日医WPから何を見るのか | いちどのじんせいタノシク・ジユウに

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日医総研から12月14日に発表されたワーキングペーパー「調剤報酬の現状について」を皆さんご確認されたでしょうか。

つい先ほど報酬改定率が発表された中で、それどころではないという方も多いかと思いますが、日医総研さんが一生懸命まとめてくれたレポートなので内容を見てみて私なりの感想を書いてみました。

 

雑な回答も多いかと思いますが、空いている時間を使ってまとめてみたわけですのでそのあたりはご了承ください。

(決して暇だったわけではありませんw)

 

あくまでも個人的見解です。

 

日医総研ワーキングレポートについてはこちらをご参照ください。

 

http://www.jmari.med.or.jp/download/WP397.pdf

 

P4

調剤技術料は医薬分業の拡大以上に伸びている。また調剤技術料の伸びは診療所の入院外技術料の伸びも上回っている。医薬分業を推進するため、院外処方にインセンティブを付与してきたためである。

 

 医薬分業に伴い、調剤技術料が増えることは当然の結果である。分業率の増加、すなわち院内処方から院外処方への変更を指し、院外処方せん枚数が増加したことを指す。

簡単に伸びているというが、図で説明をされている基準年2001年の院外処方せん枚数は「559,595,974枚」であり、2016年は「799,291,669枚」で処方箋枚数にすると「239,705,695枚」(2億4千万枚)増加していることわかる。

 

診療所入院外技術料を比較例に挙げているが、これを医薬分業率の計算の分母にあたる「投薬対象数(日)」で見てみると2001年は「1,256,864,331日」であり、2016年は「1,115,074,881日」となり、全体の母数自体は若干の減少はあるが変化しているとはいえない。すなわち対象となる外来患者にさほど変化がない中で、院外処方化が進んだことによって、診療所入院外技術料との差が出たということが言えるのではないだろうか。

逆転の発想をすると、処方箋が約2億5千枚増えたことによる調剤技術費の伸び(対比+77)と投薬対象数が「141,789,450日」(約1億4千日)減少したにも関わらず伸びている診療所入院外技術料(対比+26)は十分に評価されている数値としてみることが出来るのではないだろうか。

 

P7

医薬分業が国民に共通のメリットであれば、院外処方は全国展開するはずであるが、実際には都道府県別の医薬分業率にはかなりの地域差がある。

なお、秋田県の医薬分業率はもっとも高いが、後発医薬品数量割合は全国で30番目である。

 

 これについては医薬分業の是非、調剤医療費の高騰を問う数値ではなくなぜ分業していないのか日本医師会として考えるべき問題であると言える。後発医薬品数量についても、処方権と調剤権の分離があり医師が処方権を持つうえで後発医薬品使用率が低い要因は保険薬局にあるのではなく、処方する医師に問題があるとみるべきなのではないか。

 

 

 

 

P8

医療経済実態調査の結果より

 

チェーン調剤が処方せん1枚当たりの単価が高いことを挙げ、中でも医薬品費の高さを指摘している。高額薬剤の取り扱いとバイイングパワーによる薬価差益を指摘しているが、医薬品の購入には市場原理が導入されているため、バイイングパワーが働くことは経営努力と言えるのではないだろうか。同じように医薬品を購入している病院に対しても同様のことが言えると思う。

また在庫管理コストの圧縮に対しても指摘をしているが取扱品目数を抑制することも経営努力と言えるのではないだろうか。保険調剤は調剤拒否を行うことはできない。医薬品の変更には疑義照会も発生するため、少ない品目数で運営できるということは地域の医療機関と医薬品情報の共有および情報提供が出来ているとみることが出来るのでないだろうか。

また採用品目数が多いことが良い薬局と定義しているように論じられているが、必ずしもイコールで結ばれるものではない。

 

人件費についても同様である。勤務職員の給与平均を下げることは企業努力とブランディングの賜物と言える。それは病院に対しても言えることであり、経営努力をしない薬局ほど、採用費用や人件費の高騰に悩まされる。また従業員の雇用が継続しないことも言及できる点ではないだろうか。1店舗の薬局を対比しているが同じ保険収入を得ている企業において、人件費が高いために経営ができないという理由が、世の中の社会において通用するのだろうか。株式会社(営利企業)に対する批判を論じているが、持続継続的な運営という点では、病院にも同様のことが求められる。人件費が高いことが良いことではなく、社会保障制度上での適正な賃金を保ちながら運営していくことが求められるのではないだろうか。

 

P15

「医療経済実態調査」によれば門前敷地内薬局は8割弱であるが2017年度には調剤基本料1はそれを上回る9割以上の薬局が算定している。調剤基本料には、薬剤師1人当たりで、かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の合憲算定回数が月100回以上であれば調剤基本料1を算定できる特例があり、これを利用して調剤基本料1に復活しているところもあると推察される。

 

 国の方針は「かかりつけ薬剤師」の育成である。かかりつけ薬剤師指導料を算定し特例を解除することは国の求めている方針に準じて行動をしたと評価できる項目なのではないだろうか。国の制度を批判していると言えるのではないだろうか。P16にて調剤報酬の適正化という表現を使用しているが、果たしてその表現が適正化なのだろうか。特例を解除できるということはすなわちそれこそが「門前薬局悪」を否定するものであり、解除出来た点数を適正としてみるべきなのではないだろうか。論ずる内容のない項目である。

