中飛車 十段戦 有森浩三-福崎文吾 棋譜検討(▲左美濃△中飛車穴熊) | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

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福崎穴熊勝局集第6弾。

【棋譜DB】
十段戦 有森浩三-福崎文吾

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先手:有森浩三
後手:福崎文吾

▲7六歩    △3四歩    ▲2六歩    △4四歩    ▲4八銀    △4二銀
▲5六歩    △5四歩    ▲5八金右  △5二飛    ▲6八玉    △6二玉
▲7八玉    △7二玉    ▲9六歩    △8二玉    ▲9五歩    △9二香
▲4六歩    △3二金    ▲5七銀    △9一玉    ▲8六歩
(下図)

▲4六歩△3二金と上がらせて左美濃。

序盤のStrategyにあるまじき事を書くと、
この将棋、序盤は割とどうでもよくて、
終盤のねじり合いが人間臭くて好き。

だから、この辺りは飛ばし気味に。

上図以下
△5三銀    ▲6六歩    △5五歩    ▲同 歩    △6四銀    ▲6七金
△5五銀    ▲5六歩    △6四銀    ▲8七玉    △8二銀    ▲7八銀
△7一金    ▲4八飛    △4三金    ▲4五歩    △同 歩    ▲同 飛
△4四歩    ▲4八飛    △5四金    ▲7七角    △8四歩
(下図)

△5四金まで組んで振り飛車まずまず。
・・・と思っているところで、△8四歩が福崎印。

上図以下
▲8八玉    △7四歩    ▲8七銀    △7五歩    ▲同 歩    △同 銀
▲7六歩    △6四銀    ▲7八金    △4二飛    ▲2五歩    △3三角
▲3六歩    △7三銀引 ▲1六歩    △4五歩    ▲4九飛    △5八歩
(下図)

△7四銀くらいかな、と思っていたところで△5八歩
とにかく技を掛けようという意欲が凄いよね。

上図以下
▲4八飛    △6四歩    ▲3五歩    △同 歩    ▲3四歩    △4四角
▲2四歩    △同 歩    ▲2八飛    △2二飛    ▲5八飛    △7四銀
(下図)

先手も手順を尽くして垂れ歩を払い、
上図はおおよそ互角の分かれですか。

▲4六歩から銀を押し上げていく手は有力ですが、
△6九銀が見えているのでやりにくいか。

現代流は▲6八銀かなぁ。次に▲6五歩を狙って。
後手は金銀がバラバラなので、
大駒が飛び交う将棋になれば先手有利。

上図以下
▲2八飛    △3六歩    ▲3八飛    △4六歩    ▲同 銀    △6五歩(下図)


福崎先生は四段目まで上がった金銀を生かし、肉弾戦に持ち込む。

上図以下
▲4五歩    △6六歩    ▲同 金    △同 角    ▲同 角    △6二飛
▲6七歩    △6五金    ▲8四角    △8五歩
(下図)

飛車取りにかまわず。
福崎穴熊は、金銀がバラバラになるのを嫌わない。

嫌ってくれないと張り合いがないので、
▲8四角では▲1一角成だったかな。
それで先手が良かったと思う。

上図以下
▲6二角成  △同 金    ▲5四角    △4七角    ▲4八飛    △6九角成(下図)

急所に馬を作って、やや後手ペースか・・・

上図以下
▲9四歩    △同 歩    ▲9三歩(下図)

・・・というタイミングで王手の掛かる形を作る端攻め。

この辺りは、細かい意味を追うよりも、
勝負の呼吸を味わいたくなりますね。

上図以下
△同 銀    ▲7一飛    △7二歩    ▲2一飛成  △6一歩(下図)

後手は歩を駆使して、自玉の整備し・・・

上図以下
▲7七桂    △8六歩    ▲同 銀    △8七歩    ▲同 金    △6四金
▲4三角成  △8九金
(下図)

・・・そして、8筋から味を付けて△8九金と、後手好調な進行。
ただ、ここからもねじり合いが続きます。

上図以下
▲同 玉    △8七馬    ▲7八金    △8六馬    ▲8七歩(下図)

ここで△7七馬▲同 金△6五桂もありました。
△3七歩成▲同 銀で5七を薄くする筋があるので、
十分攻めが続きそうです。

上図以下
△4二歩    ▲8六歩    △4三歩    ▲8五桂    △8二銀打(下図)

一瞬の隙に端から絡んで、形勢が混沌としてきました。
有森先生、力あるからなぁ。

上図以下
▲9三桂成  △同 桂    ▲1一龍    △5九角    ▲4九飛    △8六角成
▲8七歩    △7六馬    ▲7七歩
(下図)

馬が逃げているようだと、▲5一角でおかしい。
ついに逆転か、という局面ですが・・・

上図以下△8七馬(下図)

この切り込みが鋭く、後手が有利をキープしました。

上の方で△7七馬と切る手を示しましたが、
その時は桂を奪っていたので、決断が比較的容易でした。
しかし、この△8七馬はシャープなだけではなく、
実戦で鍛えた味があります。いかにも福崎先生ですね。

上図以下
▲同 金    △7五桂    ▲8六金    △6七桂成    ▲7八銀    △6八金
▲6七銀    △同 金
(下図)

先手の持ち駒は受けに不器用な駒ばかり。

対する後手陣も堅くはないのですが、
▲3五角に△5三歩が利くなど、意外に耐久性があります。

上図以下
▲5一角    △5二金(下図)

△6三金引の方が良かったかもしれない。
本譜は5一の角が後手玉頭を睨んでいて、怖い事になった。

上図以下
▲8四桂    △8五桂    ▲9二桂成  △同 玉    ▲9四香(下図)

△9三歩は▲8四桂△8一玉▲7三角成で必死が掛かる。

上図以下
△8一玉    ▲8四角成  △5一歩    ▲9三歩    △7一玉    ▲9二歩成
△7三銀
(下図)

△5一歩から左に逃げる展開になり、後手が危機を脱した。
自陣歩がいっぱい現れるのは激戦の印だと思う。

上図以下
▲3五角    △5三桂    ▲9三馬    △6二玉    ▲5五香    △同 金
▲8五金    △7八銀
(下図)

まで164手で後手の勝ち。

あまり紹介されているのを見た事がないけど、
終盤のエッセンスが詰まった好局だと思う。

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