将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

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~検討予定表~
戦法\項目 注目棋譜 研究課題

矢倉

- 脇システム
加藤流
△4五歩
続・森下システム

角換わり

-
同形腰掛銀周辺
△4二金型
9筋の端歩を巡る攻防

横歩取り

-
最新定跡の研究

相掛かり

-

-

向かい飛車

豊島-佐藤康
糸谷-佐藤康
佐藤紳-佐藤康
広瀬-佐藤康


角道オープン向かい飛車

三間飛車

- コーヤン流の今
石田流周辺

四間飛車

-

四間飛車穴熊
角交換四間飛車の基礎

中飛車

- 超速最新形
一直線穴熊

相振り飛車

- 石田流対△1四歩
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カテゴリーを矢倉にしたものの、正しくは分類外だよね。
こういうの困るよね。

【棋譜DB】
第30期竜王戦6組ランキング戦 藤井聡太-星野良生

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先手:藤井聡太 四段
後手:星野良生 四段

▲7六歩    △8四歩    ▲2六歩    △3二金    ▲7八金    △8五歩
▲7七角    △3四歩    ▲8八銀    △4四歩
(下図)

角換わり拒否。

星野四段の意図までは分かりませんが、
藤井四段の角換わりが強烈過ぎるので、
力戦にしたのかなぁ、という印象になってしまう。

ただ、この指し方は後手の勝率ホント悪いんだよね。

上図以下
▲2五歩    △4二銀(下図)

△4二銀に換えて△3三角ならウソ矢倉系の将棋になる。
それも考えておきたいテーマではあるが、ここでは割愛。

上図以下
▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △3三銀(下図)

通常は△4三銀。△3三銀は星野新手かな?

雁木にした場合、角筋が通しやすいので、
歩を交換された代わりに中央から動く展開もあるが、
矢倉の場合は二重で角筋が止まるので、
先手が望めば持久戦になりそうだ。

△3三銀を咎めるなら▲2五飛。
以下△2三歩に▲6六角~▲7七桂で飛車交換を狙う。
△4三銀型なら△3三桂で飛車を追えるので無効となる構想だ。
ただし、上手くいくかどうかは別問題。
個人的には先手持ちだが、初見ではやらないだろうなぁ。

上図以下
▲2八飛    △2三歩    ▲6九玉    △5二金    ▲4八銀    △5四歩
▲5九角    △3一角    ▲7七銀    △6四角    ▲5六歩    △4一玉
▲5七銀    △4三金右 ▲5八金    △3一玉    ▲4六歩
(下図)

この辺りはどう組んでも一局だけど、
通常の矢倉ではあまり現れない駒組になるんですね。

上図以下
△6二銀    ▲3六歩    △2二玉    ▲7九玉    △7四歩    ▲3七角
△5三銀    ▲6六歩    △9四歩    ▲9六歩    △2四銀    ▲8八玉
△3三桂
(下図)

後手も通常では見られない駒組に。

どうなる事かと思っていましたが、
こう進むなら、後手を持って楽しめそうだなぁ。
いつでも△3五歩等と動く手段がある。

上図以下
▲6八銀右  △1四歩    ▲6七銀    △1五歩    ▲4七金    △7三角
▲5九角    △4五歩
(下図)

△4五歩は機敏な仕掛けで、
手を掛けた部分で戦いが起きるのだから、後手が良いのではと思う。

上図以下
▲5五歩    △4六歩    ▲同 金(下図)

ここで△4五歩と抑えていれば後手が良いと思われる。
▲5六金は△5五歩なので、▲4七金の一手だが、
そこで△4四銀と上がれば先手の指し方が難しい。

上図以下
△4四銀    ▲7五歩    △同 歩    ▲7四歩(下図)

△4五歩▲4七金の交換があれば、
いつでも△5五角と飛び出せるところだった。

上図以下
△6四角    ▲6五歩    △3一角    ▲5四歩(下図)

角の睨みを逸らせては、ホッと一安心。
形勢は互角というところか。

上図以下
△9五歩    ▲同 歩    △5四金    ▲2五歩    △同 銀    ▲3七桂
△1四銀    ▲1六歩    △同 歩    ▲6八角    △4五歩    ▲5六金
△5五歩    ▲6六金
(下図)

