時間 《3》 | 気まぐれなイヌ

気まぐれなイヌ

小説を書いています。

「ところで点いつまで龍也先輩に支えてもらってるつもり?」

「え? あぁ…。」



指摘されて気付いた。

私の腰に回されたままの龍也の腕。

焦って体勢を整える。



「ごめん、重かったよね。」

「いや、お前くらいなら平気。」



今の鈴は、とてもじゃないが直視できない。

チラリと隣を見ると、まるで獲物を狙う猛獣のような顔つき。

食われる、と一瞬思った…。

しかし本来なら1本前の電車に乗ってるハズの人間が、なぜここにいるのだろう…。

本人に確認しようと口を開きかけた瞬間、鈴の声が耳に響いた。



「先輩、どうしてこの電車に乗ってるんですか?」



そう、それ。



「コーチが休みなんだ。 だから朝練も無し♪」

「そうなんですか♪」

「まぁ、放課後に自主トレしようとは思ってんだけどな。」

「お休みにしないですか?」



うん、私は会話に入らない方がよさそうだな…。


気付けば教室の前まで来ていた。

同じクラスなので、そのまま席へと向かう。

その時、鈴が先に行く龍也の背中に向かって言った。



「先輩、たまには息抜きして一緒に帰りませんか?」

「えっ?」



立ち止まって振り返る龍也。

あまりにも突然の誘いに驚いているようだ。



「帰りにカフェ寄りませんか?」

「…そう、だな。 たまには息抜きすっか!」



どうやら決まったようだ。



「じゃあ体育館の使用許可、取り消すから少し教室で待っててな。」

「はぁい♪」



龍也が背を向けて歩き出した瞬間、鈴はガッツポーズ。

…おめでとう…。






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