【取材記事】十徳日本酒販売所 小島拓也さん その1

こんにちは。Mamiです。
緊急事態宣言解除が見えてきましたね。大阪はまん延防止等重点措置へ移行になりそうですが、解除後は飲食店の営業時間短縮要請や酒類提供禁止の規制も緩和され、久々の飲み会や会食の予定を入れたり、営業を再開される顔馴染みのお店に足を運ぼうと楽しみにされている方も多いのではないでしょうか?私も気は引き締めつつ、大きな影響を受けている飲食店を応援したいと思います!

実は先日、コロナ禍の酒類提供規制にも負けず、需要をうまく取り込んでいるお店を取材させていただきました。今日は、その取材記事の前編をお届けしたいと思います。

今回は、大阪府吹田市で酒販店「十徳日本酒販売所」を経営されている小島拓也さんにお話を伺いました。

十徳日本酒販売所は、2020年4月7日、第1回目の緊急事態宣言が発令された日にオープンしました。昔ながらの酒屋のイメージとは異なる、とても洒落た外観の日本酒専門酒販店です。今回は、そのビジネスモデルから、日本酒への熱い想いまで、いろいろなお話を伺いました。

▼十徳日本酒販売所というお店について

SAN :とても洒落た内装ですね。

小島店主:ありがとうございます。商工会議所で紹介いただいたデザイナーと建築士の方に設計から施工、店名やデザインまで、全てをお願いしました。日本酒ということで和のイメージで統一されているそうです。

SAN:こんな素敵な酒屋さんで、専門家からマンツーマンでレクチャー受けられるのはすごくお得に感じます。

小島店主:お客さまそれぞれに求めているお酒を買ってもらいたいので、お酒選びに必要な情報提供をしっかりできるように、いつも心掛けています。酒屋としては当たり前の仕事ですが・・・。

特に日本酒は、銘柄を選ぶためにお手伝いが必要な商品なのです。まず、種類が多いし、ラベルに書いてあることの意味がわからないとか。そういうことがたくさんありますから。そういうお酒のことを気軽に聞ける酒屋を目指しています。そこができていないと、ただの小売店になってしまいますから。スーパーとかディスカウントストアを競争相手としてみて言っているわけではなくて、単に酒屋ってそういうものだという風に考えています。

SAN:お客様はこちらのマンションの方が多いですか?

小島店主:そうですね。やっぱりよく来ていただきますね。(ここに店を出して)一番嬉しかったことは、マンションにお住まいの方が、「この店のおかげでマンションの価値が、100万円上がった」って言ってくださったことですね。他にも「家の冷蔵庫大きくなったわ」とか、「自分専用の冷蔵庫ができた」とか、そういったお声をたくさんいただき、とても励みになっています。1年間やらせていただいているのも、みなさんのおかげです。

SAN:マンションや近隣の方に来ていただくための対策について教えてください。

小島店主:チラシが一番効果はあったんですけど、それよりも、一番は、夜遅くまで開けていることです。今は、21時まで開けているのですが、住宅街にそんな遅くまで開けている酒屋はとても少ないんです。だいたい19時くらいで閉まるんですよ。本当は、午後からやりたいんですけど、今は、店番から配達まで自分ひとりで全てやっているので、できなくて。もう少し売上が増えたら、昼の店番を用意して、昼から夜までやっていて、気軽に買いに行ける状況を作りたいです。

いろいろなお酒飲んだ上で日本酒を飲まないっていうのは全然いいと思うのですが、日本酒を飲んだことがないのに、なぜか日本酒を飲まないっていう人をゼロにしたいのです。家に当たり前に日本酒があるっていう状況を作りたい。「寝る前の一杯を自分の好きな日本酒で締める」っていう感じで、「いい日本酒を各家庭の身近に」したいというのも当店の目的の一つです。

SAN:それで住宅街なのですね?

小島店主:そうですね。この辺りは特に、近所に日本酒を買えるところがないからですね。遠出して酒屋に行く人って、よっぽど日本酒を飲む人だと思います。口コミを聞いて、時々、遠方から来てくださる方もいるのですが、日常に日本酒があるようにするという意味で、遠くから来てもらうくらいなら、酒屋がない地区に出店したいです。ここからどうやって売っていこうっていうよりも、そこに出店すると思います。

SAN:まさに「日本酒を身近に」ですね。

小島店主:実は、吹田とか北摂にもいい酒屋があるのですが、それが知られていないので、「どこでいいお酒が買えるのか」っていうことも発信していきたいです。それは、競合の宣伝というより、日本酒のすそ野を広げるという意味です。現状のパイを食い合わず、日本酒を飲む人口を増やすんです。日本酒ブームって業界は騒いでますが、業界以外の人は何も騒いでないんです。斜陽産業です。でも一方で、お酒の質はずっと上がり続けています。だから、若い人に飲んでもらえる企画をするのが一番だと思います。知り合いでもそういう取り組みを企画している人がいるので、一緒に動いていきたいなとも思っています。日本酒自体が本当に狭い業界なのでどっかが抜きん出るよりも、皆ですそ野を広げていかないといけないと危機感を感じています。

最近は、「うちは、自分が作りたい酒を造る」という若手の蔵元さんなんかも出てきているので、今後がすごく楽しみです。

▼日本酒のことを詳しく教えてください。

SAN:日本酒には、賞味期限や定価というのはあるのでしょうか?

