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June 16, 2021

2021/6/15講演 個人通報制度の導入と国内人権機関の設置(講師 泉徳治)

個人通報制度の導入と国内人権機関の設置
泉徳治
2021/6/15



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個人通報制度の導入と、国内人権機関の設置についてお話をさせていただきたいと思います。

最初にもとにおいて個人の人権を国際的連帯2で補償するという枠組みがございます。

個人通報制度と国内人権機関と申しますのは、この枠組みの柱の改めて申し上げるまでもございませんが、

世界大戦前におきまして、個々の国民の人権は、これは国内問題であると、

それぞれの国の憲法と法律で保護する建前になっておりました。しかしながら、

第二次世界大戦におきまして、それぞれの国の権力が暴走いたしまして、

個人の人権が悲惨な目にあった。

日本におきましても戦前の姿を思いうかべていただければ一目瞭然であろうと思います。

どうしても。それぞれの国の憲法と法律だけで守るには限界があるということで、

国際連合の元で個人の人権の保護に当たるという建前をとったわけであります。

1948年に国連総会で採択されました世界人権宣言は、個人の人権を承認することが

世界の自由、平和の基礎であるということを宣言いたしております。

そして、国連憲章の第1条は 国連の目的の一つは人権、言語または宗教よる差別なく

全てのもののために基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、

国際協力を達成することというふうに規定しているわけでございます。

しかしながら、国際連合のもとにおける個人の人権保障、国際的連帯につきまして、

我が国では、やや誤解があると、私は感じております。


まず最初の誤解ですけれども、国連は国際間の平和と安全の維持を目的とする期間であって、

個人の人権に直接関与するというふうなこれは、今申しましたように完全な誤解でございます。

人権条約は、契約国家における国家間の合意であって、各締約国と

そこに住む個人との間の権利義務を直接規律するものではないという誤解であります。


これは、ちょっと、そうですね、人権条約の中には、

締約国間の権利義務だけではなくて、そこに住む個人の人権を直接規律する

日本の国内の裁判所においても、直接適用することができる、

そういう規定を置いているわけです。


我が国の3番目の誤解でありますけれども、我が国の憲法第三章は

国民の権利義務を定めており、人権条約で定めているような権利義務を

全てカバーしているから 憲法に反するかどうかを判断すれば足りるという誤解であります。

これは確認の裁判所において潜在的にこういう誤解があるようなふうに私は思っております。

確かにわが国の憲法は第3章におきまして、非常に広範な条項をもっております。

例えば、国民は、法のもとに全て平等である、個人の幸福追求権を保障する、

こういう規定がございますから、全ての人権を保障しているわけでありますが、

これはあくまでも消極的な規定でございまして 人権条約はさらに具体的な保障を

いたしております。

裁判所は当然 総則憲法の規定の他に、具体的な権利義務を適用していく義務があるわけです。


そこで、この人権条約の国際的な連帯の枠組みでございますが、

人権条約と個人通報制度、それからもう一つ、国内人権機関

この三つが国際的連帯による人権保障という枠組みを出してはいるわけです。


人権条約。これは先ほど申しました国連で採択された人権条約を批准して、

我が国でも適用する。効果があるものにするというものです。

それから 個人通報制度の導入ですが、

人権条約で保障された人権を侵害されたと主張する個人から、各条約の委員会、

これは各条約にその執行機関として委員会がございます。

その委員会に通報する、その委員会では、その通報は、正しいかどうか、

これについて審査をし、その審査の結果、委員会は、

国と個人へ見解を送付する。


見解と申しますのは、例えば、国連で 人権侵害が認められたとした場合には、

この国は侵害の救済のために効果的措置を取り、80日あるいは90日以内に委員会に

報告することと、こういう見解を主張します。

国は、この見解に応じた措置を取るという仕組みです。


もう少し具体的に申しますと、我が国の民法750条は、夫婦は、夫または妻の姓を称し、

どちらか一つに選択しなければいけないというふうになっております。

一方、女性差別撤廃条約におきましては、氏の選択に関する夫と妻の

同一の個人的権利を確保すると規定されております。

そこで、日本の民法750条が女性差別撤廃条約に反すると

日本の国内で最高裁判所で争っても、ということで、

そういう場合には、国連の女性差別撤廃委員会に通報することができる。

そして、委員会は審査して、民法750条が女性差別撤廃条約に反するのであれば、

しかるべき処置をするのであるという見解を奏する。

そして我が国は、それに対応するということであります。


もちろん見解というものは、法的な拘束力はありません。

あくまでも勧告的な性格しか持っておりません、という制度です。


これは、政治から独立した国家、例えば公正取引委員会のような独立行政委員会、

いわゆる三条委員会、そういう国家機関を作りまして、

その国家機関で人権条約の推進役を務める。

これは人権条約だけではなく、憲法でも保障された個人の人権に関しまして、

人権保障の促進、人権侵害の調査、救済、それから人権状況の監視、人権政策の提言、

それから国連機関などとの協力を築いていく役割を担うものです。


この三つが人権の国際的人権保障の国際的連帯の枠組みをなしているわけです。

それから、一般の柱である人権条約の批准、これはここに書きましたように、

自由権規約社会権規約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約、拷問等禁止条約、強制失踪条約、障害者権利条約という8本の条約を

