森中定治ブログ「次世代に贈る社会」

人間のこと,社会のこと,未来のこと,いろいろと考えたことを書きます

戦争とプルトニウム

2022-12-06 15:55:33 | 人類の未来

10月16日にNHKTVの日曜討論で各政党の国会議員の議論を視ました。
冒頭、与党議員から「弱いあるいは自国を守る気がないとみられた国はいきなり侵略されることを、このロシア・ウクライナ戦争で我々は学んだ」との趣旨の発言がありました。これを与野党の全てが基本的な考え方として合意しているように私には見えました。

この主張はまさに「人を見れば泥棒と思え」の諺通り、国はハリネズミのような防備をし、常に構えていなければならないことになります。
人間は相手が弱いとみればいきなり襲いかかる野獣でしょうか。いや野獣でさえ、空腹時しか弱い動物を殺さないでしょう。では人間は野獣以下なのでしょうか。

私はこの主張は間違っていると思います。

この主張には、国は違っても、この地球に暮らす誰しもが喜怒哀楽を持つ同じ人間だという、人間についての理解が欠損しているように思います。その理解の上に、人間の信頼が築かれるのだと思います。人間とは何なのか。その理解の上で、初めて人類は戦争を捨てることができるのだと私は思います。常に最新の兵器でハリネズミのように防備しても、人類は戦争を終わらせることはできず、むしろ未来永劫戦争に苦しむと私は思います。

ロシアは自国が攻撃されれば核兵器の使用も辞さないと公言します。人類は現在、核戦争の縁に立っています。

10月24日、25日、26日、27日、4日連続で「汚い爆弾」(ダーティーボム)という言葉が、私がとっている新聞に出ました。おそらく他の新聞も同様でしょう。24日、25日はロシアが管理するザポロジエ原発をウクライナ軍が攻撃し、放射性物質の拡散を狙っているとの論調でした。西側諸国は、これはロシアの嘘だと言います。本当なのか、嘘なのか私にはわかりません。

26日になって内容が変わりました。
見出しは「米露軍トップ電話協議「汚い爆弾」意思疎通は維持」です。
これは原発が攻撃され、破壊された原発から放射性物質が漏れ出るというようなレベルの話ではないと思います。兵器として汚い爆弾をウクライナが使うとか、ロシアが使うとか、そのような話だと私は感じました。

この汚い爆弾はとても恐ろしい兵器です。言葉で言い尽くせないほど恐ろしい兵器です。
自然界でも放射性元素は種々あります。放射性元素を汚い爆弾の材料にするとすぐ失効したり、危険で扱いが困難だったり探知されやすいとか、難点がたくさんあります。でも都合のよい放射性元素もあります。プルトニウムです。

現在の原発の燃料であるウラン235の3万倍の力を持ちます。わかり易く言えばプルトニウムの微粒子1粒が鼻から肺に入るのと、ウラン235の微粒子3万粒が鼻から入るのと、計算上その力は同じになります。コソボやイラクで奇形児が生まれたり白血病が出るのは、劣化ウラン弾のせいだと言われます。戦車の装甲を貫く劣化ウラン弾、爆発によってでき空気中を漂うこの劣化ウランの微粒子が体内に入ったせいだと言われます。劣化ウランはほぼウラン238でできていますが、プルトニウムはこの19万倍の力価です。

しかもプルトニウムの放射線はアルファ線で空気中を5cmしか飛ばず、探知ができません。核爆弾のように高純度に精製する必要もありません。
もしプルトニウムの1ミクロン以下の微粒子をドローンで都市上空で撒けば、その都市は死の都市となります。半減期は24000年、万年の単位で地球を汚染します。恐ろしい兵器です。

Wikipediaに詳細が出ています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9A%E3%81%84%E7%88%86%E5%BC%BE

Wikipediaでは、放射能兵器とか放射能爆弾という用語が使われていて、それが核兵器なのか通常兵器なのか明記されていません。
私は、もし汚い爆弾にプルトニウムを使えば、プルトニウムは核弾頭なので、これは核兵器だと考えます。でも汚い爆弾は、核分裂によって瞬時に爆発する核力を解放する爆弾ではありません。だから汚い爆弾は通常兵器の一種という考え方も出てくると思います。

汚い爆弾についての協議とは、このようなことを協議をしたのではないかと、私は推察します。米国はロシアを世界的な悪と叫び、高い戦闘力を持つ通常兵器をウクライナに供給しています。そのためにロシアは苦戦しています。この汚い爆弾を通常兵器と考えれば、米国やNATOからのウクライナへの高性能の兵器供給に対して通常兵器同士で対等に戦えます。米国がロシアに対して急に軟化し、和解を求めるように変わってきたのは、こういうやりとりがあったのではないかと、そんな気もします。

