんと建てられた贅沢な造りのホテルなのですが、その分夜道だと全くといって良いほど目印がなくやや不安になってしまいます。サザエさん、あるいは劇的ビフォーアフターのナレーションみたいな声のカーナビ(旅行中「みどりさん」と命名)に頼るしかありません。


 みどりさんのおかげでなんとかホテルに到着し、早速チェックインしました。夕食は済ませてあるので、本日最後の欲望に伴うお目当ては温泉です。ここの温泉はお湯の質がすごく良く感じられました。その露天風呂の真髄は翌日の朝、改めて気づくのですけどね。



 慌ただしい北海道での初日が終わります。明日は大雪山方面に足を伸ばし、いろいろ見て回る予定です。目で見る観光という点では、明日からが本番でしょうか。今日は「舌で感じる北海道」でしたし。


 ……その割に今回の旅行でも食べ物の画像を撮影できていないのが残念です。



 次回、【青い池の神秘と大雪山の無常、北海道の雄壮な大自然・前編】に続く。



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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第38話「天馬VS剣城!」の感想 【正統派展開と思いきや意外展開の嵐!】

 ちょうど一ヶ月ぶりの更新、お待たせしました。


 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第38話「天馬VS剣城!」を観ての感想を書く。結局イナズマイレブンGOのシリーズはこの2人のライバル関係であるということが改めて描かれる。ただ一筋縄でいかないというのもイナズマイレブンシリーズのある意味伝統。ものすごく意外な展開が後半に起こり、オーソドックスな展開にはなっていない。さすが日野社長(褒め言葉)。


 また番組をご覧の方はもうお知りおきの話だが、イナズマイレブンシリーズは本作の最終話を持って一旦テレビアニメの放映枠からは去るということになった。非常に残念だけどその辺の話は最終話まで書いてから総括したい。私の中ではまだ終わっていないわけだし。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第37話「決戦!ファラム・ディーテ!!」の感想 【必殺技の応酬は見ていて楽しい!】
 をご覧ください。

  • それ以外の感想は、

ここをクリック。

 で、一覧表示されます。

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 松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は、長き戦いを経て星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の決勝戦の舞台【ファラム・オービアス】に到着した。


 そこに待ち受ける敵、それは銀河系最強の惑星、ファラム・オービアス代表【ファラム・ディーテ】。しかし天馬たちを心から震撼(しんかん)させた事実はチームメイトだった剣城京介(CV:大原崇)がファラム・ディーテのキャプテンマークを付け、敵のリーダーとして立ちはだかったことであった。

 天馬たちの疑念に一切の弁解もせず打倒アースイレブンを宣告する剣城。さらにさらに、これまで監督としてアースイレブンをここまで率いて来た黒岩流星(CV:佐々木誠二)までもがファラム・ディーテに与(くみ)する。


 エースストライカーとチームの支柱を同時に失っただけでなく、それらが敵として向かって来るという最大のピンチ。剣城は打倒アースイレブンが掛け声だけではないことを証明するかのように必殺シュート「バイシクルソード」をアースイレブンゴールに突き刺し、先制点を奪う。

 天馬は友の裏切りに深く傷つくが、プレーを介して剣城の行動に何か深遠な意味があることに気付く。それは長年戦友として、そしてライバルとして同一チームにいたからこその気付きだったのかもしれない。

 剣城が心の底から地球を裏切ったのではないと確信した天馬にもはや憂いは無かった。「宇宙一を決するこの大舞台で本気の剣城の率いるチームとサッカーを楽しむ」という新たな目的を得た天馬たちアースイレブンは敢然と立ち向かい、瞬木隼人(CV:石川界人)の必殺シュート「パルクールアタック」が同点ゴールをこじ開ける!!


剣城「ふっ……やはり楽しませてくれる相手だ」

 剣城は同点に追いつかれたというのにどこか嬉しそうにかつての友たちのプレーを称(たた)える。だが真剣勝負なのは彼の本音でもある。どんな意図があれど、この試合は負けられないという思いは剣城の心中を満たしていた。そして特に、天馬にだけは後塵(こうじん)を拝するわけにはいかなかった。


剣城「だが、それもここまでだ!!」


 一転して厳しい視線を向ける先、そこには当然のごとく背番号8番の男の背中があった。天馬も剣城の鋭い視線を感じて振り返る。そして剣城に負けない鋭い眼光で、勝利を誓うのだった。


天馬「この試合、俺たちが勝つ!!」



   オープニング



 試合は両キャプテンの心理状態そのままに均衡状態に戻った。同点に追いつかれ、逆襲に転ずるファラム・ディーテ。

 先陣を切る剣城に挑むのはやはり天馬だった。キャプテン同士の意地の張り合いのような激しいボールの奪い合いは一瞬天馬が制したかに見えた。



 しかし剣城はその刹那(せつな)に体を入れ替え、スライディングでボールを奪い返し即座に駆け出す。お互いがお互いのプレーを称え合うかのようなプレーの応酬はそのまま両チームのプライドの激突でもあった。


剣城「さすがだ……だが!!」
天馬「やっぱり剣城はすごい!!」



 そのままもつれ合うかのような体勢でぶつかり合う両者。お互いを認め合いつつも越えなければならない壁という概念において、2人は同じ星の人間でありながらこの宇宙の中で最大のライバルであるとも言えた。このシーン、「ドリブル技を持たない剣城なんだから天馬は『ワンダートラップ』使えば楽勝じゃん」とか私のようなことを考えてはならない。



 試合は両者の同調者をも巻き込んで進行する。こぼれたボールを確保した背番号9番リュゲル・バラン(CV:ランズベリー・アーサー)から背番号8番、弟のガンダレス・バラン(CV:興津和幸)にパスが送られる。

 しかしそれを鉄角真(CV:泰勇気)がヘディングでカット。ルーズボールは野咲さくら(CV:遠藤綾)がドリブルで敵陣に持ち込む。さくらは5番セレン・メルヴィル(CV:高垣彩陽)のスライディングタックルをかわし、前線の天馬にセンタリングを送る。

 そこに駆け込むのは天馬と、そして剣城だった。空中のボールに飛びつく両者。お互いがまたも宿命の対決に挑む中、天馬の心中は2人が出会った頃の出来事に思いを馳せていた……



天馬「雷門サッカー部は誰にも渡さない! 絶対に!!」
剣城「じゃあ奪ってやるよ!!」


 かつてフィフスセクターのシードだった剣城が雷門中サッカー部を潰しに来た際、頑強にそれに立ちはだかったのは天馬だった。その出会いの時の心境がお互いの意識にフィードバックしたのだろうか、往時(おうじ)の彼我(ひが)の実力差そのままに、発した言葉そのままにボールは剣城が奪い取ってしまう。


 天馬を振り切り、独走態勢に入る剣城の前に立ちふさがるのは真名部陣一郎(CV:野島裕史)と皆帆和人(CV:代永翼)の頭脳派コンビだ。

 的確なマーキングでシュートコースを限定された剣城は飛び上がって遮二無二(しゃにむに)シュートを放つが、シュートを撃つにはそのコースしかない状態で撃たれたシュートだけにキーパーの井吹宗正(CV:鈴木達央)も予測が立てやすい。ガッチリと受け止め、ゴールを死守する。



 ナイスプレーに喜ぶベンチの西園信助(CV:戸松遥)とマネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)。信助はさすがにキーパーだけあって、真名部と皆帆の動きがあってこそのシュート阻止であったことを理解していた。


信助「ディフェンスがしっかりとコースを塞(ふさ)いだからね!」



 井吹はすかさず攻撃に転じるようオフェンス陣に檄を飛ばし、ボールを投げる。その先にはオフェンスの軸である司令塔の神童拓人(CV:斎賀みつき)がいた。

 神童にパスを要求する天馬。神童は阿吽(あうん)の呼吸でそちらにパスを送る。その背を追うのは剣城。剣城の脳裏にも、天馬との最初の出会いのシーンが去来する。



 フィフスセクターの刺客として雷門中に侵攻し、神童たちファーストチームをも痛めつけた剣城にとっての最後の攻略相手、それはサッカー初心者のくせに生意気な口を叩いた新入部員の頃の天馬だった。


 その頃、唯一剣城たち【黒の騎士団】に対抗できたドリブル、今では一層の磨きがかかった宇宙随一のドリブルで攻め上がる天馬。そこに駆けつけるのはアイパッチが印象的なサディスティック美女、背番号6番ヒラリ・フレイル(CV:小林ゆう)だった。



 獲物を狙う時の彼女のクセなのだろう、舌なめずりをしたヒラリは天馬からボールをかすめ取る。剣城に気を取られていたとはいえ、天馬から必殺技なしにボールを奪うとはさすがは紫天王の一角だ。


 ヒラリは即座にヒールパス。天馬の後方に迫っていた剣城にパスを出す。この辺の連携は素晴らしく、ヒラリはもしかしたらチーム・サザナーラでプレーをした際にアズルとまでは行かなくともチームメイトの考えを一定程度読む技術を得たのではないかと思わせた。



 パスを受けた剣城の、天馬との記憶がさらに呼び覚まされる。雷門中だけでなくサッカーそのものを否定していた剣城の思い、それを打ち砕かんとした天馬の思い。その思いのぶつかり合いが現実のプレーにまたもフィードバックする!


天馬「俺は……!!」
剣城「お前には……!!」
天馬&剣城『絶対に負けない!!!』



 やはり2人とも「お前にだけは負けたくない」の思いで戦っていた。両者のその思いがまったくの同程度であったことを示唆するかのように、その力比べはお互いがはじき飛ばされ、引き分けに終わる。その魂の激突は皮肉にも背後に迫るブラックホールの存在を際立たせている。


 ダメージを受けたであろう両者を、勝利の思いを持って応援する2人の王女たち、ララヤ・オビエス(CV:高垣彩陽)とカトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)が心配そうに見つめる。



 ルーズボールには2人との付き合いがもっとも長い神童が飛びつく。後輩2人の思いには一切の感情を混じえず、クールに職務を果たす神童は九坂隆二(CV:岡林史泰)にパスを出す。

 天馬の頑張りを素直に受け止める九坂は7番ネオル・ロッツ(CV:戸松遥)の妨害を、ソウル発動という強引な手段で打ち破る。



 例えおにゃのこ相手であっても森村好葉(CV:悠木碧)以外のおにゃのこには容赦ない九坂。チーム・ラトニーク戦での虫人間相手の時のようにグラウンドにめり込むような潰され方じゃなかっただけマシなのかもしれない。


 ネオルをぶっ潰した九坂は最前線の市川座名九郎(CV:小西克幸)にパス。肉体派同士のホットラインだ。座名九郎に張り合うのは4番DFのラドンモーム(CV:泰勇気)だった。座名九郎より高く飛んだラドンはボールを奪取し、ボールは一旦は九坂が潰したネオルが押さえる。



 当然のごとく向かって行く九坂だったが、さっきのお返しとばかりにネオルの必殺技「ホログラムロック」の魔の手が九坂を捕らえ、グラウンドに叩き伏せる。全国のネオルファンはここで大いに溜飲(りゅういん)を下げて欲しい。


 ネオルは11番FWのロダン・ガスグス(CV:藤村歩)にパスを送るが、そこは神童がカットする。目まぐるしいまでの攻守の展開だが、これこそが両チームの実力の高さの証明でもある。

 神童は同点ゴールを奪った瞬木にパス。チーム1の瞬足は逆転ゴールを決めるべく、敢然とファラム・ディーテゴールに走り込んで行く。

 だがそこには両チーム1の巨漢、3番DFのバルガ・ザックス(CV:岩崎了)が待ち構えていた。どこから取り出したんだと小一時間問い詰めたくなる巨大な岩のハンマーを振るう必殺ディフェンス技「ロックハンマー」で瞬木の攻勢をストップさせる。



 こんなんが落下してきたらそれだけで恐怖だ。


バルガ「遅い! 亀の歩みのように遅い攻撃だ!」



 その後も両チーム一歩も引かない大熱戦が続く。その両チームの素晴らしいプレーがライフエナジーとして対ブラックホール最終兵器【コズミックプラズマ光子砲】のエネルギーとなっていく。大いなる野望を秘めたこの試合の首謀者、ビットウェイ・オズロック(CV:津田健次郎)はその状況を笑みをもって見つめていた。決してサッカーを楽しんでいるわけではない。野望へのカウントダウンが順調に進んでいることが彼の興味の全てなのだ。


オズロック「いいぞ……もっと熱くなれ……」



 オズロックのそんな歪(ゆが)んだ思惑は範疇(はんちゅう)の外とばかりに試合は続く。ドリブルでゴールに迫るヒラリを見て、皆帆にプレッシャーをかけるよう指示を出す井吹。ディフェンスの司令塔はキーパーが務める、まさに理想形だ。



 だが攻撃時に挑みかかってくる男はヒラリにすればこの必殺技の格好の餌食(えじき)だ。妖艶な笑みを浮かべ皆帆の頬を軽く撫(な)で、しかる後に斬り捨てる! ヒラリの代名詞的な必殺技「ジャックナイフ」が炸裂する。


 邪魔者を排除したヒラリはストライカーであるロダンにラストパス。ロダンはノーマルシュートを放つが、それは井吹のパンチングによって阻まれる。シュートは辛くもサイドラインを割り込むが、件(くだん)のロダンに痛めつけられた井吹の足がさらなる悲鳴を上げる。



 そんな中、ファラム・ディーテサイドのベンチで変化が起こる。監督の黒岩が立ち上がり、剣城に指示を出したのだ。



黒岩「剣城……やれ!」



 主語がないその指示だったが、剣城、そして他の選手たちにはそれだけで意図が伝わったらしい。剣城は驚愕の表情を、紫天王たちは邪悪な笑みをそれぞれ見せる。


 意を受けたヒラリからロダンにボールが送られる。ロダンはあえて緩慢なトラップをしてボールをアースイレブンゴール前に転がす。イージーなボールを押さえに向かった井吹だったが、それが黒岩の指示、即(すなわ)ち罠であった!



