「ところで点いつまで龍也先輩に支えてもらってるつもり?」
「え? あぁ…。」
指摘されて気付いた。
私の腰に回されたままの龍也の腕。
焦って体勢を整える。
「ごめん、重かったよね。」
「いや、お前くらいなら平気。」
今の鈴は、とてもじゃないが直視できない。
チラリと隣を見ると、まるで獲物を狙う猛獣のような顔つき。
食われる、と一瞬思った…。
しかし本来なら1本前の電車に乗ってるハズの人間が、なぜここにいるのだろう…。
本人に確認しようと口を開きかけた瞬間、鈴の声が耳に響いた。
「先輩、どうしてこの電車に乗ってるんですか?」
そう、それ。
「コーチが休みなんだ。 だから朝練も無し♪」
「そうなんですか♪」
「まぁ、放課後に自主トレしようとは思ってんだけどな。」
「お休みにしないですか?」
うん、私は会話に入らない方がよさそうだな…。
気付けば教室の前まで来ていた。
同じクラスなので、そのまま席へと向かう。
その時、鈴が先に行く龍也の背中に向かって言った。
「先輩、たまには息抜きして一緒に帰りませんか?」
「えっ?」
立ち止まって振り返る龍也。
あまりにも突然の誘いに驚いているようだ。
「帰りにカフェ寄りませんか?」
「…そう、だな。 たまには息抜きすっか!」
どうやら決まったようだ。
「じゃあ体育館の使用許可、取り消すから少し教室で待っててな。」
「はぁい♪」
龍也が背を向けて歩き出した瞬間、鈴はガッツポーズ。
…おめでとう…。
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