Q&A3185 42歳、AMH 0.5、化学流産2回 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 晩婚で40歳から妊娠を試みて今は42歳と半年です。簡単な不育に関する血液検査、子宮のチェック、卵管が詰まっていないかなどは検査済みでわかる範囲では問題なさそうでした。ただAMHは0.5くらいと低く、夫の精液検査の結果もあまり良くないです。でも今まで特に治療はしていませんが、2度ほど確実に化学流産をしたので(血液検査も受け確認しました)、着床は不可能ではないようです。

不妊治療に対する助成金の有無は43歳未満となっていますが、それは43歳だと体外受精をしても自然に任せても確率はほぼ変わらないからだそうです(5%くらいだとか)。またクリニックによっては43歳だと体外受精は無駄だと勧めないところも多いと聞きました。治療や体外受精によって効果が見込めるタイプの不妊要因の場合やAMHが高い場合などは43歳でも治療を試す価値があると思います。また、もっと若いときに採卵した受精卵を凍結している場合などは年齢にかかわらず十分に希望があると思います。でも私のような場合は43歳で体外受精を試す価値はあまりないでしょうか。私の年齢的な要因や低AMHなどはどうにもできませんが、夫の精子の状態もよくないので顕微授精などで少しは可能性が上がりますでしょうか。

リプロダクションクリニックは40代の不妊治療にも強いと聞くので試してみたいと思っていて、そちらで何度か体外受精をするお金を貯めています。でもAMHも低いので採卵の結果もあまり見込めません。せめて40歳の時に採卵しておけばよかったと後悔しています。世間での不妊治療において線引きとなる43歳という年齢になかなか希望を持てずにいます。

また、イノシトールについて聞きたいのですが、採卵の3か月前くらいから服用するのが一般的と読みました。でもちょっと都合の関係ですぐに採卵に行けない場合などは3ヶ月間に限らず採卵までずっと服用を続けていても支障はないでしょうか?卵子の改善などに効果があると聞くので今からでも服用したいなと思っています。

 

A 不妊治療に対する助成金が43歳未満となっているのは、費用対効果を考えてのことであり、海外の保険適応の事例を参考に設定されたようです。税金を使う限りは、成功率が重要なポイントになります(投資に見合ったリターンがないと投資できません)。日本産科婦人科学会の統計では、43歳の体外受精の臨床妊娠率(胎嚢確認)は16%です(凍結胚移植)。一般的に、体外受精の1/4が人工授精の妊娠率であり、人工授精の1/2がタイミングの妊娠率になります。したがって、43歳の人工授精の妊娠率は4%、タイミングでは2%となります。したがって、「43歳だと体外受精をしても自然に任せても確率はほぼ変わらない(5%くらい)」という説明は正しくありません。おそらく、体外受精をしないように(させないように)という思惑からの発言だと思います。リプロダクションクリニックでは年齢制限を設けておりませんので、45歳以上の方も常時100名ほど通院されています。42〜43歳で通院されている方は、それよりもずっと多く、妊娠率という観点からは43歳は決して低くないという印象があります。例えば、リプロダクションクリニック東京で採卵される方は1日10名程度ですが、40代後半4名、40代前半4名、30代後半2名という比率です。諦めるのはまだ早いと思います。

 

イノシトールに限らず、妊活サプリは1〜3ヶ月使用して効果が最大になるものと考えられています。これは、卵子が作られる過程で、卵巣の外から影響を受けるのが、最後の3ヶ月間だからです。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。