 ボールを押さえようとした井吹の足めがけてバラン兄弟のスライディングがぶち当てられる。痛めている右足を両側から挟み込むという逃れられないダメージを受け、井吹は悶絶(もんぜつ)する。これが黒岩の作戦だとしたらあまりに卑怯なやり方だが……。



 その後の紫天王の執拗(しつよう)なシュートを、井吹は痛めた右足で懸命にカバーし続ける。だがロダンくんはシュート後の勢いがあまったフリして井吹の足に体当たりするという悪い行為に及ぶ。

 さらに撃たれたガンダレスのシュートを右足ではじいて何とかゴールを死守する井吹。しかし彼の右足は限界に達していた。葵は井吹の頑張りを喜ぶが、井吹の足の状態に気が付いていた信助は心配が先に立つ。



 ファラム・ディーテのコーナーキックで試合再開。ガンダレスの放ったキックは絶妙の角度で井吹の頭上を越えていく。飛びつく井吹だが、そこにロダンがソウルパワーむき出しで挑みかかる!



 ロダンのソウル「ドルーガ」の咆哮(ほうこう)が強烈なシュートとなりアースイレブンゴールに突き刺さる! 足を引きずりながらの場面でこんな豪快なシュートを撃たれてしまってはさすがの井吹もどうしようもない。


 ロダンのゴールで試合はまたもファラム・ディーテがリードを奪った……かに見えた。しかしここで意外な展開、審判がこのゴールの無効、ノーゴールを指示したのだ。今まで仕事した試しがない審判が働いたという歴史的瞬間に我々は立ち会っている。


 試合監視衛星からの再現映像がスタジアムのスクリーンに映し出される。それによるとガンダレスのコーナーキックゴールラインを一瞬ではあるが割っていたということらしい。

 こんな厳密なシステムがあることはすごい。すごいがそれよりさっきから井吹に対して繰り返されている反則行為(キーパーチャージ)について一回ぐらいジャッジしろよと私は一言どころか五万言ぐらい言いたいのだが。



 まぁ何にせよ命拾いしたのはアースイレブンだ。一同はホッとため息をつく。イナズマシリーズは判定自体がそもそも奇跡的に少ない案件だけど、それが主人公サイドに有利に働いたというのは本当にレアケースだろう。


 幸運を喜ぶさくらや、運も実力のうちだと強がる鉄角らに対し、ゴールを奪われるという不名誉がチャラになって一番喜ぶべきはずの井吹の表情が冴えない。

 限界に達している足の痛みを抱え、井吹が楽観できないのは当然だった。今は幸運に救われたが、このままでは遠くないタイミングで必ず失点を喫してしまうだろう。


 井吹は選手としては最後まで取りたくは無かった決断をする。ベンチで見つめる信助に視線を移した井吹の真意は、信助にも以心伝心で伝わって来る。

 キーパーという同じポジション同士だからこそ理解できる心中のやり取りを、天馬も神妙な表情で見守る。



 そしてそこで前半戦終了のホイッスルが鳴り渡る。1−1の同点で折り返した運命の一戦は、後半戦にすべてが委ねられることとなる。試合展開はほぼ互角だったが、問題はキーパーの井吹の怪我の状態だ……。

 ハーフタイム、最後にベンチに戻って来た井吹に天馬が声をかける。何か言いたいことがあるのではないかという問いかけに伊吹は観念したかのようにサバサバと、足を挫(くじ)いていることを告げる。そして天馬に向き直り、交代させて欲しいと告げるのだった。

 キーパーの交代は信助しかいない。天馬から、そして伊吹から託されたゴールを守るという重要なポジションを、信助は小さな身体から溢れ出す大きなガッツで受け止める。



「僕が、守ってみせる!!」


 ここで信助が守るもの……それは単にこの試合のゴールというだけでなく、地球の運命、そして全宇宙の運命を守るということなのである。銀河の未来は今、ソウルを持たないこの小さな少年の双肩(そうけん)にかかっている。


 ベンチに座り込んだ伊吹の右足は冷えたタオルでアイシングが施(ほどこ)されていた。そこに語りかけるのは神童だ。



神童「なぜ怪我を隠していた?」
井吹「お前にだけは心配されたくないからな」


 その変わらぬ意地っ張りな態度に出会った頃からの確執を思い出したか、神童は思わず笑い出してしまう。そこに真名部から興味深い報告がなされる。敵のシュートがグラウンダー(地面スレスレ)のものが多かったというのだ。

 皆帆もそれを受け、敵が最初から井吹の足を痛めつけることが目的だったのではないかと推理する。それらがすべて黒岩の指示であることを神童が示唆する。

 その卑怯な行為をまっすぐな性格の鉄角は我慢ならない。ベンチの壁を叩いて抗議する。だが他人の心の裏を見る人生に長(た)けている瞬木からすればこの作戦はむしろ当然だと一笑に付す。


瞬木「相手の弱いところを突くのは当然だろ?」


 だからといって何でもして良いということにはならないと鉄角は食い下がるが、それこそが黒岩という人物の証明なのだと神童は語る。瞬木は神童が黒岩を嫌っていたことを挙げ、それなのに理解があるんだなと皮肉を利かす。

 神童はその言葉に悔しさを隠すことなく正直に、嫌いながらも一目置いていた黒岩という存在を認める。そしてその人物の姿を見つめる。何といってもその人物は現在、敵チームのベンチに陣取っているのだから。




 件の男、黒岩はファラム・ディーテイレブンにもっと強く当たれと指示を出す。物理的にアースイレブンの選手たちを潰せという指示であり、それは神童の見立てが正しかったことを意味していた。


 勝つことが至上命題とは言え、心の中では正々堂々とアースイレブン、そして天馬に打ち勝ちたいという思いが強い剣城は納得しない様子を見せるが、監督命令を厳命する黒岩の前に沈黙を余儀なくさせられる。






 後半戦開始直前の両チームの布陣。ファラム・ディーテ側にメンバーチェンジやポジションチェンジはない。超攻撃的な3−3−4のフォーメーションだ。


 注目はやはりアースイレブンサイド、井吹の代わりにキーパーに入った信助がどこまで通用するかであろう。今のところソウルを持たない彼がそれぞれソウルを持つ紫天王たちのシュートを止めることが可能なのかどうか。シュートに持ち込ませないためのディフェンス陣の頑張りも大事な要素だ。



 ファラム・ディーテボールのキックオフで後半戦開始。早速挑みかかる九坂をかわしてリュゲルはネオルにパスをする。

 前半戦よいところが無かった座名九郎がうまく絡んでボールを奪い取る。しかしさくらへのパスはセレンがカットして失敗する。相変わらず攻守が目まぐるしく入れ替わる高レベルの展開だ。

 セレンからのロングパスで一気にゴール前のロダンにパスが通る。ロダンはもちろんシュート体勢に入る。信助は早速キーパーとしての試練に晒されてしまう。


信助「止める!!」
ロダン「また潰してやんよ!!」


 惑星ガードンでの戦いで信助を負傷させたロダンが最初の相手というのは何たる運命のいたずらか。ロダンは必殺シュート「カザンライ」で信助負傷の再現を狙う。信助も今度こその思いを込めて、同じ技「ぶっとびパンチ」で迎え撃つ!




 この戦いは信助の勝利に終わる。ファーストコンタクトを上々の成果で終えることができ、信助の表情にも自信がみなぎる。後事を託した井吹もそのプレーを褒める。

 転がったボールはまだ生きている。神童とヒラリが駆け寄るが先に追いついたのはヒラリだった。ヒラリはツータッチでリュゲルにボールを送る。

 リュゲルのボレーシュートがゴールを襲う。信助はパンチングで逃れる。その跳ね返りにガンダレスが駆け込むのを見て取った真名部から適切な指示が飛ぶ。対応した信助は再度のパンチングでゴールを守る。

 その跳ね返りに反応した真名部はボールをキープした剣城に挑む。剣城がキープすることまで計算のうちだと豪語する真名部に対し嘲笑するかのような表情を見せた剣城は「ではこれも計算して見せろ」と言わんばかりに華麗なトラップで真名部を翻弄(ほんろう)する。


 そして剣城がボールを託したのは、バラン兄弟だった。キャプテンからの指示を受け、この機会を逃す彼らではない。これまで単独では阻止されたことがない合体シュート「スクリーム・オブ・エデン」が信助に襲いかかる。



 ロダンを止めた必殺キーパー技「ぶっとびパンチ」を繰り出した信助だったが、やはり合体シュートは止められなかった。今度こそ正真正銘のゴールを奪われてしまう。


リュゲル「こういうのを『決まった』って言うんだ」
ガンダレス「スゲーやっぱスゲーや俺たち!!」


 シュート後のおちゃらけた雰囲気からは察せられないが、これがファラム・ディーテの本気のシュートだ。信助はその威力に改めて敵の強さを実感する思いであった。

 仕切り直しのため自陣に引き上げる剣城と一瞬視線が交錯した天馬は、無表情で歩み去る剣城に対して敵愾心(てきがいしん)を燃やす。



 アースイレブンボールのキックオフで試合再開。瞬木からのバックパスを受けた神童の前にはまたも難敵、ヒラリが食い下がる。


ヒラリ「抜けると思って?」



 その迫力に押されたか、それとも声を聞いて親友の霧野蘭丸(CV:小林ゆう)を思い出してやりにくさを感じたか、神童は勝負を避けさらに後方の真名部にパスを出す。


 そのパスに追いついたのは剣城だった。すかさずマークする真名部と皆帆。しかし抜群のキレを見せる今日の剣城は個人技でアースイレブン屈指のDFを抜き去ってしまう。


 ゴール前に転がったボールに飛びついた信助をボールごとかわしてゴール前に出た剣城。信助が抜かれゴール前は空っぽだ!


 無人のゴールめがけて剣城がシュートする。万事休すかと思われた事態を救ったのは鉄角のカウンター必殺技「デッドストレート」だった!!



 カウンターだけあって「デッドストレート」はそのまま敵陣へのシュートとなる。キーパー、アルゴ・バージェス(CV:佐藤健輔)にとっては久々のプレー機会が訪れた。



 必殺キーパー技「リバウンドレイヤー」で鉄角のシュートを阻止するアルゴ。瞬木には一瞬の隙を突かれてゴールを許したが、見た目通り守りは堅そう。


 跳ね返ったボールはセレンが胸トラップし攻撃に転じる。それを阻止するのは天馬だった。天馬のスライディングを受けてボールはサイドラインを割り、試合は中断する。

 そのタイミングを受けて、信助はピンチを救ってくれた鉄角に感謝する。またピンチの発端を作ってしまった真名部と皆帆も今度は絶対に抜かせないと信助にプレーの至らなさを詫びる。

 否応なく士気が上がるアースイレブン。次は自分たちが活躍する番だと九坂が周囲に声をかける。



九坂「次は俺たちの番だな(バンダナ)!」
さくら「ええ、取られたら取り返す!」
好葉「そう!」
瞬木「ま、決めるのは俺だろうけどな!」


 それぞれが彼らなりの決意で戦うことを表明していた。それを頼もしく見つめる天馬は、神童に向けて作戦変更を告げる。最終ラインを上げて攻撃的に行くというのだ。一瞬心配になった神童だが、天馬に促(うなが)されて見て取ったゴール前の雰囲気を見て納得する。



天馬「ゴールは大丈夫です!」
神童「そうだな……攻めるぞ!」


 まだ守備を心配する座名九郎が作戦に異議を唱えるが、天馬は信助なら絶対にゴールを守ってくれるという確信があった。これは理屈ではない。長年の友情が与える担保なき信頼なのであった。

 友を信じ自信満々に点を取りに行くと語る天馬を見て、座名九郎はその胸の奥底で蠢(うごめ)く何かを感じるのだった……



 試合はファラム・ディーテのスローインで再開される。その際、信助は自分の前がガランとしていることに気付く。最終ラインを上げ前がかりになった作戦のせいなのだが、それが天馬から自分への信頼の証(あかし)であることを知る。

 信助はほっぺたを手のひらで叩いて気合いを入れ直す。友が自身を信頼してくれている。それを受けて燃えないはずが無いのである。信助は絶対にゴールを守ることを態度で示す。


 セレンのスローインを受けてヒラリが攻め上がる。そして剣城にパスを出す。剣城は先ほど信助に誓いを立てたはずのまなみなをまたも簡単に抜き去り、ゴールに迫る。

 雷門中以来の仲間である信助と剣城が実戦で戦う初の機会。信助も気合い十分で立ち向かう。ベンチで見ていた井吹は気が気ではない。痛めている足をも厭(いと)わず、声を限りに信助にエールを送る。



「信助! お前が最後の砦だ! 止めろ!!」


 キーパーとして信助の使命感、そして剣城の恐ろしさを共に熟知する井吹の心の叫びのような応援を受け、信助のハートは勇気づけられる。

 剣城もことこの場において手加減などしない。先制点を挙げた必殺シュート「バイシクルソード」を抜き放つ! これまでの「ぶっとびパンチ」ではおそらく止めることは敵わないだろう!