小島店主:基本的には賞味期限はありません。でも、当店の基準でおそらく大丈夫というものだけを店頭に常温で並べて、劣化が気になるものは冷蔵庫で保管しています。店内もできるだけ温度を低くするようにし、人間ではなくお酒優先で室温管理をしています。更に言うと、味の変化を防ぐため、売れる前に僕が飲んじゃうこともあります(笑)

売価については、メーカー希望小売価格というものが設定されています。それよりも高く売る分には問題ないと思いますが、うちには、高く売る理由がありません。というのも「日常的においしい日本酒を飲んでもらいたい」という思いでこの店を始めましたので、できるだけ価格は抑えておきたいのです。さすがにスーパーや量販店さんのような価格設定は難しいですが・・・。その分、「どのようにしたらお客さんそれぞれに合うお酒を買ってもらえるか」ということをいつも考えています。

そして、店売りも外売りも同じで、配達料も取っていません。配達料を取らないのは、使いやすい酒屋を目指していたのが一番の理由です。

SAN:これだけ手をかけて販売するには、それに見合うだけの利益が必要だと思いますが。何か工夫はしていますか?

小島店主:いいえ。特に仕入れ値の交渉などもしていません。「酒蔵にもちゃんと儲かってくれないと困るし、やっぱり0から1、無から有を生み出している人たちが、一番偉い」と考えているからです。そこをきちんと、当たり前に伝えるためにも「うちみたいなお店が必要なのかな」と思っています。

▼飲食店とのかかわり方

SAN:コロナが収束したら、営業活動スタートですね。

小島店主: コロナが終われば、自分の顧客をしっかり作っていくつもりで、エリアは、本町通りまでと決めています。お店をここにしたもう一つの理由に新御堂筋まで近いというのもありますから。「一升瓶2本から行きますよ。明日行きます~!」という感じで、今は、当日注文・当日配達でしています。もちろん効率的ではないのですが、まだ、まずは、顧客軒数を確保していく時期だと考えています。注文をしやすい酒屋を目指し、うちに注文するっていう習慣をつけてもらうことを大切にしています。ですから、品ぞろえだけではなく、フットワークの軽さも売りにしています。

大阪市内の競争は激しいので、営業活動は簡単ではなりませんが、うちにしかないっていう酒もありますし、なんとかできると考えています。営業では、「こういう銘柄を取り扱ってます」というリストをお渡してして、そこで、興味を持ってくださって、話が弾むようなところはそのあと、継続的な取引になりやすいです。

飲食店の店構えやメニューを見れば、買ってもらえそうか、時間がかかりそうかは、たいていわかりますね。でも、一方では、日本酒に興味のないお店に取ってもらって、お店全体を変えたいという想いもあります。例えば、ナショナルブランドのお酒しか置いてないような居酒屋さんに対して「今のお酒と同じような値段で、ほんとに良いお酒がありますよ。」というような提案をしていきます。個人店さんに対して「お酒で特色を出しましょう」という提案が通ったら、全部のお酒が変わるので、売り上げ的にも大きいです。そういうところは、お料理のメニューまで変わりますので、すごくやりがいがあります。

SAN:お店も外販もお一人では相当ハードなのでは?

小島店主:創業計画の上では、売上の70%を飲食店にしようと思っていたので、特に大変な感じではないですね。飛び込み営業は苦じゃないですし。やっぱり好きなものを売っているからだと思います。

とはいっても、以前勤めていた酒屋は超有名店だったので、飛び込み営業でも話は聞いてもらいやすかったのですが、その時と比べると大変な面はあります。でも、まずは、この地道な作業を続けていけばよいとわかっていますから。その先にはきっと何か必要なことがあって、それが見えてくるんだろうなと考えています。

そういう地道な活動でお客さんが増えてきたら、効率のことも考えていくつもりです。でも、まずなによりもサボらないことです。飲み過ぎないようにすることですね(笑)

SAN:毎日そんなに飲んでるんですか?!

小島店主:そうですね。21時に閉店して、だいたい22時半くらいまでここで飲んでいますね。一人で飲んで、このお酒たちを見て「我ながらいい酒を置いてるなぁ」ってにやにやしているんです(笑)


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執筆者

Mami|中小企業診断士
経理業務を中心に、総務、営業事務など中小企業のバックオフィスのサポート業務全般に従事してきたゼネラリスト。”毎日楽しく笑顔で”がモットー。


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