何だか先手が味の良い展開になってきた。
△1七歩成から香車を奪うのは歩の渡しすぎで、
▲7三歩成が残っている現状では無理筋だろう。

上図以下
△3五歩    ▲2六飛    △1五銀    ▲2九飛    △2四銀(下図)

△3五歩には▲2四歩もあった。
△同 歩は▲7三歩成△同 桂▲7四歩△6五桂▲同 金△同 金
▲2四飛で十字飛車が決まるから、玉頭に有力な攻め味を作れる。

また、△2四銀のところで△3六歩も▲7三歩成だろう。
形勢自体が難しくとも、この玉形差では切り合いにしづらいか。

上図以下
▲4二歩    △同 金    ▲7三歩成  △同 桂    ▲7四歩    △6五桂
▲7三歩成  △8一飛    ▲6五金    △同 金    ▲3四桂
(下図)

本譜は▲4二歩が軽妙打。
藤井四段の終盤力を思うと、この先を考える気になれない。

Strategyとしては序盤の△3三銀が注目。
▲2五飛に対する準備があれば、後手を持つのも一考だ。

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福崎先生の棋譜を記事にしている内に、
「別に最新の棋譜じゃなくても良いじゃん」
という気持ちが膨らんできたので、
もっと過去の棋譜からも好きなものを選んでいこうと思う。

大山先生の棋譜は大山全集で並べていくのだけど、
全3巻中、最終巻の3巻を並べるのが一つの手筋になっている。
理由は、あまり古いと並べる気が起きない、というもので、
私自身も、好きな棋譜は3巻に多い。

が、棋譜検討記事は2巻の内容から書いていく。
理由は、この頃から振り飛車が多くなっているから。
やはり、大山先生と言えば振り飛車だと思うのです。

【棋譜DB】
第13期王将戦第3局 二上達也-大山康晴

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先手:二上達也
後手:大山康晴

▲2六歩    △3四歩    ▲7六歩    △4四歩    ▲2五歩    △3三角
▲4八銀    △3二飛
(下図)

三間飛車。

上図以下
▲6八玉    △6二玉    ▲7八玉    △7二玉    ▲5八金右  △4二銀
▲4六歩    △5二金左  ▲3六歩    △8二玉  ▲3七桂    △2二飛
▲5六歩    △7二銀
(下図)

上図以下、▲4五歩△同 歩▲5五歩という順もある。以下

1.△4四角▲4五桂△3三桂▲同 桂成△同 角▲4七銀
  △4三銀▲4六銀△2一飛

2.△4三銀▲4五桂△4四角▲3七銀△6四歩▲4六銀
  △7四歩▲3五歩△同 歩▲3二歩△同 飛▲2四歩
  △同 歩▲同 飛△2二歩

・・・といった要領でどうか。
どちらかと言えば、2.を選んだ方が後手は良いだろう。
形勢はなかなか難しいところだと思う。

上図以下
▲5五歩    △4三銀    ▲5七銀    △5四歩(下図)

▲5五歩はジックリと陣形を作る狙いだが、
△5四歩が機敏な一手だった。

上図から▲同 歩△同 銀と進むと、
1.▲5五歩は△6五銀で最悪。
2.▲5六銀△6四歩は一局か。

上図以下
▲4七金    △5五歩    ▲6六銀    △5四銀    ▲5五銀    △同 銀
▲同 角    △4三金
(下図)

本譜は中央で銀交換が行われたが、
△4三金まで進んでは、後手が指しやすいだろう。
△5二飛と捌く味が良い。

大山先生と言えば強靭な受けだが、
少なくとも、この時代の序盤においては、
居飛車側の攻めが確立していない事も大きい。

上図以下
▲8八角    △5二飛    ▲5五歩    △6五銀(下図)

7六の歩を奪いに行く手は、大山将棋でよく現れる。

上図以下
▲7五歩    △5四歩    ▲同 歩    △7六銀(下図)

△5四歩と合わせてから△7六銀が味のある攻め。
△5四飛~△8四飛が狙いである。
よって、▲7四歩と突き捨てて△8四飛を消す手も有効だった。

上図以下
▲5三歩成  △同 金    ▲5八飛(下図)