 そこで追い詰められた信助に新必殺技が誕生する。何と剣城の切れ味鋭いシュートをおでこに乗せ、宙高く飛び立ち始めたのだ!! 何を言っているのか訳が分からないと思うが、ありのまま今起こったことを話すぜ!!ミッシェル・ポルナレフ調)




 これが信助の新必殺技「ぎんがロケット」だ!! タイミングよくおでこに乗せて足から火を噴いて銀河の彼方へ飛んで行くという見た目はおバカな必殺技だったが、見事にゴールを守りきった。

 はじいたボールはサイドラインを割る。信助は大喜びで自身のプレーを井吹に報告する。かつては信助を見下していた井吹も、このプレーには我がことのように喜んで信助を褒め称える。



 渾身のシュートを止められ、しかもこんな厨二なポーズを取られているというのに、剣城はなぜか満足そうな笑みを浮かべていた。その険(けん)のない表情……雷門中以来、長年の仲間である信助の成長を見届けて喜んでいるとしか思えないのだが。


 信助のもとに天馬が駆け寄って祝福する。アースイレブンのもう一人の守護神とおだてられ、信助は頭を掻いて照れる。

 そんな信頼感の上に醸成された友情を見つめ、座名九郎は胸のイナズママークを握り締める。ソウルとは違う何かが、彼の制御しきれない何かが表面に現れようとしている……!?



 惑星の運命がかかった試合であるという前提を無視してしまうほどに素晴らしい好ゲームがフィールドでは繰り広げられていた。決勝戦まで残った両チームの実力が伯仲(はくちゅう)し、サッカーファンならずとも血沸き肉踊る展開となっているのだ。


 天馬は必殺ドリブル技「風穴ドライブ」でラドンを蹴散らし前方視界クリアにする。パスを受けた座名九郎が放った重いシュートはアルゴがガッチリとキャッチする。

 アルゴの挑発を受けた座名九郎はまたも胸の奥に違和感を見出す。一体これは……?



 今度はファラム・ディーテの攻勢。ネオルが攻め上がってくる。待ち受ける鉄角は軽くフットワークを効かせる。これは彼の必殺ブロック技「フットワークドロウ」の挙動だ。



 ボールを奪った鉄角は神童にパス。神童はここで満を持して彼専用の必殺タクティクス「神のタクトFI(ファイアイリュージョン)」を発動させ、さくら、九坂、天馬を炎のタクトで誘導する。

 そしてまたも天馬から座名九郎へとパスが渡る。その目の前には座名九郎以上にゴリラのバルガが立ちはだかる。



 その迫力たるや、座名九郎はおろか後ろで控えるアルゴですら揺るがすほどのド迫力。ゴリラ以上にゴリラだ。


 そして幸か不幸か、そのタイミングでまたも座名九郎に襲い来る例の発作。体の奥底から沸き上がってくるその高まりは、彼をして未来の子孫に確実に受け継がれるむき出しの「暴力の衝動」であった!

 その秘められし能力の発動はバルガを波動だけで吹き飛ばす。そしていつかどこかで(200年後の未来で)見た人物が今ここに再誕する!!!





 前作でザナーク・アバロニク(CV:小西克幸)が見せた最強のシュート「グレートマックスなオレ」が今ここに再誕! めちゃくちゃかっこ良くて好きな技なんだけど、あれか、この技はクララジェーン無しでも撃てるのか?


 前作最強のシュートである。アルゴの必殺キーパー技「リバウンドレイヤー」ごときで止められるわけがない。座名九郎のシュートは豪快に、ワイルドにゴールネットを揺らし、アースイレブンが同点に追いつくゴールとなる。


天馬「あ、あの技って……!?」

 他のメンバーが無邪気に喜ぶ中、天馬はどこか見た座名九郎の技にデジャヴを感じて微妙な表情。やっぱり天馬たちは前作の記憶を失っているのかなぁ? でも記憶を消去されても忘れられないインパクトが「グレートマックスなオレ」だったとか?



 VIP席で試合を見守るカトラと、その傍らに控えるポトムリ(CV:三木眞一郎)は、彼らのこの戦いがライフエナジーの発生に寄与していることを知っている。この戦いがそのまま銀河系の希望であるということを。



 失点を喫したファラム・ディーテのキックオフで試合は再開される。バラン兄弟の突破からまたも剣城にボールが渡る。そこに絡んでいく天馬。この2人のライバル関係はまだ終わらない。そう、おそらくこの試合が終わった後でも。

 お互いを最高のライバルと認め合う両者は激しいボールの奪い合いが普段の会話よりもずっと濃密に意思の疎通になっていることを感じていた。楽しくて仕方がないとばかりに笑いながら、それでいて激しいプレーの応酬で。


 両キャプテンのその気概に呼応して、他の選手同士も激しく、熱く、勝利に向けてぶつかり合う。

 神童から天馬へパスが通る。そこに向かうのはこれまでも高い障壁であったヒラリちゃん。中の人的に言及するけど、彼女蘭丸よりもディフェンス能力高いんじゃね?

 その高いディフェンス能力でヒラリは天馬からボールを奪おうとするが、天馬は何とかこらえてボールをキープする。そこにバルガが襲いかかる。

 横に流れてバルガのマークを外そうとした天馬に、剣城が横からスライディングで挑みかかる。一流選手の三段構えの守備網には、さすがの天馬もボールをキープし続けることは不可能だ。チャンスの芽は摘まれる。


黒岩「時が来たな……」


 膠着(こうちゃく)する展開を見て、アースイレブンを潰せという指令を発してからじっと沈黙していた黒岩が曰(いわ)くありげにそうつぶやく。そして手を挙げ、選手の交代を告げる。ベンチに唯一存在する12番、サルファー・バーグ(CV:不明)が立ち上がるのを制して、黒岩は誰もが予測し得なかった驚くべき奇策を打つ。



 ピッチに向かう選手の足音。間違いなく黒岩が送り込んだファラム・ディーテの選手のようだ。その選手の姿を見た者は、天馬や神童だけでなく剣城までもが絶句する。それは……黒岩自身だった!!



 監督、いい年して何を!?


 ネオルを下げ、自身がフィールドに立つという信じられない奇策を取った黒岩。果たして選手登録とかしてたのか?


神童「黒岩監督、どこまで暴走するんだ!?」


 この神童の心の叫びは、おそらくほとんどの視聴者の意見を代弁していたはずだ。



 背番号96(笑)。「クロ」から来てるんだろうなぁ。黒岩さん、意外とお茶目というかシャレっ気があるというか。しかし天馬と剣城のライバル関係さえ霞(かす)んでしまうものすごい展開だな。




 次回に続く。



  エンディング




 まさに今回のサブタイトルそのままの天馬と剣城の戦いだったわけだが、最後の方の座名九郎の「グレートマックスなオレ」と黒岩のまさかのユニフォーム姿にドッキリ展開のせいで2人のライバル関係が霞む霞む。

 想定外の展開こそイナズマシリーズの醍醐味だけど、これはひょっとしてギャグでやっているのではないかという気もしてくる。テレビ放映も終わるし、好き勝手やってやれ的な(笑)。



 まぁめちゃくちゃな展開がどう立て直されていくのか、そして真の敵、オズロックとの戦いはどうなるのかなど残された話数も限られてきているだけに気になっている。



 次回は黒岩さん大活躍の様子。「ファイアトルネード」だよねこれ? 他にも帝国学園名物の皇帝ペンギンが飛び交うなど見どころがすごい。旧キャラが戦うシーンでは必殺技も懐かしのものになるのが良いよね。



 あと数話、きっと楽しんでいただけるような感想を書きたいと思っています。ぜひご愛顧くださいませ。できる限り早く次の感想も書きたいと思いますが、この作業が終わると私の中のイナズマイレブンも終わってしまいそうでちょっと悲しい気もします。



  次回「翔ろ!俺のソウル!!」に続く。



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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第37話「決戦!ファラム・ディーテ!!」の感想 【必殺技の応酬は見ていて楽しい!】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第37話「決戦!ファラム・ディーテ!!」を観ての感想を書く。ついに始まった決勝戦。最大の敵とはかつての味方に対する内なる自身の甘えなのかもしれない……。克服とはこの場合、克己ということになると言えそうだ。何を言っているかわからないと思うが、あえて曖昧(あいまい)に書いているので早く本文を読もう。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第36話「最凶!イクサルフリート誕生!!」の感想 【親友が敵に回るトラウマ再び】
 をご覧ください。

  • それ以外の感想は、

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 松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は、星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の決勝戦の舞台【ファラム・オービアス】に降り立つ。


 だがかねてより謎の多かった監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)から三行半(みくだりはん)を突きつけられ、エースストライカーの剣城京介(CV:大原崇)の不在と合わせ、アースイレブンには不安材料が山積(さんせき)する。

 大事な一戦を前に辛い立場に追い込まれたアースイレブンだったが、彼らを導いて来た惑星キエルの王女、カトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)が生きた姿で現れる。ブラックホールに飲まれて命を失ったと思われていた彼女の登場は天馬たちに勇気を与え、大いに士気を高める。



 そしてフィールドに向かう天馬の前に、心配していた剣城の後ろ姿があった。涙を浮かべて友との再会を喜ぶ天馬に対し、剣城はマントを脱いでその身を包むユニフォームを披露する。それは何と、敵であるファラム・オービアス代表【ファラム・ディーテ】のそれであった!




 キャプテンマークを付けた剣城は敵対するチームを率いてアースイレブンのキャプテンである天馬に対峙するという気概を見せるかのように微笑む。


 そこから導き出される結論、それは剣城が自分たちを裏切ったという、およそ考えたくない仮説であった。九坂隆二(CV:岡林史泰)や井吹宗正(CV:鈴木達央)はそう判断するが、野咲さくら(CV:遠藤綾)はまだ信じられない様子で悲観の言葉を口にする。

 そんな中、何度もこういう人間の裏切りを見て来た瞬木隼人(CV:石川界人)は有利な側に付こうとしたと剣城の行為を決め付ける。彼らより剣城とは長い付き合いの西園信助(CV:戸松遥)がそれを咎(とが)めるが、瞬木の次の言葉に言葉を失う。


瞬木「現実を見ろよ!!」


 その言葉は誰よりもこの事態を信じたくない天馬の胸にも深く突き刺さるものであったことは想像に難(かた)くない。彼は言葉にならない疑問の言葉を胸中で吐き出す。


天馬『剣城……どうして!?』

 友の裏切り……それは前作『イナクロ』でフェイ・ルーン(CV:木村亜希子)が自身を裏切り、敵チームのキャプテンとして姿を現した時と同じ光景に思えたかもしれない。



   オープニング




 勝戦の舞台、観客席にはこれまでアースイレブンと死闘を繰り広げてきたライバルチームの面々の姿も見える。後列の猫耳ーズはポワイ・ピチョリ(CV:折笠富美子)率いる惑星サザナーラの選手たち、前列の鳥人間はアルベガ・ゴードン(CV:高口公介)率いる惑星ガードンの選手たち。



 さらにこちら後列は故人であるバンダ・コローギュ(CV:金野潤)が強い印象を残した昆虫種族の惑星ラトニークの選手たち。キャプテンはクワガタのスタッグ・クワッタ(CV:津田健次郎)。前列はアースイレブンが宇宙で最初に激突した惑星サンドリアスの選手たち。率いたのは中央のカゼルマ・ウォーグ(CV:河西健吾)。ちなみに右端のジバニャン(CV:小桜エツ子)はサンドリアスの選手ではないぞ。



 かつて好勝負を繰り広げたライバルたちが見守る中、フィールドに臨む天馬の表情は晴れない。剣城が敵に回ってしまったという現実がどうしても納得行かなかったのだ。

 その視線は自然と剣城を追う。剣城はファラム・ディーテのベンチ前でチームの中心人物として威風堂々と振る舞い、ファラム・オービアス人の選手たちを率いていた。

 剣城が指示を出す相手の中にかつて星々で助っ人に現れていた紫天王たちがいることを見て、彼らがファラム・オービアス人だったということに気付く市川座名九郎(CV:小西克幸)。女性のヒラリ・フレイル(CV:小林ゆう)はともかく男たちは頭に特徴的なツノを生やしているという共通点を持っているから特定の種族だということぐらいは気付いていたと思うんだけどね。



