メリーゴーランド221

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「何で知ってる?」
「うそやろ………」
 予感が当たってしまったと、今度は千雪が嫌そうな顔をした。
「桜陽女学院てお嬢さん校あるやろ? 俺、そこの子らに追っかけまわされとってん、一時」
「おいおい、まさかそれが、薫とかいうんじゃねぇだろうな?」
 京助の言葉に千雪は大きく溜息をつく。
「そのまさかや。中心におったんがその久世薫さんで、あと一条、西宮の三人。三年の時、うちの剣道部が出場辞退する羽目になったんも、一条さんがきっかけやって……」
 こんなところまで高校時代の出来事が追いかけてくるとは思わなかった。
 というか、綾小路関係者と自分との少なからぬ因縁に、千雪はあらためて嫌な気分になる。
「そういや、お前、三年の時、出られなかったとか言ってたな。その女どもがきっかけってなんだ?」
「いやもう、済んだ話やし、きっかけ言うても、一条さんが悪いわけやなかってんけど」
 千雪は部活の帰り、たまたま桜陽女学院の一条和子に出くわしてつきまとわれ、突っぱねて彼女を置いて帰ろうとした時、ガラの悪そうな学生らに一条が絡まれ、助けて逃げた。
それがきっかけで、後日それを根に持った他高のワルらが千雪のことを突き止め、剣道部の後輩に喧嘩を吹っ掛けたために補導され、インハイを前に部は出場辞退となったことなどを、かいつまんで京助に話した。
「いや、一条さんはそう目立ったことをする子やなかってんけど、自分が原因やいうて、後から謝りに来てくれたし」
「一条さんは、っていうからには、薫はどんだけ目立ったことをしたんだ?」
 千雪はまた苦い顔をした。
「クリスマス、バレンタイン、ことあるごとに学校の前か、家まで来てくれてな」
 ふっと苦笑したが、つい最近知ったこともあった。
「こないだ軽井沢行った時、三田村や研二のやつが俺に隠しとったんがわかってんけど」
 京助は千雪を見つめた。
「俺の知らんとこで、研二に、研二が俺の傍におるから、自分らが近づけへん、とか何とか言うたんやて」
「薫がか?」
 険しい眼差しを向けながら京助は聞いた。
「あとから考えたら研二は人に言われたからて、態度を変えるようなことはせえへんのにな」
 なるほど、と京助は一人頷いた。

 


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