▲5三歩成は△同 飛なら▲3二銀の狙いと思われる。
しかし、直後の△3五歩も相当な筋なので、
後手としては、こちらの順を選ぶ手もあった。

▲5八飛は様々な狙いを含んだ手。
一例として、▲2四歩△同 歩▲2二歩△同 角▲4一銀がある。

上図以下
△5一飛    ▲4五歩(下図)

△5一飛は、前述最後の▲4一銀を消しつつ、
様子を伺った一手。

対する先手は▲4五歩と決戦。
振り飛車、腕の見せ所という局面だ。

上図以下△5五歩(下図)

ポトリと△5五歩が上手い受け。
▲同 角でも▲同 飛でも△6四金で捌こうという意味だろう。
飛車交換になると、先手の側面が弱すぎる。

上図以下▲6八金(下図)

そこで先手は▲6八金と締めたが・・・

上図以下△9四歩(下図)

大山流の真骨頂のような手。
このような間合いは現代にも受け継がれている。

上図以下
▲1六歩    △5四金(下図)

戦いの最中に△9四歩と緩められて調子が狂ったか、
▲1六歩は悪手だった。

すかさず△5四金と上がられては、先手が参っている。

上図以下
▲4三銀    △4五歩(下図)

▲4三銀は狙いの反撃だが、△4五歩が利いては虚しい。
▲5二歩には△4一飛▲5四銀成△4六歩で終了である。

こうした戦いになると、
△9四歩
▲1六歩の交換が、先手にとってあまりにも損だ。

上図以下
▲7四歩    △同 歩    ▲3四銀成(下図)

二上先生、必死の食らい付きだが・・・

上図以下
△2二角    ▲2四歩    △3一角    ▲2三歩成  △7五角(下図)

角をぐるりと使って後手十分。

上図以下
▲3二と    △6五金    ▲5七歩    △2六歩(下図)

△6五金と出て、中央から勇ましく攻めるかと思いきや、
一転、△2六歩が細やかな芸。

上図以下
▲4四成銀  △4六歩    ▲同 金    △2七歩成  ▲4五桂    △3七と
▲4二と    △同 角    ▲6六歩    △6四金    ▲7七歩    △8五銀
▲3五歩    △4七歩
(下図)

と金攻めを間に合わせて後手勝勢。

上図からは▲4九歩と受けましたが、
△5四金▲4三成銀△6四角と軽やかに捌いて、
以下、後手完勝となりました。

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福崎穴熊勝局集第6弾。

【棋譜DB】
十段戦 有森浩三-福崎文吾

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先手:有森浩三
後手:福崎文吾

▲7六歩    △3四歩    ▲2六歩    △4四歩    ▲4八銀    △4二銀
▲5六歩    △5四歩    ▲5八金右  △5二飛    ▲6八玉    △6二玉
▲7八玉    △7二玉    ▲9六歩    △8二玉    ▲9五歩    △9二香
▲4六歩    △3二金    ▲5七銀    △9一玉    ▲8六歩
(下図)

▲4六歩△3二金と上がらせて左美濃。

序盤のStrategyにあるまじき事を書くと、
この将棋、序盤は割とどうでもよくて、
終盤のねじり合いが人間臭くて好き。

だから、この辺りは飛ばし気味に。

上図以下
△5三銀    ▲6六歩    △5五歩    ▲同 歩    △6四銀    ▲6七金
△5五銀    ▲5六歩    △6四銀    ▲8七玉    △8二銀    ▲7八銀
△7一金    ▲4八飛    △4三金    ▲4五歩    △同 歩    ▲同 飛
△4四歩    ▲4八飛    △5四金    ▲7七角    △8四歩
(下図)

△5四金まで組んで振り飛車まずまず。
・・・と思っているところで、△8四歩が福崎印。

上図以下
▲8八玉    △7四歩    ▲8七銀    △7五歩    ▲同 歩    △同 銀
▲7六歩    △6四銀    ▲7八金    △4二飛    ▲2五歩    △3三角
▲3六歩    △7三銀引 ▲1六歩    △4五歩    ▲4九飛    △5八歩
(下図)

△7四銀くらいかな、と思っていたところで△5八歩
とにかく技を掛けようという意欲が凄いよね。

上図以下
▲4八飛    △6四歩    ▲3五歩    △同 歩    ▲3四歩    △4四角
▲2四歩    △同 歩    ▲2八飛    △2二飛    ▲5八飛    △7四銀
(下図)