 この試合はファラム・オービアスの女王であるララヤ・オビエス(CV:高垣彩陽)とキエルの王女であるカトラも見つめる、いわゆる御前試合(ごぜんじあい)だ。

 それだけこの戦いの重要性の高さを証明するものであるが、ララヤを敬愛するファラム・オービアス人にとってはより勝利への意思が表出されるものと思われる。自国の国王が見てくれているという試合に発奮しない者などいないはずだからだ。そういう意味ではホームであるファラム・ディーテの方が有利な状況だ。


 ただカトラの隣に立つポトムリ(CV:三木眞一郎)の姿はアースイレブンに大きな勇気を与える。ニセ剣城(CV:大原崇)に連れ去られて以来、その動向が心配されていた存在の彼もその無事が確認できたからだ。彼の無事はイコール彼に身体を貸している水川みのり(CV:高垣彩陽)の無事の証明でもある。森村好葉(CV:悠木碧)と鉄角真(CV:泰勇気)はポトムリの無事を認め、笑顔を浮かべる。



 紫天王たちに指示を与える剣城の姿はどう見ても敵チームの支柱だ。天馬は何度も繰り返してきたであろう自問をまたも繰り返すしか無かった。


天馬「(剣城)どうしてなんだ!?」



 チームメイトたちはそのあまりにも悲しい天馬の心情を慮(おもんぱか)る。真名部陣一郎(CV:野島裕史)は剣城が洗脳され、誰かに操られているのではないかと仮説を立てる。頭脳派の皆帆和人(CV:代永翼)の推理もそれと同じ結論に至っていた。カシコ2人組の意向を受け、九坂もそれに違いないと乗っかる図。


 どうであれこの現状を受け入れなければならないと神童拓人(CV:斎賀みつき)は努めて冷徹に語る。チームでもっとも冷静で監督不在の現在、神童のこの見立てと態度はチームを落ち着かせる重要なファクターとなる。

 神童自身も雷門中時代からの戦友であり後輩である剣城の翻意(ほんい)は内心ショックであるに違いない。それを微塵(みじん)も見せずにチームをまとめる才が彼を雷門キャプテンでいさせ続けた所以(ゆえん)であろう。


神童「今は試合のことだけを考えるんだ」
井吹「ああ、やるしかないだろう!!」



 直情径行(ちょくじょうけいこう)な井吹はこういう時には頼りになる。井吹にとって剣城はキーパー練習に一番多い時間、付き合ってくれた恩人だ。だが目の前の敵として立ちはだかるならば恩人であろうと乗り越える。それが井吹のスピリッツである。


 剣城が敵として立ちはだかることに戸惑っていた他のメンバーもこれで前向きになる。さくらや座名九郎が賛同する中、ただひとり吹っ切れない人物が残された。



 落ち込む天馬くん。彼にはおためごかしは通用しない。実際にぶつかって剣城の本心を確かめるのが一番の解決策なのかもしれない。相当に荒療治(あらりょうじ)だけどフェイの時もそうだったし。



 VIP席、ララヤはこの戦いが激しいものとなるであろうことを側近のミネル・エイバ(CV:佐藤健輔)に問いかける。ミネルの肯定の返答を聞きながら、ララヤは戦前に剣城が語っていた言葉を思い返していた。

 この戦いをしっかりと見ることがファラム・オービアスの女王としての責務であると言い聞かせ、剣城は戦場へ向かった。

 しかしララヤはそれをただ見ていることしか出来ない自身の無力さを儚(はかな)んでいた。剣城に重責を任せ、見ているだけで良いのかと葛藤(かっとう)するララヤを、黒ピクシー(CV:悠木碧)に身をやつした彼女の父、先代王アクロウス・オビエス(CV:花田光)がじっと見つめていた。

 ララヤが今こそ本当の女王になるべき時だと確信するアクロウスだったが、その彼女に必要欠かざる人物が自分ではないということも確信していた。その人物、それはアクロウスとよく似た地球からの使徒であることをまるで暗示するように、剣城が再度この場を訪れる。



 こうして見ると本当にそっくりやな。同じポーズすんな。


 剣城はララヤにこの試合は絶対に勝たなければならないことを告げ、同意を求める。ララヤがうなづいたことを認め、剣城は言葉を続ける。


剣城「ではお前はファラム・オービアスの女王としてその役目を果たせ!」
ララヤ「女王としての……役目!?」
剣城「皆に勇気を与え、慈悲を与え、未来を与える……それがファラム・オービアス女王、ララヤの役目だ!」


 ララヤは親とはぐれ泣いていた子供の顔を思い出す。その子供の泣き顔を笑顔に変えたのは母親の慈悲だった。そしてその母親をも包み込み包括(ほうかつ)したファラム・オービアスの全国民が笑顔でいられる世情、それは王たる者の務めであり義務でもある。

 ララヤの預かり知らぬところで行われていたルーザ・ドノルゼン(CV:美名)の圧政によりどん底の生活に喘(あえ)ぎ苦しみ悲しむ国民の姿……それは絶対に繰り返されてはならない。ルーザの暴政をララヤが知らなかったことそれ自体が為政者として失格の烙印(らくいん)を捺(お)されるべき失態なのだった。



ララヤ「妾の望みは……妾のすべきことは……誰もが笑っていられる世の中を作ることじゃ!! ……この星の女王として!!」


 女王として自信を失いかけていたララヤのその気概を確かめて、剣城は自分の仕事に専念することが出来るようになる。



 試合に先立ち、ララヤは設けられた演説台に向かう。姿を見せただけでファラム・オービアスの国民から熱狂的に迎えられるララヤ。

 演説はファラム・ディーテの選手たちへのエールで切って落とされる。この星の全生命を守るため、最後の砦として戦うことを望むララヤ。

 そしてこの国を守りたい意思を示し、より良き国を作りたいと述べる。そのためにはこの戦いに勝利し、存続を確保しなければならないと強い口調で語る。


ララヤ「皆の者、妾は期待しておるぞ! 妾の期待に応えよ! 必ず勝利し、この国の未来を守るのじゃ!!」



 弱々しい子供だった姿から脱皮し、ノブレス・オブリージュをわきまえた真の女王の威厳がそこにはあった。その姿にはこれまでララヤをお子ちゃまだと侮(あなど)っていたヒラリ・フレイル(CV:小林ゆう)やロダン・ガスグス(CV:藤村歩)、バルガ・ザックス(CV:岩崎了)たちも一目置かざるを得ない。彼らはこれまではどちらかというとルーザの意向に従っていたファラム・オービアス侵略肯定派だったわけだけど、そんな彼らも今のララヤには逆らい難い威厳があった。剣城がメンバー入りする前はおそらく彼がキャプテンだったのだろう、アルゴ・バージェス(CV:佐藤健輔)の音頭(おんど)のもと、一斉に膝まづいて女王への忠誠を誓う。


 ララヤの威厳を最終的に確定させるかのように最後に剣城が膝まづき、ファラム・ディーテの意思は女王のために戦う騎士(ナイト)の精神で統一される。

 だが剣城がファラム・オービアス女王に忠誠を誓ったということは、彼が完全に敵に回ったという見立てが成り立つ。その姿は天馬のみならず、神童でさえ動揺する。



 女王としての存在感を遺憾なく発揮したララヤの後方では、愛娘の成長を見届けたアクロウスが静かに微笑していた。



 立ち上がった剣城は刺すような視線を天馬に向ける。それは事実上の宣戦布告であった。もはや剣城は完全にファラム・オービアスサイドの人間だとみなして間違いない。

 そして重要なのはララヤの演説がチームのみならずこの場に在する観客の気持ちも一体化させたことだ。その見事な演説を、皆帆は敵ながら認めざるを得ない。ものすごいアウェイ感を感じる真名部に対し、鉄角はそれが逆に闘志をみなぎらせるエネルギーになると強気だ。

 その鉄角に同意を求められ、天馬は思わず口ごもる。剣城が明確に敵に回った今、彼の心の拠(よ)り所は宇宙を守るためという大義と、その大義をもたらしてくれたカトラという存在だ。

 思わずもう一つのVIP席に座を占めるカトラに目線を向けた天馬。カトラはこの戦いで全力を尽くすことが宇宙を救う最後の条件となると示唆する。それはこの戦いで発生したライフエナジーが、コズミックプラズマ光子砲のエネルギーとなることを知っている立場からの願望だった。


 カトラとの約束、それが今の天馬の原動力となる。全力をかけて戦う、そのためなら命さえも惜しくないと誓った天馬の思いがフツフツと心中に蘇(よみがえ)る。そのためには親友と敵対していようと全力を出さねばならない……。



 だが過酷な運命というものはさらに天馬を苦境の淵(ふち)に追いやることとなる。信助の悲鳴を聞いてそちらを見た天馬は、信じられないものをまたも見てしまうことになる。

 チームを去った黒岩監督が、あろうことかファラム・ディーテのベンチに向かって歩いて行くのだ!!

 黒岩は剣城とアイコンタクトを交わす。彼の語っていた「私を必要としている者たちのところへ行く」とはまさにこれを表していたのだろう。


皆帆「黒岩監督も操られているってこと?」



 皆帆のその言葉を否定したのは剣城だった。自身も黒岩も操られているわけではなく、自らの意思でファラム・オービアスに肩入れすることを決めたと語る。


剣城「天馬、地球は負ける!」


 驚く天馬に追い打ちをかけるように断言する剣城。ファラム・オービアスこそが宇宙に存在し続けるのだと言う。本気で自分たちと戦うつもりなのかを問う天馬に対し、剣城は地球を打倒することが宇宙にとって最善だと信じられないことを口走る。

 なおも仲間であることを強調する天馬に、決別の言葉を向けて剣城は背を向ける。ここまで頑(かたく)なな剣城は初対面の時以来だ。私だったら兄の剣城優一(CV:前野智昭)の名前を出して説得したけどな。





 恒例の試合開始直前の両チームの布陣。ファラム・ディーテは3−3−4という超攻撃的布陣。紫天王にFWが多かった上、さらに剣城が加わったからしょうがないのだろうけど迫力は十分。剣城、ロダン、リュゲル・バラン(CV:ランズベリー・アーサー)とガンダレス・バラン(CV:興津和幸)のバラン兄弟がFW。MFはヒラリと2人の新顔、5番のセレン・メルヴィル(CV:高垣彩陽、7番のネオル・ロッツ(CV:戸松遥というお嬢様トリオ(ピンク字は女性)。DFはバルガと2人の新顔、2番のキセノ・ヴォルフ(CV:不明)、4番のラドンモーム(CV:泰勇気)。泰勇気さんはやっぱりDF声。キーパーは前出のアルゴだ。ちなみにファラム・オービアスの選手たちは元素記号から名称が取られている。

 一方のアースイレブン。フォーメーションはいつも通りの4−3−3の布陣。ニセ剣城がいなくなった穴は座名九郎が埋める。というか座名九郎レギュラーの方が戦力アップ間違いないけどね。ソウル使えるし。天馬以外は全員がソウルを使用できる状態。ベンチは控えGKの信助。



 最前列の剣城はスタートから全力で行くよう指示を出す。この試合が祖国のためであると同時に一度敗れたアースイレブンへの雪辱戦であることを強調するバルガは言われなくとも全力で掛かるつもりだったと笑う。その考えはヒラリやロダンも持ち合わせていた。そしてどちらかというとファラム・オービアスよりも雪辱の方に比重が偏(かたよ)った兄弟の姿が……。



 真名部と皆帆を名指しして、リュゲルとガンダレスの兄弟が何かを披露するという。訓練の成果なのだろうか「あそこにUFO」と指さされても受け流す芸当を見せ、ご満悦なバラン兄弟。これにはさすがのまなみなも呆れ顔だ。


 必殺技「あそこにUFO」にはもう引っかからないと得意げなバラン兄弟だったが、その技は皆帆しか使ってないはずなんだけど……なぜ真名部も復讐対象にしたんだろう?


皆帆「訓練なんかしなくても普通は引っかからないものだけどね……」


 殺伐(さつばつ)とした舞台でもやはりバラン兄弟がいるとギャグっぽく和んでしまう。



 ただ運命の瞬間は近づいていた。剣城と戦い、勝利することで宇宙を救う……靴ひもを締めながら使命の重さを感じ、その精神をも締め直そうとする天馬。

 そんな天馬に神童はあえて忠言する。監督不在の今、キャプテンである天馬がみんなを引っ張って行かなければならないということを……。

 さらなる重圧に顔を曇らせる天馬を、ベンチから全力で応援するのは信助とマネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)だった。その応援を背に天馬は剣城を敵だと思い込もうとする。今この試合中だけは心を殺して目の前に立ちはだかるものをすべて敵とみなさなければならない。

 天馬はキャプテンマークを掴み、仲間を引っ張る役割を実行する。



天馬「行こう! みんな!!」
全員「オウッ!!!」


 天馬の苦悩を知ってか知らずか、それを見つめる剣城の表情に動揺は一切見受けられない。

 そして今、宇宙の運命を決する1時間の開始を告げるホイッスルが高らかに鳴り渡る!



