Q&A3339 aCL-IgMについて | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 不育症検査結果で異常があった項目は下記です。
・TSH 2.75→チラージン服用
・aCL-IgM 8.1(基準値<8)

①aCL-IgMが基準値よりわずかに高い場合も、ヘパリン注射が必ず必要でしょうか。
②aCL-IgMが基準値よりわずかに高い場合においても、ヘパリン培養が必要ですか。まだリプロでの採卵経験はありません(一度他院で採卵し、成熟卵8個に対し顕微授精し6個授精し3個胚盤胞でした。重度男性不妊のため全て顕微授精になります。移植経験はありません。)他院の受精卵を移植するより先に、リプロでの採卵を考えています。
③aCL-IgMが高い方は、どのくらいの割合(%)いるのでしょうか。
④aCL-IgMは、どのような抗体ですか。

 

A 抗リン脂質抗体は、リン脂質に結合する物質であり、カルジオリピンをCLと略しています。抗リン脂質抗体が全ての方の妊娠にマイナスに作用するわけではありませんので、流産や化学流産を繰り返す(あるいは反復着床障害)の場合に初めて治療を考慮します。抗リン脂質抗体があっても、悪いことが何も起こらない方もおられることを頭の片隅に置いてください。したがって、

①②aCL-IgMが基準値よりわずかに高い場合に、ヘパリン注射やヘパリン培養が必ずしも必要とは限りません。
③aCL-IgMの陽性率は、一般集団では不明です。さらに、疾患別(どの集団で検査したか)や測定方法(どの検査センターで検査したか)でも陽性率が異なるため、一概に何%とは言えないのが現状です。
④aCL-IgMはカルジオリピンにβ2GPIを介して結合するIgM抗体です。しかし、細胞膜にカルジオリピンは存在しませんので、陰性家電リン脂質に結合していると考えられています。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。