先手も手順を尽くして垂れ歩を払い、
上図はおおよそ互角の分かれですか。

▲4六歩から銀を押し上げていく手は有力ですが、
△6九銀が見えているのでやりにくいか。

現代流は▲6八銀かなぁ。次に▲6五歩を狙って。
後手は金銀がバラバラなので、
大駒が飛び交う将棋になれば先手有利。

上図以下
▲2八飛    △3六歩    ▲3八飛    △4六歩    ▲同 銀    △6五歩(下図)


福崎先生は四段目まで上がった金銀を生かし、肉弾戦に持ち込む。

上図以下
▲4五歩    △6六歩    ▲同 金    △同 角    ▲同 角    △6二飛
▲6七歩    △6五金    ▲8四角    △8五歩
(下図)

飛車取りにかまわず。
福崎穴熊は、金銀がバラバラになるのを嫌わない。

嫌ってくれないと張り合いがないので、
▲8四角では▲1一角成だったかな。
それで先手が良かったと思う。

上図以下
▲6二角成  △同 金    ▲5四角    △4七角    ▲4八飛    △6九角成(下図)

急所に馬を作って、やや後手ペースか・・・

上図以下
▲9四歩    △同 歩    ▲9三歩(下図)

・・・というタイミングで王手の掛かる形を作る端攻め。

この辺りは、細かい意味を追うよりも、
勝負の呼吸を味わいたくなりますね。

上図以下
△同 銀    ▲7一飛    △7二歩    ▲2一飛成  △6一歩(下図)

後手は歩を駆使して、自玉の整備し・・・

上図以下
▲7七桂    △8六歩    ▲同 銀    △8七歩    ▲同 金    △6四金
▲4三角成  △8九金
(下図)

・・・そして、8筋から味を付けて△8九金と、後手好調な進行。
ただ、ここからもねじり合いが続きます。

上図以下
▲同 玉    △8七馬    ▲7八金    △8六馬    ▲8七歩(下図)

ここで△7七馬▲同 金△6五桂もありました。
△3七歩成▲同 銀で5七を薄くする筋があるので、
十分攻めが続きそうです。

上図以下
△4二歩    ▲8六歩    △4三歩    ▲8五桂    △8二銀打(下図)

一瞬の隙に端から絡んで、形勢が混沌としてきました。
有森先生、力あるからなぁ。

上図以下
▲9三桂成  △同 桂    ▲1一龍    △5九角    ▲4九飛    △8六角成
▲8七歩    △7六馬    ▲7七歩
(下図)

馬が逃げているようだと、▲5一角でおかしい。
ついに逆転か、という局面ですが・・・

上図以下△8七馬(下図)

この切り込みが鋭く、後手が有利をキープしました。

上の方で△7七馬と切る手を示しましたが、
その時は桂を奪っていたので、決断が比較的容易でした。
しかし、この△8七馬はシャープなだけではなく、
実戦で鍛えた味があります。いかにも福崎先生ですね。

上図以下
▲同 金    △7五桂    ▲8六金    △6七桂成    ▲7八銀    △6八金
▲6七銀    △同 金
(下図)

先手の持ち駒は受けに不器用な駒ばかり。

対する後手陣も堅くはないのですが、
▲3五角に△5三歩が利くなど、意外に耐久性があります。

上図以下
▲5一角    △5二金(下図)

△6三金引の方が良かったかもしれない。
本譜は5一の角が後手玉頭を睨んでいて、怖い事になった。

上図以下
▲8四桂    △8五桂    ▲9二桂成  △同 玉    ▲9四香(下図)

△9三歩は▲8四桂△8一玉▲7三角成で必死が掛かる。

上図以下
△8一玉    ▲8四角成  △5一歩    ▲9三歩    △7一玉    ▲9二歩成
△7三銀
(下図)

△5一歩から左に逃げる展開になり、後手が危機を脱した。
自陣歩がいっぱい現れるのは激戦の印だと思う。

上図以下
▲3五角    △5三桂    ▲9三馬    △6二玉    ▲5五香    △同 金
▲8五金    △7八銀
(下図)