 アースイレブンボールのキックオフで試合開始。瞬木のドリブルを電光石火の勢いで潰すのは剣城だった。



 瞬木ェ……ブロック技も持っていない剣城にあっさり止められるとは情けない。


 逆襲に転ずる剣城はロダンにパス。ロダンは剣城の指示通り、天馬を簡単に抜き去ってしまう。攻めるファラム・ディーテはロダンからヒラリにパスが渡る。阻止に向かうのはさくらだ。



 ヒラリは相手が女の子だからといって手加減はしない。サザナーラで九坂のチンコ切った(ウソ)必殺技「ジャックナイフ」でさくらを打ち倒す。


 こぼれた球にすかさず詰めたのはガンダレスだった。同じく詰めていた真名部にボールを与えず、彼のもっとも信頼する兄にパスを送る。だがそのパスは鉄角の必死のディフェンスによってカットされる。両チームとも決勝戦にふさわしい素晴らしい攻防を見せる。

 鉄角は前線の天馬にパスを送る。カウンターのチャンスなのだが天馬は相変わらず試合に集中できない。セレンに指示を出す剣城の声を聞いただけで集中力を欠き、そのセレンにボールを奪われてしまう。

 セレンからパスを受けた剣城の前に回り込むのは、その天馬だった。行かせないと息巻いた天馬だったが、個人技であっさりと抜かれてしまう。やはり現在の本気度で天馬は剣城の足元にも及んではいない。相手はあの剣城なのだ。本気で倒してやろうという思いがなければ止められるものではないだろう。

 ゴール前に迫る剣城は先に駆け込んでいたヒラリ、ロダンにパスを出す。空中でそれを受けたヒラリはロダンにラストを託す。シュート阻止のため下から飛び上がった井吹はシュートではなくキーパー潰しを目論むロダンのシュートを受け、着地したものの足首を痛めてしまう。

 

 足首に走った鋭い痛みに顔をしかめる井吹。ていうかロダンはこの期(ご)に及んでもこういう卑怯なことをする役回りなんだな。ララヤに忠誠を誓っていたのに。


 ガッチリをボールを掴んで痩せ我慢(やせがまん)の笑みを浮かべる井吹だったが、その足がひどい状態であることを神童と信助は気付いた。

 駆け寄って来た神童に対して強気の姿勢を崩さない井吹。だが同じポジションを務める信助にはその怪我がかなりの深手であることが想像できた。



 井吹の変調が流れ全体に影響を与えたのだろうか、ファラム・ディーテが圧倒的にボールを支配し、アースイレブンに攻め手を与えない展開となる。

 ネオルの突進を止めようとする天馬だったが、ネオルに併走する剣城の動きに気を取られ、ネオル単体に抜き去られてしまう。



 そのカバーに走る皆帆と好葉。2人がかりのスライディングでボールをサイドラインに押し出し、何とかピンチを脱する。

 剣城を意識するあまり、仲間にまで迷惑を掛けてしまっている状況を天馬はキャプテンとして申し訳なく思う。剣城という存在の影に惑(まど)わされる今の天馬はいつもの実力の半分も出せてはいないだろう。

 悩める天馬くんに指標を示したのは、結構意外なことにさくらだった。さくらは以前、家族関係に苦しんでいた時に天馬から心からサッカーを楽しんでいないと指摘されたことを覚えていた。

 そのさくらにとって、今の天馬はまさにサッカーを心から楽しめていない状況に映る。鉄角や真名部はこんな時に「楽しくサッカー」などと言っている場合かと突っ込むが、天馬の心にはさくらの言葉がどう響いたのであろうか?



 ファラム・ディーテのスローインで試合再開。リュゲルのスローインを素早く察してカットしたのは天馬だった。さくらの言葉が彼を目覚めさせたのだろうか。


神童「ナイスカットだ天馬!!」


 天馬の心の動きをすべて理解しているかのような達観した視線で天馬のガッツを称える神童。天馬は「サッカーを楽しむ」という原点を見つめ直し、その彼岸(ひがん)には剣城のことも宇宙の平和のことも無い、ただサッカーと自身の関係のみがあるということを思い起こす。

 勝負にこだわるあまり、先が見えなくなるという状況を払拭(ふっしょく)すること、それが「サッカーを楽しむ」という原点回帰なのだ。

 だがそこまで考えが至ったところで周囲を囲まれ、ボールを奪われてしまう。奪われたボールは剣城のもとへ。だがそれはある意味、運命的予定調和だったのかもしれない。サッカーを苦しいものと錯覚させたのは、(現時点では)剣城の裏切りであったからだ!



 疾風のように駆けた天馬は剣城の前に回る。だがそこでさらなる高みとして、剣城は立ちはだかる。


剣城「天馬、お前の力はそんなものか!?」
天馬「剣城!!」
剣城「俺を親友だとでも思っていたのか!? 親友に裏切られただけでサッカーへの思いは消えて無くなるのか!?」


 叱責するようにまくし立てた剣城は天馬を抜き去る。追いすがる天馬に対し、自分はサッカーをやっている時こそが一番自分らしくなれる時だとしてクヨクヨ悩む天馬と自身を差別化してみせる。


剣城「だから俺は戦うんだ!!」



 剣城は天馬を振り切るが、雷門サッカーを語る上で役者はもう一人いることを忘れてはならない。神童が必死の戻りで剣城からボールを奪う。剣城と天馬という1年生同士の因縁とはまた別の次元で神童と剣城も因縁を備えていた。



 神童にカットされたボールはまたもサイドラインを割る。立ち上がった神童に、天馬のつぶやきが聞こえる。


天馬「剣城は何も変わってない……!!」


 見たところファラム・ディーテの選手たちに細かい指示を出す剣城は身も心も地球を裏切ったようにしか見えない。だが天馬は今の接触で剣城のこの戦いに賭ける真意を垣間見た。剣城には何か理由があってこの戦いに臨んでいる、と。

 そうと知れば、天馬に悩む理由も無くなる。天馬は達観したような笑顔で神童に提案する。



天馬「神童さん、楽しみましょう! サッカーを!!」


 みんなにも同様に声をかけ、戦う相手は他ならぬ最強の敵である剣城だと述べ、その状況を楽しもうと熱く語る。この状況、宇宙の運命という大事をあえて考慮しなければ実に面白い状況であることは確かだ。

 神童はそれでも宇宙の運命がかかっているという前提を重視するが、天馬は剣城との会話から大事なことを悟っていた。


天馬「この戦いは、この出会いは、この瞬間だけなんです!! だからこそ思いと思いをぶつけ合って最高の試合にするんですよ!!」
天馬「それが、俺たちの大好きなサッカー!! ですよね!?」


 そう、このシチュエーションで鍛え上げられた素人集団たるアースイレブンが本気の剣城が率いる宇宙最強の惑星代表チームと戦うことが出来るのだ。それは願ってももう2度と訪れることのない機会である。今この状況を楽しむ、それはこれまでのアースイレブンの戦いで培(つちか)われたサッカーへの希求心(ききゅうしん)そのものであった。



 天馬は最後の戦いを目一杯楽しみ、全力でサッカーすることを一同に命じる。それが天馬のキャプテンシー、そしてそれこそがアースイレブンをここまで連れて来た力の源泉でもあるのだ。メンバーはそれを頭ではなく感覚で理解できるからこそ、笑顔で賛同する!


 ただひとり冷静に天馬の意見に論駁(ろんばく)した神童は、いつの間にか自分のキャプテンシーを大きく超えて成長してしまった後輩の後ろ姿を嬉しそうに見つめるのだった。



神童「大きくなったな……天馬(苦笑)」



 すべてを吹っ切った天馬がとてつもなく大きな存在となったことを実感したのは味方サイドの神童だけではなかった。剣城は今こそ最強の敵との雌雄を決する時だと自覚を持ち、メンバーに檄を飛ばす。



剣城「この試合、必ず勝利する! 宇宙最強の星、ファラム・オービアスの名にかけて!!」
一同「オウッ!!!」


 ファラム・ディーテの面々も、地球人の剣城に率いられているという不満など微塵も感じさせない気概で、総力を挙げて勝利することを誓う。



 試合再開。ドリブルで攻め上がる天馬の前にキセノが立ちはだかる。だが今の天馬はこれまでの彼ではない。必殺技「風穴ドライブ」で豪快にキセノを抜き去る。だがさらに向かって来るラドンにボールを奪われる。



 受けたネオルに向かうのは九坂だ。九坂はごっついから敵の新披露の必殺技の実験台によく使われる印象なのだが、やっぱりここでもネオルの必殺技「ホログラムロック」の餌食となる。



 まんまと九坂を抜き去ったネオルに対し、今度は鉄角が必殺技「フットワークドロウ」で奪い返す。ソウルこそまだ飛び出していないが必殺技の応酬がめっぽう楽しい!!


 鉄角から座名九郎へロングパスが送られる。しかしそれはロダンがヘディングでカット。前進するロダンを必殺技「アインザッツ」で迎撃するのは神童だ。



 その神童に凶暴な槌、必殺技「ロックハンマー」を振り下ろすバルガ。繊細な神童くんがこれを喰らうと死にそうだからやめれ。まだまだ続く必殺技合戦。


 こぼれ球を持って上がって行くさくらはこのチャンスをものにするため、ついにソウルの力を発動させる。



 カモシカのソウルを発動させたさくらは、キセノを崖下に突き落とすという非情極まりないやり方で突破する。この崖は心象風景なのでキセノファンは安心して欲しい(キセノのファンなんているのかどうかはともかく)


 そのプレーを見て、現時点では支配者であり傍観者であるビットウェイ・オズロック(CV:津田健次郎)は邪悪な笑みを浮かべる。そのプレーがライフエナジーを生成し、彼の野望の根源をなすコズミックプラズマ光子砲のエネルギーの一部が充填(じゅうてん)されたからだ。


 前進するさくらの前に立ったバルガの身体が輝く。これは必殺技の応酬からソウルパワーの応酬になったということだろうか!?




 バルガは彼の図体にふさわしいトリケラトプス型のソウル「ガンドラン」に身を包み、さくらを吹っ飛ばす。最後のポーズは歯をキラリと輝かせるところまで鉄角のバッファローのソウルと同じ形だったりする。サンドリアス編では見せる機会の無かったソウルであり、やっぱり紫天王は全員がソウルを持っていたようだ。



 そのプレーはまたもコズミックプラズマ光子砲のエネルギーを補充する。フィールド上の素晴らしいプレーが刻一刻とオズロックの野望に手を貸す形になるというのは何とも皮肉な状況だ。ただカトラも語っていたように、それがブラックホールを消滅させる唯一の手段なのだからやむを得ない必要悪とも言えるのだが。



 バルガはヒラリにパスを送る。ヒラリも紫天王として初のソウル発動の機会を得る。



 地球のクジャクのような尾羽根にワイヴァーンの身体を持ったヒラリのソウル「フェニキアス」。元ネタはフェニックス(不死鳥)か? その咆哮(ほうこう)と輝きをもって真名部をおびえ殺す(ウソ)


 真名部を抜いたヒラリから剣城へとパスが渡る。大事な先制点を取るため、剣城はシュート体勢に入る。井吹はもちろん絶対阻止の構えだ。実戦で初めて向かい合うストライカーとキーパー。

 左上コーナーを狙ったシュートに飛びついた井吹だが、その瞬間痛めた足に電撃が走る。パンチングで何とかゴールを守った井吹だが、跳ね返りに飛びついた剣城は逆を突いて右下にさらにシュートを撃ち込む。

 対角線という一番遠い位置に撃たれたシュートに対し、井吹はゴールポストを蹴ってその反動で喰らいつく。井吹渾身の再びのパンチングでこれも九死に一生を得る。

 しかしここで無理が祟(たた)る。踏ん張った井吹の足首がついに耐え難いシグナルを送り、井吹の表情が苦痛に歪(ゆが)む。

 この状態でも剣城は容赦しない。まるでこれまでの二度のシュートは井吹に無理をさせてこの最後のシュートに対して無抵抗にさせるためだったと思えるほど理知的に、かつ冷静にとどめを刺しにかかる。



 これはもうどうしようもない。3段階に渡る剣城のシュートについにゴールを奪われたアースイレブン。虎の子の先制点はファラム・ディーテが獲得する。


 容赦ない剣城のプレーに鉄角や九坂は呆れ半分で見ていた。だが以前は素人だった彼らに対し全力を尽くしてくれている剣城のプレーは彼らを認めた、最大限のもてなしとも言えた。

 ゴールを割ってしまった井吹もいつものように強気に語るが、心配される足の故障については隠し続ける腹づもりのようだ。

 失点しても落ち込まないみんなの様子は、天馬を勇気づけるものであった。試合はまだこれからだ。逆転に次ぐ逆転で勝ち上がってきたのがアースイレブンなのだ!



