Q&A3128 AZFc欠失で第一子出産、第二子で相談 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q AZFc欠失による重度乏精子症により顕微授精で第一子女児を授かっています。現在3歳半です。1歳を前に小児癌になり、治療後、寛解、5歳まで経過観察中です。第2子を考えているのですが悩んでいます。

採卵時年齢31歳、4回採卵で顕微授精
1回目→採卵数33個、精子が確認できず、卵子凍結→転院後、精子回収でき、卵子融解、顕微授精、胚盤胞4個、正常胚1個(胚盤胞A)
2回目→採卵数18個、胚盤胞3個、正常胚0
3回目→採卵数15個、胚盤胞2個、正常胚0
4回目→採卵数12個、胚盤胞3個、モザイク胚1個(13番が1本20%、セグメントモザイクもあり、移植は△)、正常胚1個←第一子女児出産


31歳の時点で、胚盤胞到達率は低いので、現在37歳でもう1人授かるまでには複数回採卵が必要なのではと懸念しています。夫も49歳で、できる限り早くとも思っています。先生に伺いたいたいのは、胚盤胞Aを移植するか、もう一度顕微授精をするか、またはモザイク胚を移植するか、悩んでいる場合どれを勧めるかです。


①AZFc欠失の遺伝を避けるため、PGSをしました。これが娘の病気の原因なのではと自分を責めています。PGSのリスクについての記事も拝見しました。児への影響、特に小児癌とPGSの関連について情報はありますか。
②男児の正常胚盤胞が一つあります。第一子の病気のこともあり、AZFc欠失であっても産んでもいいのではないか(生殖機能以外は分かる範囲で健康であるということには変わらない)という気持ちもあります。先生のクリニックではAZFc欠失の患者さんに対してどのような治療を提案されていますか。
③胚盤胞Aの移植もありですが、PGSが児へリスクに少しもつながっているなら、男児へ遺伝する覚悟をもち、もう一度顕微授精(PGSなし)をした方がよいかとも思っています。

また、私たち夫婦のような場合にPGSは適用されないことも十分承知し、病院には無理をお願いしました。しかし、娘の病気のこともあり、元のクリニックの先生に伺うには失礼なこともあるかと、こちらで質問させていただきました。

 

A PGSとありますが、PGT-A(染色体の本数の検査)なのかPGT-SR(AZFc遺伝子の検査)なのかが不明ですので、回答は一般論になります。おそらく、PGT-Aで性別を開示しているものと推察しますが、日本産科婦人科学会では、性別の開示を認めていません(この場合は、アンダーグラウンドでのPGSになります)。

①小児癌とPGS(PGT-A)の関連の報告はありません。
②当院では、PGS(PGT-A)を実施していませんので、AZFc欠失の患者さんだからといって特別な提案はしていません。
③PGS(PGT-A)の出生児へのリスクは報告されていません。

 

下記の記事を参照してください。

2021.10.21「PGT胚移植の周産期予後:メタアナリシス

2021.4.9「PGTのバイオプシーによるマイナス効果はあるか?

2021.2.10「PGT-Aの母子への影響は?

2019.6.23「☆PGD実施後の5歳児の発達調査:その2

2018.11.28「PGD実施後5歳児の発達調査

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。