■  新本中三針(S中三針) シチズン 11石(昭和30年-1955年頃)

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↑ 1955年頃の国産中三針達
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↑ 完成写真です。

あけましておめでとうございます。
また、一つ歳をとってしまいました。
今年の目標「心身錬磨」をたて日夜筋トレに
励んでおります。といってもまだ数日ですが・・
皆様、いかがお過ごしですか。
こんにちは 猫仙人の友達です。

今回は、とっても古い機械式をOH致しました。
シチズンの新本中三針と呼ばれるものです。
新本中三針?って何んですか?って思いますよね。
新中三針の前に中三針があってその後なので新中
三針なのです。つまり新は、NEW。 本は、本式。
中三針=センターセコンドです。
センターセコンドとは、秒針がセンターにあるとい
うことですからよくある分針、時針、秒針が文字盤
の中央を軸としたものです。ではなぜ、わざわざセ
ンターセコンドというのかは、センターセコンドが
普及する前は秒針が(多くは)6時位置に小さな秒
針=スモールセコンドがあるのが主流であったから
です。(この形式を小秒二針式といいます。)
こちらの方が仕組みが単純で懐中時計の時代
から続いています。今では、わざわざ差別化の為に
高級メゾンなどが採用していたりもします。
百聞は一見にしかずです。下の写真をご覧ください。
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↑ 左がスモールセコンド、右がセンターセコンド

センターセコンド=中三針ですが、中三針にも技術
の進化がありまして最初は、出車という歯車を追加
することで秒針を6時位置からセンターにもって行
きました。仕組みや技術的な話は、話がそれてしま
うので今回は割愛と致しますが、ご興味がある方は
下のリンクの【2】時計の動く仕組みに詳細があり
ますのでそちらをご覧いただければと思います。

シチズンの新本中三針の最初の頃の個体が今回ご紹
介のものとなります。
この個体(通称:S中三針と呼ばれています)は、
1955年(昭和30年)に発売されました。この1955
年は、国産時計にとっての新しい夜明けの時代でも
ありました。セイコーは、中三針スーパーの後継機
であるマーベルが発売、オリエントは、翌年ですが、
やはり中三針のT型搭載のオリエントスターが発売
されました。国産3メーカー中三針の揃踏みです。
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↑左から
セイコースーパー、セイコーマーベル、S中三針、
オリエントスターです。皆、今の時計より小さいで
すね。32mm前後です。勿論メンズです。

では、早速、OHに取り掛かりましょう。

↓ 入手時の新中三針
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↑ CマークとPHYNOX(切れないゼンマイ)
 の記載が時代を感じます。

この頃は、従来の炭素鋼ゼンマイ(黒ゼンマイ)の
錆びる、へたる、切れるというウィークポイントを
克服した新素材白色合金ゼンマイ(白ゼンマイ)で
あるPHYNOX、NIVAFLEXを文字盤に記載して商品
力をアピールしていました。
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↑ CENTER-SECONDの表記
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↑ 11jewels 耐震装置はありません。

耐震装置パラショックが採用されるのは、1956年か
らですから本当に最初期のS中三針の様です。

さて、状態ですが、おおよそ70年前の時計ですから
文字盤のシミは見受けられますがまあまあです。
夜光は、もう光りません。テンプには耐震装置の無
いタイプですが真は折れていません。ゼンマイは、
巻きどまりしています。解いてみたところ流石、切
れないPHYNOX。再度巻き上げることができました。
リューズでの時刻合わせも出来ます。長い期間眠っ
ていたので油切れで天輪は回りませんが、何とか
なりそうです。風防は、曇っていますが、割れはあ
りませんので磨いて使えるかもしれません。

では、作業に取り掛かりましょう!IMG_6090
↑ ベゼルと風防を外しました。

ベゼルと風防を外しましたら思ったより淵が禿てい
ました。
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↑ ムーブメントは、綺麗です。
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↑ 受けの逆R(しゃくれ)が素敵です。
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↑ 受けを外しました。
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↑ 地板になりました。
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↑ 香箱(ゼンマイが入っている)です。

これが、PHYNOX(フィノックス)ゼンマイ。
コバルト-クロミウム-ニッケル合金ゼンマイです。
フランスアンフィー社の合金。
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↑ 切替機構を外しました。
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↑ 超音波洗浄を終えて乾燥後です。
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↑ バラしの逆順で組み立てます。

組み立ては、同じ作業なので写真は割愛します。
OHや研磨など時計の修理に興味がある方は、
↓のリンクをご覧ください。
■これから始める機械式時計修理の趣味入門 : 
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↑ 組みあがりました。
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↑ ケースに入れました。

この後、タイムグラファーで歩度調整をします。
白文字盤にアップライトCマークと楔インデックス
いい顔つきですね。写真だとわかり辛いですが、
インデックスとCマークが光を反射して格好いいん
です。

時計って本当に面白いですね!

では また! ごきげんよう!




LOW BEAT vol.22 (CARTOP MOOK)
交通タイムス社
2022-10-24



■  新本中三針(S中三針) シチズン 11石(昭和30年-1955年頃)


Cal : CenterSecond ”S”
manual wind
sweep second
11 jewels
18000 A/h
case:SS 

当時価格:3,700円(大卒初任給:11,000円)


※記事中での不明な点(用語や仕組み、分解方法、注油方法、研磨方法など)は下記参考で【分解清掃 実践編 1】 ケースからムーブメントを取り出す
【分解清掃 実践編 2】ムーブメントを分解
【分解清掃 実践編 3】ムーブメントを洗浄
【分解清掃 実践編 4】ムーブメントを組み立てる
【分解清掃 実践編 5】番外編 研磨と磨き
【分解清掃 実践編 5’】ガラス風防再生へ挑戦(過去記事より追加)

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See you again! have a nice day and nice life !

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