 再びアースイレブンのキックオフで試合再開。瞬木は今度はバラン兄弟にボールを奪われる。瞬木は剣城の敵対行為に影響を受けていなかったはずなのに、今のところ一番ダメ戦力だな。


 リュゲルからロングパス一本でゴール前のロダンにパスが送られる。ロダンは待ってましたの必殺シュート「カザンライ」を撃つ。



 井吹は痛めた足でこのシュートに対処できるのか!? だが井吹は追い詰められたこの場面で驚きの新必殺技「ゲキリンダンク」を披露する。



 ロダンのシュートを見事にキャッチした井吹。この土壇場で新たな必殺技を編み出したその頑張りには日頃はあまり井吹を認めようとしない神童も相好(そうごう)を崩す。


 信助の賛辞をも得て井吹は上機嫌となるが、ふと見ると近場にパスを出すコースが無い。前線からマンツーマンで敵選手が張り付き、どこにもボールを送れない状態だったのだ。



 リュゲルは必死で「あそこにUFO」を出して好葉の気を逸らそうとしているが、それが通用すると思っているリュゲルの態度に本気で引いている好葉ちゃん。とりあえず井吹はここにパスを送れば大丈夫なんじゃね?


 井吹はニヤリと笑うと、サッカーボールをバウンドさせ始めた。またもサッカーボールをバスケットボールのように扱う彼独特の行為だ。

 イナズマジャパンに加入した当時、井吹はこれをやって素人を丸出しにした過去があった。鉄角は悪いクセが出たとばかりに怒るが、驚いたことに神童がそのプレーを肯定する。


 その馬鹿げた動きに神童をマークしていたガンダレスが油断する。その隙を井吹は見逃さない。足の痛みが襲いかかるが、井吹は歯を食いしばって遠投体勢に入る。同時にその意図を察した神童が走り出す。



 深夜バスケアニメ「井吹のバスケ」がいきなり始まったかのような絵ヅラだが、ダンクシュートを決める勢いで飛び上がった井吹はその全体重をボールに乗せ、神童の走り込む軌道にめがけてボールを投げ込む。


 胸トラップでボールを落とした神童はそのまま瞬木にボールを出す。これまで良いところが無い瞬木はここで決めなければという気持ちを必殺シュート「パルクールアタック」にぶつける。



 同点ゴール!! アルゴはごっつい外見なのにやけにあっさりとゴールを許したなぁ。瞬木の初期必殺技なのに止められないというのはちょっと見掛け倒し。


 ようやく活躍できて瞬木も満面の笑顔を見せる。アースイレブン新旧エースストライカー同士がお互いに得点を決めて、これで試合は1−1のイーブンになる。



 天馬と瞬木が喜ぶさまをシニカルな笑顔で見つめる剣城。やはり彼にとっても最強の敵はアースイレブンなのだ。それを実証するかのように次の瞬間、射るような視線で天馬の背中を見つめ、必勝を期する剣城。その激しい視線を感じて向き直った天馬も試合を楽しみつつ絶対に負けられないという思いを表出させる。



 オズロックの野望という外部ファクターを思考の外としても、この戦いはお互いに譲れない戦いであり両者の矜持(きょうじ)をもって考えてみても、もはやなあなあでは済まされない域に達していた。どちらかが敗れどちらかが勝つ、この決着以外にはありえない。果たして勝つのはどちらとなるのであろうか?



 次回に続く。



  エンディング



 剣城が明確に敵に回った今回。おそらくアクロウスの提案でこういう立場に立たざるを得なくなった剣城の芝居なのだろうと思われる。ブラックホール消滅のためにオズロックの野望に協力しなければならないという事実を知っているのはカトラ、ポトムリ、ピクシーズ、そして剣城なのだろうから。

 ただこの試合中は剣城は本気でアースイレブンを、天馬を倒そうとしていることも間違いない。おそらくどちらが勝とうと目指す宇宙の平和という点では結果は同じことになるであろうから、純粋に天馬に勝ちたいという思いで戦っているのではないかと。


 上記したけど私だったら優一さんのこめかみに銃口を押し付けて剣城に再度の裏切りを求めていただろう。そんなことしたら剣城の真の計画どころか感動のストーリー自体がムチャクチャになるけどな。



 次回もこの戦いの続きが描かれるようだ。脇キャラである紫天王たちも活躍の場があって嬉しい。ヒラリやバルガがソウルを発動させるというシーンもあったし。ロダンの根性曲がりなところもここまで徹していれば立派かもしれない。




 次回は座名九郎が何かに目覚めるような描写が……。これって子孫のザナーク・アバロニク(CV:小西克幸)が本当の力を出し切れなかった頃の描写に似ている。座名九郎もさらに成長するということなのだろうか? どうでも良いけど怖い顔やんね。



  次回「天馬VS剣城!」に続く。



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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第36話「最凶!イクサルフリート誕生!!」の感想 【親友が敵に回るトラウマ再び】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第36話「最凶!イクサルフリート誕生!!」を観ての感想を書く。サブタイトルの「イクサルフリート」の意味、そしてそこから連なる物語のラスボスの真意が明らかとなる内容。物語を彩ってきた様々なキャラクターがその正体を現す回と言っても良いかもしれない。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第35話「希望の欠片」の感想 【ニセ剣城の本当の顔が見たい】
 をご覧ください。

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 松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は、星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の決勝戦に進出する。

 同時に惑星キエルの王女、カトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)から託された4つの希望の欠片(かけら)を集めた天馬たちだったが、ビットウェイ・オズロック(CV:津田健次郎)の指示のもと、剣城京介(CV:大原崇)を拉致(らち)し成りすましていたニセ剣城(CV:大原崇)がその本性を現して欠片と水川みのり(CV:高垣彩陽)を奪って逃げ去ってしまう。


 欠片とみのりの身体の中に存在するポトムリ(CV:三木眞一郎)という決め手となり得る存在を失ったまま、アースイレブンは決勝戦の舞台【ファラム・オービアス】に到着する。

 ブラックホールに今にも飲まれそうになっている銀河系最大の惑星を前に、監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)の真意を問いただした神童拓人(CV:斎賀みつき)は驚愕すべき黒岩の野望を知る。


 最終決戦を前に、監督とチームとの連携が取れなくなるという事態は果たしてアースイレブンにどのような影響を与えるのであろうか?



 その科学力も最先端のファラム・オービアス。科学力の粋を結集した移動用の飛行物体に乗り、天馬たちはコーディネーターのイシガシ・ゴーラム(CV:遠藤綾)に導かれ、市街中心部に存在するサッカースタジアムに向かう。


天馬『あそこが、俺たちの最後の戦いの場……!』


 天馬は最後の戦いを前に、メンバーに檄を飛ばして意識の高揚(こうよう)を図る。この戦いは宇宙を救い、そして大事なチームメイトを救うという意味でも負けられない戦いなのだ。



天馬「みんな勝とう! 勝って地球を、宇宙を救おう! そして剣城を助け出すんだ!!」
一同「オウッ!!!」



 しかしその意思統一され高揚した場に懸念される存在、黒岩が声を掛けてくる。



黒岩「今日この限りで私はアースイレブンの監督から退くことにする……」



 その言葉を神童を除く天馬たちは驚愕をもって迎える。この大事な戦いを前に、黒岩は何を考えているのか……!?



   オープニング



 ファラム・オービアスのステーション。【ギャラクシーノーツ】号から小さなトランクひとつ分の荷物を持って立ち去ろうとする黒岩の前に立ちはだかったのは天馬と神童だった。

 言わずもがな、監督を辞めるという黒岩の言葉の意味を確かめるためだ。だが黒岩は天馬のその質問に答えることなく歩を進める。

 たまりかねた天馬が黒岩の名を叫ぶと、黒岩はようやくその口を開いた。


黒岩「お前たちに私はもう必要ない……私は私を必要としている者たちのところへ行くのだ……」


 ここまで来て、黒岩は何を言っているのか? そしてこの期に及んで彼を必要とする者たちとは一体……? しかもここは地球ではない。18万8千光年離れた惑星でどこに向かおうとしているのかを神童は問いただす。

 だが黒岩は不敵な笑みを浮かべてその質問を黙殺する。この星に降り立つ前、黒岩の狂気に触れていた神童は黒岩が狂気の中にあることを言及しつつ、その狂気の住人なればこそ、アースイレブンをこの決勝の舞台まで連れてくることが可能だったのかもしれないと大胆な仮説で黒岩を論評する。



 ギャラクシーノーツ号内のブラックルームで最終調整を図るアースイレブン。だが黒岩という精神的支柱を失ったことはイレブンに大きな動揺を与えていた。こういう逆境に何度も接してきた天馬と神童を除くメンバーはその動きに精彩(せいさい)を欠いていた。

 天馬は落ち着かせようと声をかけるのだが、一言も発しないままチームをひとつにまとめ上げ、見事なまでの指揮能力を発揮してきた黒岩監督という存在の大きさを意識せずにはいられなかった。そして自分たち同様、逆境の中にあっても絶対にブレない強いハートを持った心強い同志、剣城の不在……。

 黒岩と剣城という2人の存在がいかに大きなものであったのかを天馬は改めて思うのだった。しかし天馬はこのチームのキャプテンなのだ。左手に巻いたキャプテンマークを握り締め、天馬はシュートを放つ。


 そのシュートはゴールの枠を叩いて外れてしまう。そう、天馬自身も動揺を隠しきれていないのだ。ため息をついてベンチに腰掛ける天馬にドリンクを差し出すのは神童であった。



 天馬の苦悩を誰よりも知るのは、誰よりも天馬と共に戦い続けてきた神童なのだ。さらにキャプテンの苦悩を知るのはかつて雷門中でキャプテンの立場にあった神童ならではと言えるだろう。


 神童の心遣いに触れ、天馬は心の重荷が少し軽くなるのを感じていた。尊敬する神童からキャプテンとしての頑張りを認められ、嬉しくならないはずはない。


 笑顔でドリンクを受け取る天馬を見つめるのは瞬木隼人(CV:石川界人)であった。雷門中の2人の馴れ合いをまるで皮肉るかのようにシニカルな笑顔を見せる瞬木は何を思うのか……?



 その頃、希望の欠片を手に入れ、ポトムリを監禁したオズロックはポトムリにあることを強要していた。それはブラックホールをも消滅させる能力を持ったコズミックプラズマ光子砲を運用すること、であった。

 オズロックの部下たちが銃口を向ける中、ポトムリは毅然とした口調で惑星キエルの技術がなぜ禁断と呼ばれ封印されてきたのかを説く。

 その技術は人類を滅ぼしてしまうほどに強力なものだったのだ。それでもブラックホールに飲まれようとしている母星のため、封印を解こうとしたのだろうとオズロックは痛いところを突いてくる。



 オズロックは一度は失敗したコズミックプラズマ光子砲の製作を今度こそ成功させる必要があると言う。「宇宙を救うために」という彼の言葉に、ポトムリは懐疑的ではあった。だが宇宙を救うために他の手段が無いことも事実である。ポトムリは決然とコズミックプラズマ光子砲の装置に向き合う。彼にとってそれは惑星キエルを、そして敬愛するカトラ姫を救えなかった過去と向き合うということでもあった。


 ポトムリの操作でコズミックプラズマ光子砲はテスト運行される。砲の中央に浮かんだ光子は今一歩のところでその勢いを失い、消えてしまう。ポトムリは肩を落とす。

 誰が見てもテストは失敗だとわかる。オズロックはコズミックプラズマ光子砲が完成しているのではないのかと問うが、ポトムリは今ファラム・オービアスに迫るブラックホールがキエルを飲み込んだブラックホールの3倍の大きさであることを挙げ、これでは出力が不足している旨(むね)を解説する。

 オズロックは澄ました顔で出力を上げれば良いと語り、ポトムリに銃を向ける。彼が何か隠し事をしているということをオズロックは決め付けたのだ。



 ポトムリは隠し事など無いと反論する。今ここで自分に危害を加えればコズミックプラズマ光子砲の完成形は永遠にオズロックの手には入らないということを知るポトムリの強気の表われだった。

 しかしオズロックはポトムリの真の弱点をも押さえていた。彼が指を鳴らすことが合図だったのだろう。その場に転送されてきた人物の姿を見てポトムリは動揺する。



カトラ「ポトムリ……」
ポトムリ「カトラ様!?」


 そしてオズロックは悠々とそのカトラに銃口を向ける。カトラはオズロックを睨みつけつつ、今なぜ自身がこの場にいるのかを説明する。

 惑星キエルがブラックホールに飲み込まれた際、オズロックは突然カトラの前に現われ、星や国民と運命を共にしようとしていたカトラを連れ出したのだった。

 それは死にゆく女性を助けたいというヒューマニズムなものではなく、このような場面でポトムリに対する抑止力としての駒としてカトラを使うためのものであったことは言うまでもない。事実、救出後のカトラは一貫してオズロックに幽閉されてきたのだから。

