壊れゆく日本の資本主義 | 上海で頑張ってる人を応援する!

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池田信夫氏の「グローバル資本主義はユニクロ化する」と、津上俊哉氏の「内田樹教授の寄稿「壊れゆく日本という国」について一言」を拝読して、グローバル化について考えさせられました。


(1)グローバル化は世界を豊かにするか

我々の生活の豊かさは、エネルギーにより支えられています。
我々の快適な生活には、エネルギーが必要で、電気、ガスを始め、移動、運輸、食糧生産など生活の隅々にまで、エネルギーの供給が必要です。

物質的豊かさ = エネルギー供給 × エネルギー効率 

従って、エネルギー供給を増やすか、エネルギー効率を改善するかしない限り、世界全体の物質的豊かさは増加しません。すなわち、我々の豊かさは、自然からの収奪によって支えられています。

一方、グローバリゼーションは、エネルギー供給を増加させず、エネルギー効率を必ずしも上げません。従って、自然からの収奪を増加させない限り、グローバリゼーションは世界を豊かにすることはありません。

しかし、企業の行動を考えると、人件費の安い新興国に生産を移管すれば、コストを下げることができ、グローバル化は収益の向上、競争力の強化に繋がります。
これは一見、上記の考察に反するように見えるが、生産の海外移管によって、雇用が失われ、直接的には国内での付加価値創造が失われます。その一方で、新興国の人たちの所得は、次第に上昇します。

従って、先進国に於けるグローバリゼーションの作用は、それを上手く利用する人たちを富ませる一方で、全体としては、新興国への富の流出をもたらすことになります。
つまり、グローバリゼーションは世界的な富の平準化と先進国国内の格差の拡大をもたらすのです。  


(2)グローバル化と雇用

よく聞かれる意見に「単純労働は新興国の人たちに任せて、先進国の人たちは、もっと創造的な仕事をすればよい」というものがあります。この意見を考察しましょう。

この意見は、次の2つの点で誤りです。
(1) 創造的な高スキルの仕事を出来る人材は、極一部しか存在しないし、必要性も薄い。
(2) 既存の需要の外側に、新たな需要がほとんど存在しない。


(1)については大学進学率(2-3年制の専門学校も含む)が80%にも達する韓国の状況を見れば分かります。
「就職難に苦しむ韓国の大卒者」を 見ればわかるように、韓国の家庭は極めて教育熱心で、大学生も非常に勉強熱心です。しかし、ソウル、高麗、延世といったトップ大学を除くと、新卒者の 中、正規雇用に就く割合は30%程度しかなく非常に低い。
サムスンなどの財閥系企業に就職するには数百倍の倍率をくぐり抜けなくてはならず、 TOEIC990点中800点以上でないと書類審査さえ通らないという著しい競争社会です。
韓国の場合、大学教育をしても意味のない層までが大学に行きミス マッチが起きています。過剰教育が問題なのです。

教育をすれば、能力を向上させることができるというのは、非常に限定的な意味でしか成り立たちません。

創造的な高スキルの仕事の出来る人材も、そのニーズも限られているのです。

「グローバルな競争に打ち勝つために、他の人の持たないスキルを身に付けるようにしよう」というのは正しいが、必要な規模でこれを行うのは不可能です。 

先進国では、製造業が衰退し、サービス業に雇用の中心が移っています。
しかし、実際に起きているのは、サービス業における過当競争と低賃金労働の蔓延です。

たとえばウォルマートやユニクロのように、低価格路線をとる小売業では、従業員を厳しい労働条件下に置き、取引先にコストカットを要求することが、競争に打ち勝ち、企業を拡大する原動力に なっています。
これは、労働者からの搾取に成長の源を求めざるを得ない状況だということでしょう。新たなフロンティアの枯渇の末、たどり着いたのが、こういっ たビジネスモデルだということです。

次に(2)について考えましょう。
地球の有限性が顕在化しエ ネルギー供給の拡大が望めなくなっている現在の状況では、先進国の製造業の衰退に伴って生み出される失業者が、何か新しい事業を起こすのが難しい。

これは、世界経済の規模が、エネルギー供給により規定されており、これを先進国と成長著しい新興国が分け合っているために、先進国の享受できる物質的な豊かさが、減少し続けるからです。
このような状況では、既成の需要の外側に新たな需要を見つけ出し、発展させるのは極めて難しい。

結局のところ、極一部の人を除いて、先進国の国民の生活水準はどんどん下がり続け、低賃金労働が益々蔓延することになります。


(3)それではどうなるのか

このまま、この状態を続けた場合、どのようなことが予測されるでしょうか。
エネルギー供給の見通しを考えると、現在は、供給量のほぼピークであり、2050 年に掛けて、世界のエネルギー供給は現在の3分の2まで低下するでしょう。
IMFも2022年の原油価格をおよそ1バレル180ドルと予測しているように、今後もエネルギー価格は上昇を続けるでしょう。

このような中で、世界経済、特に先進国は、経済成長が困難になることは間違いありません。現在、ユーロ圏では2年連続のマイナス成長になりつつあるが、こういったマイナス成長は、先進国全体に拡大するでしょう。  

現在、先進各国は、過激な金融緩和を続けていますが、これは危険な賭けであり、実際のところ、どのように収拾するのか、見当もつきません。
例えばFRBが出口 戦略を取り始めた場合を考えても、円が暴落したり、中国のバブルが破裂する、といった副作用が考えられます。かといって、このまま金融緩和を際限なく続け ることも、全く無理な話です。

従って、これから数年の中に、世界経済に不連続な変化が起きる可能性が高いでしょう。
成長の鈍化、ないし、経済の縮小が続く中で、過剰債務を抱える、先進各国が財政破綻を回避するのは難しいでしょう。

「BLOGOS」 より抜粋)


新しい所得の収斂(同一賃金化)は以下によって説明されます。

(A)グローバル化は、後発国がノウハウおよび技術を輸入し取り入れる過程を通じて、キャッチアップ戦略を生かした経済成長を促進します。
技術を取り入れることは発明よりずっと簡単です。

(B)人口増加のペースが遅い新興国および途上国の多くにおいては、その人口動態が資本集約度を向上させ、より速い一人当たり成長を促しました。
同時に、こういった国の多くで、労働力人口が全人口に占める割合がピークを迎え、黄金時代を享受しました。一方先進国では、特に欧州および日本において高齢者の割合が著しく増加しました。

(C)過去10年間に新興国・開発途上国で投資された所得の対GDP比率が、先進国の20.5パーセントと比較して27.0パーセントという高さだったことです。

投資は、農業などの生産性の低い部門から製造業などの生産性の高い部門への移行を促進することも可能で、それがキャッチアップ戦略を生かした経済成長を加速します。この要因で最も顕著だったのが中国です。


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