先に示したWikipediaでは、実際に汚い爆弾の使用が計画された事例が出ています。日本でも、2015年4月にドローンが首相官邸の屋上に落下した事件がありました。所有者は不明で放射線のマークがついていたそうです。私には意図が感じられます。同年にワシントンのホワイトハウス敷地内にもドローンが落ちています。オバマ大統領も2016年の核セキュリティーサミットの演説で汚い爆弾について言及しました。2日前の12月4日には沖縄那覇空港にドローンが飛行したと、新聞に出ました。

今のままの状態で放っておけば恐ろしいことが起きると思います。戦争と同じく起きてからではなく、起きる前に対処すべきです。汚い爆弾はすでに公知の事実であり、我々平和を望むものは核についてもっと敏感さと深い理解を持つ必要があると思います。

今現在、我々人類は、人類の未来まで汚染する核戦争、その縁に立っています。
人類は戦争をやめる時が来ています。

プルトニウムは人類史上最悪の物質だと私は考えます。
プルトニウムは現在の自然界にあるものではありません。
人類が生み出したものです。
プルトニウムを生み出したのが人類なら、人類はプルトニウムをこの世から消滅させる責任があるでしょう。
その責任があると私は思います。

核兵器廃絶運動を推進するのであれば、まずこの汚い爆弾が核兵器なのか、それとも通常兵器なのか明確にする必要があります。核兵器を廃絶することができても、その代わり弾頭のプルトニウムが通常兵器として汚い爆弾へとシフトしたら、地球の未来は何万年も恐ろしい放射性物質で汚染されることになります。核ミサイルが飛んできて爆発する以上の恐ろしさを私は感じます。

核兵器廃絶運動というなら、プルトニウムをこの世から消滅させる運動をやらねばならないでしょう。鋼鉄やアルミやその他の金属、プラスティックなどでできたミサイル本体やミサイルの発射台を廃絶しても、弾頭のプルトニウムが残れば意味がありません。核兵器廃絶運動によって核ミサイルは無くなったけれども、弾頭のプルトニウムは通常兵器に衣替えしたのでは、より悪いと私は思います。端的に言えば、核兵器廃絶運動とはプルトニウムをこの世からなくす運動だと言えるでしょう。

ところが、ウラン235を燃やす現在の軽水炉原発でプルトニウムはいくらでもできてきます。
人間は電気が欲しいだけです。
ただ電気を得るために、こんな恐ろしいものを生み出す必要があるのでしょうか。
プルトニウムは人類が原子炉で作り出したものです。原子炉で作り出したものであれば原子炉で消滅させることができます。
その時の熱を利用して電気を起こす、つまり原発にするかどうかは、冷静に考えてみる必要があると私は思います。

もう10年以上も前ですが、スウェーデン社会についての研究会で古川和男先生という液体金属や原子炉の専門家に出会い、プルトニウムができない原発って知っているかい?と問われて・・、私は全く知らなかったのです。それどころかその原子炉でプルトニウムを消してしまうことができるんだよと聞きました。そして本を書きました。もうずっと前、東日本大震災の前のことです。今年になって絶版になっていた私の本を電子書籍にしたいという申し出があってごく最近電子書籍になりました。そしたらそこがYoutubeも作ってくれました。

以下に要約されています。

https://www.youtube.com/watch?v=avj2xbZJL7g&list=RDCMUCLoKVNpZfI9ozZSORdX2_fg&start_radio=1&t=4s

10月14日の新聞に出た中畑流万能川柳の一つです。
「無防備で子らが眠れる国であれ」 姫路 ダイキン前

冒頭に戻りますが、日本の未来を担う政治家が、このロシア・ウクライナ戦争で他国に対して常にハリネズミであらねばならないと学んだとしたら、私は間違った学びをしたと思います。

相手に弱いと見られたからいきなり侵攻されるということはないと、私は思います。侵攻の前に両国の永い関係があるのです。戦争の種蒔き、芽吹き、そして成長があり、そして一番最後に戦争という死の花が咲くのです。
このことを理解すれば、戦争になる前に対処ができます。
それしか人類は戦争を廃絶する道はないと、私は思います。

「国は違っても、この地球上の誰もが喜怒哀楽を持つ同じ人間」です。この言明に対する深い理解が根底にあれば、先に掲載した川柳が地球上のあらゆる国の間に、個々の人間の間にできると、私は確信します。

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