 つまり道中で天馬にビジョンを送り続けて来たのはオズロックの目を盗んでの行為だったということだろう。やはりカトラは生きていたのだ。それがカトラの望む形ではなかったにせよ……。


 カトラはオズロックの真の野望についても見当が付いていた。オズロックがコズミックプラズマ光子砲を望むのは、その絶大なる力で宇宙を支配するということだと彼女は喝破(かっぱ)する。オズロックは邪悪な微笑を浮かべ、その指摘が正解であることを事実上示唆する。

 そうと知ってポトムリはなおさらオズロックに協力するわけには行かない。だがポトムリのその決意は意外な方面から覆(くつがえ)される。


カトラ「いいえ、協力して下さい!」


 他ならぬカトラ自身がオズロックに協力せよと懇願したのだ。野望を持つことは事実ながら、それでもブラックホールを消し去り宇宙に平和をもたらすという約定を交わしているということがその理由だった。

 ポトムリはオズロックの宇宙支配を前提にした身勝手な言い草だと意見する。それでも、それでもカトラは宇宙に住む多くの人々の命を救うことを考えなければならないと返す。必要悪だと言わんばかりのその言い分にポトムリは納得行かないが、カトラの強い決意に触れたポトムリは最後は反論の言葉を失う。

 2人のやり取りを聞いていたオズロックは勝ち誇ったように笑う。そしてポトムリにさらなる協力を強(し)いる。ポトムリは自分に出来ることはここまでだと返す。オズロックが疑った「隠し事」というものは本当に存在しないらしい。



 だがそこでもまたカトラがオズロックに協力的に振る舞う。人が持つ魂の力、万物が存在し続けようとするその力を増幅させて使えばコズミックプラズマ光子砲のエネルギーになり得ると彼女は語る。


 人の生きたいと思う魂をエナジーとして出力に補充するという発想は科学者であるポトムリには思いつかないものであったろう。そのライフエナジーがコズミックプラズマと同じプラスのエナジーでありマイナスのエナジーであるブラックホールにはきっと効果があるとカトラは確信していた。



 それらのやり取りをオズロックに気づかれずに見つめていた2つの小さな影。それはポトムリに着いて来ていたピクシー(CV:北原沙弥香)と、かつて剣城の傍にいた黒いピクシー(CV:悠木碧)の2匹であった。彼らは何かをするためにその場を飛び立つ。カトラとポトムリが囚われている現状、この小さな彼らがオズロックの野望を打ち砕く希望の光だ。



 そして囚われているという立場では同じ境遇の2人に場面は移る。ファラム・オービアスの王宮内にある牢獄には、側近のルーザ・ドノルゼン(CV:美名)のクーデターによって実権を奪われたララヤ・オビエス(CV:高垣彩陽)と剣城の姿があった。

 今の今まで側近に騙されていた自身を自嘲気味(じちょうぎみ)に語るララヤを、剣城は突き放したような彼流の言い回しで叱咤(しった)する。

 女王としてすべきことを促(うなが)され、ララヤの瞳から悲しげな光が消える。女王としてのノブレス・オブリージュ、自身の立場を自覚したのだ。



 その時、牢獄の外から争う音が聞こえてくる。何が起こったのかを怯(おび)えるララヤを自然に庇(かば)う剣城がイケメンすぎる。さっきの突き放した言い回しもララヤを思う彼の優しさの発露だったというのがこれを見るとよくわかる。


 外部の制圧を終え、扉を開いたのはララヤのもう一人の側近にして真に忠実な側近であるミネル・エイバ(CV:佐藤健輔)だった。ララヤ派であり忠義を尽くすミネルはここまで彼女を救うためにやって来たのだ。ミネルはララヤの前に膝まづいてその無事を安堵する。



 自由を回復した剣城はテラスで接近するブラックホールを見つめ、仲間である天馬たちに思いを馳せる。そこに飛んでくるのは、例の黒ピクシーだった。何かを伝えようとするかのように剣城の周囲を飛び回った黒ピクシーはその姿を変えていく。それは可愛かった小動物の頃の面影をまったく残さない詐欺なみの変化であった!


「我が名はアクロウス……」

 それはかつてララヤの記憶の中で再現された剣城とよく似た彼女の父、アクロウス・オビエス(CV:花田光)その人であった。あの可愛い黒ピクシーがこんなオッサンだったとは……。


 正体を現したアクロウスは可愛かった悠木碧ボイスから渋い大人の男性の声になって剣城にあることを伝えにやって来たと語る。それはおそらく、コズミックプラズマ光子砲及びそれに付随するオズロックの野望に関する話なのであろう。



 一方、ララヤは王宮の執務室の主人に返り咲いていた。ルーザを捕らえ、クーデターを失敗に導いて収拾したことを伝えるミネル。

 権力の回復に尽力してくれたミネルに対し、ララヤは詫びの言葉を口にする。以前剣城を連れて来いだの泣いている子供を泣き止ませろだのと無茶ぶりワガママ言い放題だった主人のこの殊勝な態度をミネルがどう聞いたのかはわからない。

 ルーザの裏切りを含め、すべては自身の責任ということを語るララヤはファラム・オービアスを代表する者としてグランドセレスタ・ギャラクシー決勝戦を辞退し、腐敗した自分たちは滅びるべきなのだと語る。


剣城「いや、棄権はしない!」


 その会話に割り込んできたのは剣城だった。地球人でありファラム・オービアスには拉致されてきたはずの彼がファラム・オービアスの側に立って発言することは違和感があった。

 しかし剣城は何かの確信を持って、試合に出場することを誓う。それもファラム・オービアスの選手として!


剣城「ファラム・オービアスは地球に勝利する!!」


 地球人である剣城がファラム・オービアスの選手としてグランドセレスタ・ギャラクシー決勝戦に出場し、しかも勝利すると言うのだ。ララヤもミネルも口をポカンと開けて言葉もない。



「地球を倒し宇宙に存在し続ける、それこそがファラム・オービアスが歩み続ける道だ!!」


 この前向きな意思は一体……? ララヤちゃん可愛さに地球を裏切ろうというのだろうか!? もちろんそんなことはありえないと思うが、ファラム・オービアスに与(くみ)するということは親友である天馬と戦うという意思の発現でもあった。



 剣城が彼自身の意思で敵に回ったということを知らないまま、天馬はギャラクシーノーツ号内の自室で明日の決勝戦に思いを馳せていた。

 天馬は希望の欠片を奪われ、宇宙を救うことが可能なのかを心配する。カトラとの約束では4つの希望の欠片を集め、彼女のもとにたどり着くということが条件だったからだ。

 そんな天馬を勇気づけようとするかのように陽気な声で現れたのは、ピクシーだった。攫(さら)われたみのりと一緒に姿を消していたピクシーを案じていた天馬は喜ぶ。しかし次の瞬間、ピクシーは光を放ってその姿を変えていく。まさか、まさかお前までオッサンに……!?


「よっ。俺、サージェス!」

 現れたのは金髪のお兄ちゃん、サージェス・ルーグ(CV:小西克幸)だった。こんな市川座名九郎(CV:小西克幸)みたいな声をした男らしい人があの可愛らしいピクシーの正体だったとは……。ということは初登場の際、天馬のほっぺをペロペロ舐めていたのもこいつか。……┌(┌^o^)┐ホモォ


 ピクシーが変身したという天馬の叫びを笑って否定するサージェス。彼が言うにはこれこそが本当の姿なのだということだ。つまり可愛いのが仮の姿というわけね。


 サージェスの身の上話が続けられる。彼はカトラに仕(つか)える騎士だったという。強い意思を持った魂はピクシーのような形を持つものらしい。つまりサージェスもポトムリと同様に魂だけの存在であり、もう生きてはいないということなのだろう。

 カトラはどこにいるのかを問われ、サージェスは返答を濁(にご)らせる。(オズロックに囚われているという意味で)カトラは今はまだ話せる状態にないと語る彼は伝言役でこの場にやって来たのだと言う。

 次の戦いで全力を出して戦えとサージェスは厳命する。



サージェス「勝てば宇宙は救われる……かもしれん!!」
天馬「え……え!?」


 何とも締(し)まらない言い方だが、サージェスは詳しいことはわからないと明言を避ける。ここまでの喋りぶりからしてこの男、結構なお調子者のようだ。

 とにかく全力で戦い、必ず勝つよう言い聞かせるサージェス。天馬からの快諾(かいだく)を聞き満足する。天馬は一緒に姿を消したポトムリ(みのり)がどうなったのかを尋ねる。

 サージェスは無事であると返答するが、次の瞬間その姿を元の愛らしいピクシーの姿に戻してしまう。どうやら本来の姿でいられる時間には制限があるらしい。



 再度、囚われのカトラとポトムリにカメラは移る。カトラの理論ではグランドセレスタ・ギャラクシー決勝戦におけるサッカーの戦いで発生するライフエナジーブラックホールをも消失させるほどのパワーを秘めていると予測する。強い意思と意思のぶつかり合いがとてつもないエネルギーを生じさせるという考えはポトムリの想像を超越していた。

 カトラは肯定しつつも、それには大きな危険があると語る。失敗すればスタジアムにいる観客を含めた全員が宇宙の塵(ちり)と化してしまうというのだ。

 まさに命がけの戦いだ。カトラは自分たちの力で未来を勝ち取らねばならないと語り、その上でこれまで未来を託してきた天馬を今度も信じると強い口調で語る。

 そしてカトラはポトムリのことも信じていた。この計画が成功するかどうかの最終局面ではポトムリの果たす役割が何よりも大きいのだ。



 カトラの全人類を救いたいという気持ち……そしてポトムリの科学者としてカトラの思いに殉(じゅん)じようとする気持ち……そんな彼らの苦悩をも踏み台にして宇宙の支配者を目論(もくろ)むオズロック。その表情は本性にふさわしく邪悪に歪(ゆが)んでいた。悪い顔やで。




 夜の帳(とばり)がギャラクシーノーツ号を包みこんでいた。

 ブラックルームにてキーパーの井吹宗正(CV:鈴木達央)の特訓に付き合うのは神童だった。豪快なシュートを決められた井吹は雪辱を期してもう一度シュートを乞(こ)う。

 次のシュートを撃とうとした神童に向け、井吹はサッカーの楽しさを教えてくれた神童に感謝の言葉を贈る。


井吹「明日は最高のプレーを見せてやる!」


 井吹の変わらぬ負けん気の強さを見てとり、神童は静かに苦笑する。井吹は神童から「参った」の言葉を引き出すまではサッカーはやめないと宣言する。



神童「なら一生やめられないな(笑)」


 意地っ張りな奴にはイジワルに対応する。これが神童流なのだろう。だがこれは裏を深読みすれば一生お前と一緒にサッカーを楽しんでやるという宣告にも等しいわけで、ある意味プロポーズにも匹敵する発言だと私は思ったのだがどうだろう?

 冗談めかした物言いはそこまでだった。表情を引き締めた神童と井吹は必勝を期する。


神童「勝つぞ!!」
井吹「おうっ!!」



 鉄骨落下の中をドリブルする特訓を続ける野咲さくら(CV:遠藤綾)と森村好葉(CV:悠木碧)、九坂隆二(CV:岡林史泰)も必勝を心に期していたことでは同じだった。



 井吹とは違うステージでキーパー練習に励む西園信助(CV:戸松遥)とそれに付き合うシュート役の瞬木。控えキーパーなのに張り切っている信助をやや小馬鹿にしたような言い方で瞬木は茶化す。

 例え試合に出られなくとも全力を尽くすことが信助のサッカーなのだ。またそれがチームの総合力を底上げすることに繋がる。井吹に何かあった場合、信助がゴールを守る存在になるわけだからその役割は重要だ。

 なおも努力を否定する言い分の瞬木に反抗するように、信助は愚直なまでにその意思を曲げようとしない。



信助「努力はやった人を裏切らない!!」


 これって「今日の格言」で使われても良いぐらいの名言なのだが、瞬木は笑って努力が必ずしも報いられる結果に終わらないことを例示する。信助が日本代表(=アースイレブン)に選ばれなかったことを暗に皮肉ってみせたのだ。

 口ごもりつつも、今は自分もアースイレブンの一員であることを告げる信助。そして絶対ゴールは守ってみせると彼にしては強気に言ってのける。その態度には瞬木も感じるものがあったのだろうか、笑ってその健闘を見守る気になったようだ。



 そして真名部陣一郎(CV:野島裕史)と皆帆和人(CV:代永翼)は、体力作りのために駆け巡った吊り橋のステージで語らい合う。



 当初イナズマジャパンに加入した時に黒岩に提示した条件を思い出し、今はそんなこととは無関係に宇宙のために戦い、優勝することだけを考えている。運命の急展開をまるで懐かしく回顧(かいこ)するように2人は楽しげに語り明かす。頭脳派同士とはいえ通う学校も違う両者、サッカーが触媒にならなければこの2人は永遠に出会うことはなかったであろう。彼らは親友としていつまでもこの不思議な経験を記憶し続けるはずだ。神童と井吹同様、この2人の関係も一生ものだと思う。


