観た映画作品

100円の恋

2014年11月
武 正晴(監督)

安藤サクラ(主演)

 

 

ひとこと感想

なんというか、非凡すぎた。ちょっとカワイイとか、目立つ顔立ちとか、そういうのではなく、存在感、そして、役への没頭ぶり。溜息しか出てこない。

 

***

 

本作では、ひたすら「ダメ」な人間が登場する。

 

嫌になるくらい、「ダメ」である。

 

救いようがない。

 

安藤サクラも、あくまでも、その一人である。

 

しかも、ほかの「ダメ」な人間たちに「ブス」と言われ続ける。

 

「ダメ」な人間のなかでも、さらに「ダメ」出しをされている、それが本作における安藤サクラである。

 

だが、彼女は、立ち上がる。

 

「生きようとする」と言い換えてもよいのだろうか。

 

しかも、見事すぎるくらいの立ち上がりぶりを見せてくれる。

 

年齢制限ギリギリであるにもかかわらず、ボクシングにのめりこむのである。

 

しかも「勝ちたい」という一心で。

 

いや、だが、実際には「勝つ」ことはできない。

 

「勝ちたい」という思いは強かったが、叩きのめされる。

 

いや、それでも安藤サクラは、「負け」たことを背負ったことによって、はっきりと、一歩前に進むことができた。

 

結局は「勝ち」「負け」ではなく、「手ごたえ」「くやしさ」「生きている感」等をつかみとれた思うこと、それが得られたことのほうが大きいのであろう。

 

作品の冒頭から前半に登場する安藤サクラ。

 

後半にボクシングに打ち込む安藤サクラ。

 

この両者は、まったく別者に見える。

 

家に引きこもりゲームばかりしているモサモサした前半の安藤サクラ。

 

どのくらいトレーニング(練習)したのか、驚異的に機敏な動きを見せる後半の安藤サクラ。

 

この両者のギャップに萌え、愛おしく思えてしまう。

 

何ともストレートに肉体に響いてくる佇まい、語り、まなざし。

 

桃井かおりとやや近い存在感であるが、彼女よりももっとダウナー系で、「実存」の泥臭さが安藤サクラの魅力ではなかろうか。

 

稀有な役者である。感謝。