祖母は、明るく前向きな人で
普段から、
愚痴らしい愚痴を言わない人だった。

入院中の祖母を見舞いに来てくれた
祖母の友人は、
「あなたのおばあさんは、凄いのよ。
お姑さんやお舅さんと同居だったし
色々あっただろうにね、
嫌ごとを言っているのを
私は、一度も聞いたことがないの。
でも、私の愚痴はいつも聞いてくれてね。
励ましたり慰めたりしてくれてたのよ。」
そう言っていた。

祖母は、優しい人だった。
そして、芯の強い人だった。

祖父は完全に尻に敷かれていたけれど
祖父が堂々と振る舞えるよう
お膳立てをし、
自分は陰に徹するような人だった。

人前で、祖父の評判をさげるような
発言は一切しなかった。

そんな祖母が
私に常々言っていたことがある。

「おじいちゃんと喧嘩するとするでしょ。
頭がカーッとなってもね、
どんなに腹が立っても
毎朝きちんと笑顔でお見送りするの。

朝、おじいちゃんが家を出て、
姿が見えなくなるまではね、
絶対文句は言わないの。
その間は我慢するの。

その代わり見えなくなってからは
『なにくそ!』と、家の中で
すごく怒ったものよ。アハハ。」

「仕事に行く前にね、喧嘩して
むしゃくしゃしたらね、
そのことに気をとられたおじいちゃんが
途中で怪我でもしたり
事故でも起こしたら大変でしょ。
だからね、朝は気分よく出勤してもらうの。
これだけはね、
おばあちゃんずっと気を付けてきたの。」

このさじ加減が非常にうまく、
祖父のやる気を上手に引き出す人だった。

この祖母だからこそ、
やや気難しい祖父の相手が
務まったのだと思う。