 ただこの場が語らいの場ではなく、特訓の場であることだけは変わっていない。足場が抜けていく懐かしい音を背中で聞きながら、2人は最後の特訓を共にして汗を流す。特訓内容を忘れてたっぽいので冷や汗混じりだろうけど。



 急流下りのステージではボクシングと歌舞伎というお互いが慣れ親しんだポーズでバランスを取る鉄角真(CV:泰勇気)と座名九郎の姿があった。



座名九郎「ボクシングの身のこなし、面白いですね」
鉄角「歌舞伎っていうやつも、なかなかだ!」


 年長者の座名九郎の方が敬語を使うという不思議な光景だ。お互いがお互いのジャンルに興味を抱いた両者は、相手の分野に挑戦してみようという思いで意気投合(いきとうごう)する。



 そして天馬は皮肉にも剣城と同じような構図でブラックホールを見つめつつ、これまでのアースイレブンの軌跡を思い返していた。

 初めて出会った仲間たちはサッカーは初心者、気持ちもバラバラでチームの体(てい)を成していなかった。エキシビションマッチの帝国学園戦で大敗した頃には想像もつかない強さと団結心が今のアースイレブンを構築している。


天馬『今はハッキリ言える。このメンバーで良かったって!』


 そしてこの最高のメンバーで明日の試合を勝ち、宇宙の平和を取り戻し、最後の仲間である剣城を取り戻す。そして地球に戻り、みんなでまたサッカーをする。それが天馬の望みなのだった。



 そして翌日が訪れる。グランドセレスタスタジアムのVIP席ではララヤとミネル、そして剣城の姿があった。運命の戦いを前に、ララヤは今一度、剣城に戦うことが出来るのかを問う。何といっても相手は剣城の故郷の星、地球代表でありメンバーは全員が剣城の仲間なのだ。

 剣城は思った以上にサバサバと、本当に戦いたい相手と戦えるとその心境を語る。やる気を見せる剣城の姿を見て、ララヤはかえって申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 剣城はララヤに向け、ファラム・オービアスの女王としてこの試合をしっかり見ておけと言う。それが一度はこの星の統治を失敗してしまったララヤへの大事な課題であるかのように。



 一方、天馬たちアースイレブンのメンバーもこのグランドセレスタスタジアムに到着する。この戦いで地球の運命が決まると思うと自然と身が引き締まる思いとなる天馬だった。

 スタジアムの電光掲示板が一瞬乱れ、奇妙な映像が映し出された。それは一瞬のことだったのだが天馬たちは見逃さなかった。何かが争い合う戦闘のシーンのようだった。まだクーデター騒動は収まっていないのか、それとも別の何かが起こっているのか……?



 ファラム・オービアス側の選手控え室にやって来た剣城は必ずこの試合に勝つよう、メンバーに喝を入れる。そこには懐かしい顔ぶれが揃っていた。ファラム・オービアス紫天王たちの姿だった。



 惑星サンドリアス編で力任せのゴリラプレーでアースイレブンを苦しめたバルガ・ザックス(CV:岩崎了)。



 惑星サザナーラ編九坂のチンコ切った(ウソ)ヒラリ・フレイル(CV:小林ゆう)と惑星ガードン編で物理的にアースイレブンを潰そうとしたロダン・ガスグス(CV:藤村歩)の2人。この2人、キツイ表情と可愛い外見が相まって姉弟のような印象。


 ヒラリは剣城がチームのキャプテンを務めることに不満げだった。女王であるララヤの命令には紫天王として逆らえないとはいえ、その不満を隠さないところはさすがヒラリちゃん。

 剣城は文句は言わせないと強気の姿勢で、自身の力でファラム・オービアスを勝利に導くと息巻く。



 アースイレブンの控え室では例によって天馬がキャプテンの重責と向き合っていた。キャプテンマークを握り締め、振り向いた先で彼は仲間たちの視線と向き合うことになる。

 そう、彼らは天馬の苦悩を共有し、共に戦うという意思を天馬に先駆けて明らかにしていたのだ。みんなの心遣いに、天馬は胸が熱くなるのを感じていた。



 その時、控え室の壁面に設置されていたモニターがノイズを響かせながら点灯する。映し出されたのはオズロックだった。

 その画像はスタジアムの電光掲示板にも映し出されていた。彼はその場からファラム・オービアスが自身の占領下になったことを宣言する。さっきの画像の乱れはこの場を占拠するオズロックの攻撃だったのだろう。

 ファラム・オービアスの中枢管理センターはすでにオズロックの手に落ちたらしい。星から脱出するための宇宙艇及びそれが置かれている空港もオズロックの支配下だ。つまりこの星にいる人間の生殺与奪(せいさつよだつ)は完全にオズロックの手の内にあると言ってよい状況だということだ。

 オズロックはその状態を知らしめ、ここに独立国家【イクサルフリート】の建国を宣言する。



 オズロックの背後に幾人かの姿が見える。


 「イクサル」という単語に反応したのはミネルだった。それが「復讐」という言葉に結びつくものらしい。オズロックが何かを復讐するためにこの計画を建てたというのだろうか?



 それはオズロックの回想で明らかとなる。彼の故郷、イクサルは遥か昔、ファラム・オービアスによって滅ぼされたという過去があった。国家の再建を託された184名の生き残りは滅び行く惑星イクサルを脱出し、復讐の機会を待つ永き眠りにつく。

 永き眠りを経て、彼らは目覚めた。だが目覚めることが出来たのは、オズロックを含めてわずか11名のみだった。生き延びたオズロックは故郷の再建とファラム・オービアスへの復讐を誓う。これ以上ないほどに強く結びついた10名の同胞たちと共に。



 コールドスリープの様子。余談だが11名という数字が彼らの計画をグランドセレスタ・ギャラクシーというサッカー対決に向かわせたのだろうか?



 かつてファラム・オービアスがオズロックの故郷を滅ぼしたという話は、平和主義のララヤを驚かせる。ミネルはそれを200年昔の話ながら事実であると告げる。その頃のファラム・オービアス侵略戦争を繰り返す帝国主義の国家だったらしい。

 その体制を変革したのが、他ならぬララヤの父、アクロウスなのだった。今は可愛らしい黒ピクシーに身をやつしながらも、やっぱり名君だったんだねアクロウス。



 オズロックの独壇場は続く。ファラム・オービアス側が敗れれば星外脱出用の宇宙艇はすべて自動的に爆破されるという。

 絶望を突きつけ、その中に一筋の光明を残すところがゲスいのだが、地球代表(アースイレブン)に勝てば脱出用の宇宙艇だけは返してやるとオズロックは告げ、映像は途絶える。ファラム・オービアスが滅ぼした星々の運命を思いながら恐怖に怯えるが良いと突き放して。


 これはファラム・オービアス側にさらに負けるわけにはいかないという思いを喚起させることとなる。剣城は現状に飲まれた様子のチームメイトを鼓舞するため、挑発的に語る。


剣城「まさか怖じ気づいているわけじゃないよな?」


 自分たちの故郷を命懸けで守る、それは当然のことであり、その当然のことを異星人である剣城に言い聞かされる屈辱はメンバーを怒りに駆り立てる。



 キーパーのアルゴ・バージェス(CV:佐藤健輔)を筆頭にファラム・オービアスの戦士たちの意識に火が灯(とも)る。この人心掌握の妙、剣城のキャプテンシーはこの一面を見ても大成功と言える。天馬がいなければ雷門中のキャプテンは彼でもおかしくないぐらい。



 アースイレブン控え室でももちろんオズロックの演説は聞こえていた。銀河連邦評議会の一員の顔で近付いて来たオズロックの本当の正体を知り、激情的な井吹は怒りで拳(こぶし)を掌(てのひら)に叩きつける。

 他のメンバーも沈痛な表情を浮かべる中、誰かが控え室に入って来る。ピクシーに導かれるようにして現れたその人物は、天馬がビジョンでしか会ったことの無かったカトラであった。

 ようやく出会えた本物のカトラに、天馬は今置かれている状況も忘れて笑顔で迎える。カトラは優しく涼やかな表情で天馬たちのこれまでの戦いを労(ねぎら)う。

 天馬はカトラから託された希望の欠片を失ってしまった事実を明かす。だがカトラはそれが自分の元に届いていると笑う。それがオズロック経由であることを明かさなかったのは今後の戦いに影響を及ぼさないためであろうか?

 宇宙を救う最後の条件は、この試合に勝利することだとカトラはゲームマスターのようなことを言う。勝利すれば宇宙が救われることを請け合いつつ、この戦いがかつて無いほど過酷なものとなるであろうことをカトラは宣告する。

 天馬たちにすら命の危険が及ぶ可能性に触れるカトラは、命を賭けて戦えるかどうかを天馬に問いかける。天馬はその厳しい問いかけに笑顔で答える。

 これまでに天馬たちが戦って来たすべての星のチームが命懸けで自分の故郷を守るために立ちはだかって来た。その姿を見届け、それを乗り越えてきたアースイレブンがここで命を惜しむわけが無かった。

 笑顔で全力を、それこそ命を賭けてでも戦うと明言する天馬を見て、カトラの心も決まった。この少年たちに宇宙のすべてを託す思いを胸に、カトラはピクシーを伴(ともな)い控え室を後にする。



 扉が閉まった瞬間、ピクシーに姿を変えていたサージェスがその姿を元に戻す。サージェスから天馬に宇宙の命運を託す理由を問われたカトラは、天馬の心の力を感じたのだと確信に満ちた表情で語る。



 そしていよいよ試合開始の時を迎える。実況のダクスガン・バービュー(CV:勝杏里)はこの星に留(とど)まる限り自分自身の命も危ないのにそんなことはおクビにも出さず、ノリノリのDJ風実況を送信する。



 ファラム・オービアスの女王様と同様にVIP席を用意されたキエルの王女様。カトラとポトムリがオズロックから解放されたかという点から、コズミックプラズマ光子砲が概念的に完成したことが暗示される(あと必要なのはこの戦いの過程で作り出されるライフエナジーだ)。さらにこの星に閉じ込めている限り逃げ出せないという意味で、牢獄の範囲が広まっただけにしか過ぎないとも言える。いずれにせよ、オズロックはファラム・オービアスの住人もカトラたちも生かしておく気はないと思われる。


 スタジアムの喧騒をよそに、オズロックは完成なった(と思われる)コズミックプラズマ光子砲の前に立ち、満足そうな笑みを見せる。



 そしてスタジアム。フィールドに向かう天馬は、前を行く忘れようのない後ろ姿を見て大いに驚く。そのトンガリ頭は、剣城のものだったからだ。



 親友の息災(そくさい)な姿に瞳を潤(うる)ませて喜ぶ天馬。マネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)も同じく嬉しそうだが、彼らよりは冷静な他のメンバーは剣城の様子がどこかおかしいことに気付いている様子。


 大喜びで駆け寄る天馬に対し、剣城は振り返りもせずそのマントに隠されたユニフォームを見せるという行為で返答とする。そこにはファラム・オービアスのチーム、ファラム・ディーテのユニフォームに身を包み、あまつさえキャプテンマークを付けた背番号10番の背中があった!!



 振り向いた剣城は、大胆かつ不敵に笑って見せる。天馬は親友が敵として最後の試練に立ちはだかるさまを信じられないものを見る思いで見つめていた。



 次回に続く。



  エンディング



 更新が大幅に遅れている。追いつくためにダイジェストで感想を書こうかと思ったのだが、書いてみるとやっぱり手抜きできない自分がいた。

 相変わらずものすごく忙しい現在、次回更新がいつになるかも明言できない。これでは1話進めるにも時間がかかりすぎて辛い。というわけでこの感想文後の総括を短くするという形でちょっとでも手抜きさせて欲しい。



 本題。ラストの天馬くん、前作『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』でフェイ・ルーン(CV:木村亜希子)が裏切って敵に回ったシーンがデジャブしたんじゃなかろうか。剣城との真剣対決は無印『イナズマイレブンGO』の初期の頃以来でもある。



 雷門の、というか地球の二大実力者の両名が今の時点で戦うのはある意味興味深い。友情とか宇宙の運命とかを考慮せずにサッカーファン目線で言わせてもらえば一番見てみたい対決と言えるかもしれない。


 紫天王たちの再登場も私の予測通りで嬉しい。どいつも憎たらしい相手だったけどそれぞれの決着という意味では不完全燃焼な状態だったからね。再登場アリだと思っていた。この作品中最高のギャグメーカーであるバラン兄弟が今回はセリフ無しだったけど、きっと次回は出番もあるのだろう。



 ではでは今回はこの辺で。時期は未定ながら次回は出来るだけ早く更新したいと思います。



  次回「決戦!ファラム・ディーテ!!」に続く。



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