まで164手で後手の勝ち。

あまり紹介されているのを見た事がないけど、
終盤のエッセンスが詰まった好局だと思う。

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福崎穴熊勝局集第5弾。

【棋譜DB】
十段戦 中原誠-福崎文吾

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先手:中原誠
後手:福崎文吾

▲2六歩    △3四歩    ▲7六歩    △4四歩    ▲4八銀    △3二飛
▲6八玉    △4二銀    ▲7八玉    △6二玉    ▲2五歩    △3三角
▲5八金右  △7二玉    ▲5六歩    △8二玉    ▲9六歩    △9二香
▲7七角    △9一玉    ▲8八玉    △5四歩    ▲7八銀    △5三銀
▲6六歩    △5二金左  ▲6七金    △6四歩    ▲5七銀    △8二銀
▲8六歩    △6三金    ▲8七銀    △4五歩    ▲7八金
(下図)

▲銀冠△三間飛車穴熊。

中原先生っていうと、やっぱり銀冠が強いイメージはある。
勝局集だから紹介しないけど、福崎先生も苦戦してたからなぁ。

ちなみに、1986年の将棋で、
中原名人-福崎七段、という時代ですね。

上図以下
△4四銀    ▲8五歩    △7一金    ▲9五歩    △4二飛    ▲3六歩(下図)

基礎知識として、△5五歩▲同 歩△同 銀は成立しない。
▲2四歩△同 歩▲3五歩で困るからだ。

上図以下
△7四歩    ▲1六歩    △7三金    ▲9八玉    △4三飛(下図)

△4三飛は次に△5五歩と仕掛ける準備。
以下▲同 歩△同 銀▲2四歩△同 歩▲3五歩なら、
△同 歩▲3四歩△4二角▲6五歩△5三飛で捌ける。
途中▲3四歩のところで▲2六飛もよくある手法だが、
△4六歩▲同 歩△6五歩で攻めが続きそうだ。

上図以下
▲4八飛    △5五歩    ▲同 歩    △同 銀    ▲5六歩    △4四銀
▲8六角
(下図)

△5三銀~△5四銀の立て直しに対し、
▲7七桂~▲6五歩の対抗策を作った駒組だが、
次の手が厳しかった。

上図以下△8四歩(下図)

機敏な着想。
▲同 歩なら△8五歩▲9七角△5三銀とし、
次に△8四金から玉頭に殺到できる。
この時、△4三飛型が将来の△8三飛を見込んでいる。

上図以下
▲9六銀    △8五歩    ▲同 銀    △4二角    ▲8四歩    △8三歩
▲同歩成    △同 銀    ▲7七桂    △8二金    ▲8八玉    △8四歩
▲9六銀    △7二金引
(下図)

玉頭の勢力を奪っては、後手が指しやすくなった。

この局面から▲2四歩も有力だけど、感触が変ですかね。以下
△同 歩▲2二歩△3三桂▲2一歩成△3五歩▲同 歩△2五桂・・・
難しいけど、後手の駒を捌かせてると感じる人が多いかなぁ。

上図以下
▲2八飛    △5五歩    ▲同 歩    △同 銀    ▲5六歩    △4六歩
▲5五歩    △4七歩成  ▲5六銀    △4六と    ▲5四銀
(下図)

▲2八飛△5五歩を誘う勝負手だったと思うんです。
4筋は突破されるけど▲5四銀と反撃して、
確かに先手も戦えそうに見えます。

そう、次の手が無ければー・・・

上図以下△6五歩(下図)

あまりにもピッタリな突き出し。
▲4三銀成△8六角も▲4二角成△同 飛も後手優勢。

上図以下
▲7五歩    △5六と    ▲4三銀不成△6七と    ▲同 金    △6六歩
▲同 金    △7五角
(下図)

本譜はアヤを求めて▲7五歩だったけど、
上図のように△7五角と捌くキッカケにもなった。
あえて△6六歩▲同 金を入れてから△7五角っていうのが憎いよね。

上図以下
▲同 金    △同 歩    ▲7三歩    △同金直    ▲6五桂    △7四金
▲7三歩    △6五金    ▲6一飛    △7六金
(下図)

▲7三歩と叩かせた反動で寄せに出る表現が美しく、
上図は後手勝勢。

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【棋譜DB】
藤井聡太四段炎の七番勝負第5局 深浦康市-藤井聡太