 

P21

重複投薬・相互作用等防止加算

2016年度改定で20点から30点に引き上げられた途端、算定回数が一気に拡大した。2016年度では以下入院外で薬剤総合評価調整管理料管理加算が創設されたが、これはほとんど算定されていないので、重複投薬・相互作用等防止加算は以下との連携が進んだ結果として増えたわけではない。

 

 重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件変更については触れられていいない。またこの点数は本来かかりつけ医かが進められて一元的継続的な管理の元、処方設計が行われていれば不必要な点数と言えるのではないだろうか。併用禁忌、重複薬があることにより疑義照会が行われ算定される本加算は本来「算定されない」に越したことではない。これだけの算定件数があるということは、保険薬局における一元的管理および薬のダブルチェック機能が果たされていると言えるのではないだろうか。

また医科点数である「薬剤総合評価調整管理料連携管理加算」の算定について触れられているが、大事な算定要件である「6種類以上の患者が対象」「2種類減らすこと」などの要件が記載されていない。薬局の加算の説明同様に簡易に表現されているため、医師が算定していない説明がされていない。また、重複投薬・相互作用等防止加算と薬剤総合評価調整管理料連携管理加算との紐づけが曖昧になっており、両点数の算定が医科・調剤の連携とは言いづらいものである。

 

P22

地域包括診療料・加算では常勤医師が2名以上配置されていることが届け出の要件であるが、薬局のかかりつけ薬剤師指導料は保険薬剤師1人でもよく、週32時間以上の勤務が条件である。(常勤でなくてもよい)また「当該薬局に6か月以上在籍していること」という要件であるが、6か月は“顔なじみ”になれる程の長さでもない。

 

 地域包括診療料=かかりつけ医であるかどうかの判断は難しい処である。「6か月以上は“顔なじみ”になれるほどの長さでもない」とは主観が強すぎと言えるのではないだろうか。また勤務時間32時間については先の中医協でも薬剤管理官が医師の常勤換算時間32時間に合わせていると説明をしている。薬剤師に限らず医師も32時間以上勤務の職員を1と定めている点は変わらないと言える。

地域包括診療料・加算が箱に対してつけられている点と、かかりつけ薬剤師指導料はヒトにつけられている点でも話は異なり、両者を比べるには難しいと言い難い。比較をするのであれば、基準調剤加算とではないだろうか。

 

P26

院内処方と院外処方の患者負担

調剤関連技術料は院内、院外合わせて2兆5千億円を超えているが仮にすべての処方を院内処方の点数で対応したとした場合の費用は約8000億円である。この差に見合う機能を果たしているのか、医薬分業の成果についての検証は十分ではない。

 

 本来の医薬分業論は技術料コストの視点ではなく、薬剤コストの観で見るべきものなのではないか。薬漬け医療の解消から始まった医薬分業の推進ではあるが、その論議はされていない。湿布薬の処方上限や、うがい薬の単独処方や、現在話題となっている保湿薬の医療目的外処方など、処方の無駄があることは言うまでもない。そのようなことを是正すべく医薬分業が行われチェックが行われているのが医薬分業論である。そのチェック機能としての評価を調剤報酬としているが、それらを無視したうえで院内と院外の比較をするのは暴論と言える。

 

P28

病院で従事する薬剤師数は増加傾向にある。しかし、病院の調剤関連業務を直接的に評価する診療報酬は限定的である。

 

 病院薬剤師の評価の低さを訴えたいと思われるが、これは診療報酬内の話であり過去に診療報酬にて薬剤師の評価をしてこなかったことに要因があるのではないだろうか。それは逆をいうなれば薬剤師に対する評価を軽視し、他の項目に財源を振り分けてきた結果であり、昨今の議論における「医科、歯科、薬剤」で財源を振り分けるというのは今までの報酬改定を無視する考え方とせざるを得ない。近年の改定で病棟薬剤業務実施加算など日常行ってきた業務を評価してもらうということが本来あるべき診療報酬改定の在り方ではないだろうか。

 

【総論】

全ての数字を実際に電卓をたたき計算しているわけではないので数字関係についてはあくまでも仮定にすぎませんが、少し各項目の比較などを見てみてもだいぶ主観が強いのではと思います。どうしても調剤と医科を比較すると医科の体制にも目を向けずにはいられないのですが、医科と調剤の連携があって初めて医薬分業が成立すると考えます。分業率や後発品使用率などはまさしくそうだと思います。昨今の敷地内薬局についても批判するのは自由であるが、実際に公募しているのは病院であることを忘れてはいけません。

 

診療報酬という性質上、「パイの奪い合い」と言われるように財源の取り合いなのは仕方ないことだと思いますが、このような分析をして本当にチーム医療が成り立つのかという疑問と不信感が沸くのは一人の国民として感じる部分です。

 

このような分析の結果に「患者の顔」が見えているのか。行きつくところ人を批判し自分たちを評価してくれという話なのではないか。

これこそがいまの医療業界の大きな問題であるといえるのではないでしょうか。

 

 

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