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桝鍵杉太はテレワークとは程遠い職業であった為に、この武漢肺炎が蔓延する首都東京の電車に乗って通勤していた。

さすがに時差通勤を行っていたので、乗り込んだ車両には桝鍵ともう一人の女子高生しか居なかった。

盛高遊子は学校が休みになって、暇すぎて親が家に居ろと言うのに反抗して遊びに出かける途中だった。

ガラガラの電車に乗るとそこにはハゲ頭のオヤジが座っていた。

何となく斜め前に座った盛高游子だったが、チラチラこちらを伺うオヤジの視線が自分のスカートから伸びる足に注がれている事に気が付いていた。

二人はどちらからともなく声を掛けた。

【あの~………寒くないですか?】

二人が指を指した先は………

桝鍵杉太は盛高遊子の太股。

盛高遊子は桝鍵杉太のハゲ頭。

一瞬で車内の空気が凍り付く。

寒さを耐えて二人は、そこからはそれぞれの降車駅まで無言であった。

二人の初めての出逢いである。

そしてそれが二人の別れであった。


オシマイ

☆参照文献 面白い話☆