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先手:深浦康市九段
後手:藤井聡太四段

▲7六歩    △8四歩    ▲6八銀    △3四歩    ▲7七銀    △6二銀
▲2六歩    △4二銀    ▲5八金右  △3二金    ▲4八銀    △7四歩
▲5六歩    △4一玉    ▲7八金    △5四歩    ▲6九玉    △5二金
▲7九角    △3三銀    ▲6六歩    △3一角    ▲3六歩    △4四歩
▲6七金右  △6四角    ▲3七桂
(下図)

森下システム調の出だし。

上図以下
△3一玉    ▲6八角    △4三金右 ▲7九玉    △2二玉    ▲1六歩
△1四歩    ▲3八飛    △2四銀    ▲8八玉    △9四歩    ▲4六歩
△9五歩    ▲4七銀    △7三桂
(下図)

対する藤井四段は、前例が少ない構え。
軽く探した感じだと、村中-有吉戦 が近いかな。

この前例から考えると、
△2四銀が少し早い、という可能性はあるから、
この銀をどう考えるかは一つのテーマ。

上図からいきなり仕掛けるなら▲4五歩△同 歩▲6五歩(下図)

この時、△3一角か△4二角かがよく分からない。

まぁ、一般的には△4二角ですか?で、▲2五歩(下図)

上図から、△3三銀なら▲4五桂△4四銀▲4六銀、
△1三銀なら▲3五歩△同 歩▲5五歩△同 歩▲4五桂という将棋ですか。
どちらも桂損が見えているんですが、銀が6二だから、という事で。

んー・・・これもありそうな進行ですよねー。
バリバリ攻めるのが好きな人はこちらですかね。

本譜は△7三桂以下
▲8六銀    △8五桂    ▲2五歩(下図)

深浦先生は、このタイミングで▲2五歩
やっぱり、2四の銀は気になる存在という事で。

上図から△1三銀は3筋方面が弱くなるので、
▲4五歩△同 歩▲3五歩が嫌ですかね。

上図以下
△3三銀    ▲6五歩    △5三角(下図)

△3三銀に対して▲4五歩△同 歩▲3五歩と行くのは、
3筋が堅い&6四角のラインで、良いイメージが無い。

で、▲6五歩を入れたんだけど、△5三角が良い引き場所で、
▲4五歩△同 歩▲同 桂△4四角▲3三桂成には大事なものを取ろうとしてます。
流石にこうはならないけど、▲4四歩と取り込んでも△同 角が王手なんだから、
好きなように攻められないのは確かだよね。

だから、▲8六銀△8五桂の交換が後手得という可能性はあるよね。
玉のコビンが弱くなって、安全に▲6五歩と突けなくなってるから。
この点を評価するなら、△2四銀を△8五桂に回すような手順はあったかな。
それはそれで話が違うだろうから、序盤のアヤですけどね。

上図以下
▲5五歩    △同 歩    ▲4五歩    △7三銀(下図)

将来の王手を消して▲5五歩だけど、
将来の▲4六角も消してるから、得ばかりではない。
この微妙な意味付けが、後手に希望を感じさせますよね。

△7三銀と使えて、とりあえずホッと一息ですか。
遊び駒も使えたし、互角くらいはあるだろう、と。

上図以下、▲3五歩△同 歩▲同 角にも▲4六銀にも、
△6四歩と突き出す手が確実な足取りで、
▲同 歩△同 銀と中央に出られれば調子が良いし、
△6五歩と取り込めれば△6二飛が良い感じだよね。

上図以下
▲1五歩    △同 歩    ▲3五歩    △同 歩    ▲4六銀    △3六歩
▲4四歩    △同 角    ▲4五桂    △3四銀    ▲3六飛    △3三歩
(下図)

▲1五歩▲3五歩と勢いを付けて攻めれば、
△6四歩は間に合わない。

ところが今度は△3三歩が良い受けですか。
低く歩を打つと上部への弾力が無くなるけど、
▲3三歩を消して、4五の桂を負担にさせれば良いと。

そっかー、ピッタリしてますね。

上図以下
▲3八飛    △7五歩(下図)

なるほど、コチョコチョっと。

後手玉への攻め方が分からないから、
くすぐられるのは困りますねー・・・

上図以下
▲2四歩    △同 歩    ▲7五歩(下図)

