Q&A3184 海外在住、体外受精で受精障害? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 年齢:妻31歳、主人35歳AMH 4.02ng/ml生理周期28日、生理痛無し、量少な目


初回採卵での結果は、採卵は出来てもほぼ胚盤胞まで育ちませんでした。先生からは、次回は全て顕微授精をした方が上手くいくと言われていますが、夫婦共に顕微授精をあまり望んでおりません。

採卵の翌日、未授精の卵子の周りに精子が付いた状態とはどういう事が考えられますでしょうか。担当医の考え方としては、遅れて受精した4つは正常受精とカウントしておらず、私の受精率は悪いから顕微授精にした方がいいと言われています。確かに採卵の翌日の時点では受精確認出来ませんでしたが、その後受精し成長しています。しかしながら、遅れて受精した4つの成長率が、先に受精した卵子と比べて悪いのも確かです。遅れて受精したから成長率が悪い=顕微にした方が良いのでしょうか。私の中で成長率の悪かった受精卵は卵子か精子が良くなかったから、という理由であって、それらを顕微授精したところで有望な受精卵に育ってくれるのか?と考えてしまいました。我々夫婦にとって本当に必要であれば顕微を選択しますが、疑問が残っている現状です。最終的に分割胚を移植しましたが、妊娠には至らず、担当医からは4CC胚盤胞は移植せず、採卵した方が良いと言われています。

生理3日目からクロミフェン1錠を10日間服用5日目HMG150、7日目HMG150、9日目HMG150、10日目HMG150、11日目HMG225、12日目HMG225、14日目採卵、合計12個(成熟卵子8個、未成熟4個)体外受精(ふりかけ法)で、成熟卵子8個(正常受精3個、遅れて受精4個、未授精1個)遅れて受精の4個に関しては、採卵の翌日時点で病院より「受精していない、卵子の周りに精子が付いた状態の為、レスキュー対応も出来ない」と言われました。経過観察した結果、受精には至りました。
正常受精3個→3日目分割胚8G2凍結、胚盤胞4CC凍結、5日目で成長停止
遅れて受精4個→3日目で成長停止(2G5と2G5)、5日目で成長停止(3日目の時点で4G3と5G3)

精液所見
・精液量:4.0ml
・精液濃度:9800万/ml
・運動率:62%
・奇形率:93%

 

A 体外受精が良い方、顕微授精が良い方、どちらも同じ方がおられますが、どちらが良いかは実際に行ってみなければわかりません。31歳の女性としての今回の培養成績は良くないと思います。受精率がどうこうではなく、結果的に培養成績が良くない場合には、違う受精方法をお勧めするのがセオリーですので、私も次回は顕微授精を取り入れることをお勧めいたします。

 

また、遅れて受精というのが、どのようなものだったのか確認が必要です。正常受精は2PN(雌雄前核2個)ですが、0PNや1PNは発育すれば問題ありません。また、3PN以上は異常受精になります。受精確認時に未熟卵のMIやMIIだった場合には、その後発育したとしても、未熟だったために遅れて受精したことになります。未熟な卵子からの培養成績は良くないことが極めて多いです。受精確認時にどうだったのかの確認が重要なポイントです。もし、未熟卵が多かったのでしたら、成熟対策(ダブルトリガー、1時間早く、採卵後方移動など)を行い、今一度体外受精を目指すのもありですが、何も改善策を行わず全く同じ採卵を繰り返すようでしたら意味がありません。

 

なお、体外受精で未授精の卵子の周りに精子が付いた状態は、普通の状態です。精子は卵子の周りに集まって卵子に結合する性質があるからです。正常受精した卵子も周りに精子が付いた状態です。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。