実は、この数手に感心してたのね。
なんか、利かされみたいで嫌じゃないですか、▲7五歩は。

将棋は「くすぐったくないですよー」が良いのかー。

上図以下
△5四金    ▲3三桂成  △同 金    ▲4五歩    △7一角    ▲3四飛
△同 金    ▲4三銀
(下図)

「くすぐったいのが大丈夫なら、殴っちゃえ」で△5四金
「殴られる前に殴っちゃえ」で▲3四飛ですか(荒すぎる表現だ)。

上図で△4二桂は、▲3四銀成△同 桂▲3五銀ですかね。
それは桂が冴えないかなぁ。

上図以下
△7七歩    ▲同 桂    △7六歩    ▲同 金    △3八飛    ▲5四銀成(下図)

・・・でも、ここまで進むと、
後手を持って案外決め方が難しいですよね。

A級棋士の深浦先生に改めて言う事でもないですが、
流石に底力あるなぁーと感心しますねぇ。

上図以下
△2六角    ▲3七歩    △9六歩    ▲同 歩    △9七歩    ▲同 香
△同桂成  ▲同 銀    △5六桂    ▲5七角    △9三香打
(下図)

いやー、でもそうか・・・

目立たない手だけど、△2六角って凄いな。
上図のような寄せの構図で△2六角▲3七歩の交換を入れないと、
▲3九歩や▲3九香が生じるという事ですか・・・

△2六角▲3七歩は部分的に後手が損だと思うけど、
△9三香打はその損を飲んでも構わない価値だと。なるほどねぇ・・・

上図以下
▲2三歩    △1三玉(下図)

しかし、迫力の終盤戦が続きますね・・・

▲2三歩は、△同 玉なら▲3五桂の筋で角を仕留める狙いですか。
で、際どく△1三玉とかわしたんだけど、ここで▲1四歩ならどうでした?
△同 玉には▲8五桂(この終盤が面白くなっている理由)と跳ねて、
▲3六金~▲2六桂と迫る手を見る。

んー・・・しかし、正確にやると後手が良いのかなぁ。

上図以下
▲9五桂    △9四歩    ▲3六金(下図)

なるほど、この手順も凄いですね。
△7一角と逃げたら▲1五香で、後手は合い駒が無い、と。
これは▲2三歩△1三玉と逃げた手を咎めている意味があるので、
精神的に追い詰めている、という事はあるのかもしれない。

上図以下
△9五歩    ▲8五桂(下図)

切り札発動。
先手玉は7七~6六~5五が楽園への階段である。

上図では△9六歩も有力。
▲7三桂成と欲張ると、△8五桂▲同 金△7六歩で階段が外されるので、
仲間を見捨てて▲7七玉と逃げるしか無さそうだが、△9七歩成でどうか。
双方大変な変化だが、後手が十分やれると思う。

上図以下
△同 歩    ▲2六金    △8四桂    ▲7七玉    △7六桂(下図)

藤井四段は△6八桂左成~△5六金の順で、
階段をせきとめようとしている。

上図では▲4一角も有力。
後手の楽園を奪いつつ、▲6三角成で新たな楽園を作る狙いだ。
この手も相当に際どい終盤戦になると思われる。

上図以下
▲1五香    △2三玉    ▲1六角    △5八飛成(下図)

ここで▲1一香成は相当に有力だけど、
△6八桂左成▲同 金△同 桂成(下図)

・・・そうか、かなり際どいけど、後手玉が詰まないですね。
この図で詰まないっていうのは、勝ち運のようなものも感じる。
けど、藤井四段に言わせれば読み切りなんだろうね(笑)

本譜は△5八飛成以下
▲5九歩    △6九龍    ▲1一香成  △2五歩(下図)

△2五歩が冷たいか。なるほど。

上図以下
▲同 金    △同 金    ▲同 角    △6六金    ▲同 角    △7八龍
▲同 玉    △6八桂左成
(下図)

まで122手で後手の勝ち。

金駒を渡すと、先手玉に詰みが生じていたけど、
△2五歩と指されては、もはや仕方なかったですね。

個人としては、やはり△2六角が印象に残ります。
私が指したら中途半端な手で終わったと思うので。

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