現在のところ日本は批准いたしまして、

我が国でも効力があるものと先ほど申しました個人通報制度でございますが、

これはもちろん人権条約における人権保障を我が国内でも実効あるものにするためのものでありますけれども、

その他に、世界の人々と人権に関する価値感を共有する、こういう役割も持っているわけです。

自由権規約の場合に、締約国173ヶ国のうち、6割の116ヶ国もすでに導入しています。

日本は各条約の委員会から何度も導入するようにという勧告を受けています。

先ほど紹介ありましたように、外務省でも2010年に人権条約履行室を立ち上げて

導入の是非について検討を始めていらっしゃいます。

我が国は、国連における活動あるいは国際取引、国際仲裁、

これは国際救済を我が国で行うということでございますけれども、

そういった活動におきまして、世界の国々と価値観の共有をするということが大変重要です。

この点でもう少し具体的に申しますと、一つの例を申します。


第二次世界大戦後にヨーロッパの国々47ヶ国が人権を保障するということで、

よく問題にされるのが、先ほど紹介しました人権条約の6条です。

これは死刑における最も重要な犯罪について規定しております。

最も重要な犯罪というのは、ヨーロッパでは、例えば、

内乱罪のような特別な形を考えております。

例えば殺人、そういったものについて死刑を課すことができない。

これも価値観の共有が重要であることの一つの例だと思います。


ついでに申しますと、お隣の韓国では死刑制度そのものは維持しておりますけれども、

これは、今申しましたが、価値観の共有ではないかと思っております。


婚外子の国籍取得に関する差別は憲法14条に反する

これは婚外子の相続分差別は、憲法14条に反する、としたこういうふうな例はございますけれども、

人権条約違反の例はございますけれども、人権条約違反、そういう判断は

今のところございません。


そして最高裁の基本的原則は 冒頭に書きましたように、

人権条約違反は適法な上告に当たらないという判断をしています。


先ほど申しましたように、夫又は妻はどちらかの姓を

夫又は妻はどちらかの家を主張しなければならないという制度は

現在夫婦の96%が夫の姓を選択しているわけですが、

これは女性差別撤廃条約の 氏の選択、

夫と妻の同一の個人的権利を確保するという違反です。


こういう人権条約に反するという主張をした事件では

それについて、最高裁はここに書いたように、

上告そもそも上告に当たらないと言って門前払いをしているわけです。



ただ、高裁や地裁に参りますと若干積極的でございます。

例えば人権規約は、外国人被告人で日本語がわからない人は

通訳を無料で付けて貰う権利があるということを規定していますが、

事件の東京地裁におきましては、被告人に通訳料の負担を命じました。

そこで、東京高裁は被告人に通訳料の負担を命ずることは、

これは人権規約43条に違反するとして、判決を破棄したわけです。

これは人権条約を直接適用した好例でございます。

そのほかにも、人権条約が、当該訴訟当事者の個人的な状況、あるいは

社会権規約、子どもの権利条約、この趣旨を考慮して、

外国人の退去強制処分に関する法務大臣の裁量権の行使が違法であるとした

裁判例はいくつかございます。

ただし、これらの裁判例は極めて限られたものでございます。

極めて限られた他に、誤った判断をしておりまして

それが現在裁判例の主流になっているわけでございます。

ここに書きました「東京地裁平成20年1月17日判決」、

これは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負わず、

外国人を自国内にうけいれるかどうか、これをうけいれる場合にいかなる条件を付すかは

国家がその立法政策に基づき、自由に決定することができる。

退去強制処分に関する法務剤時の裁量権を制限しないとしています。

判決について、東京高裁は控訴しましたが、控訴棄却。

最高裁へ上告し、上告しましたが、上告理由に当たらないとして却下。


最高裁が裁量的に上告をうけいれるという裁量告を受理しないということで、

門前払いをいたしているわけでございます。


今の判断は完全に誤っております。

これは自由権規約の一般的意見の15でございますが、

ここでも自由権規約は外国人が締約国の領域に入り、またはそこに居住する権利を認めていない。

領域内に誰を受け入れるかは、原則として国家が決めることである。

しかしながら、Howeverなんです。

例えば差別の禁止、非人道的取り扱いの禁止、家族生活の尊重について考慮すべき場合など

一定の状況のもとにおいては、外国人は入国または居住を、今日中に関しても、

自由権規約による保護を受けることができる。

はっきりとしております。

もう一つ、そういうことで個人通報制度が導入されますと、

裁判所を一変させると思います。

裁判所は 人権条約違反の条約に正面から向かい合わねばならず

現在のように門前払いをするわけにはいかない

個人通報制度は ぜひとも必要だと 私は考えます。



3番目の国内人権機関の設置でございますが、これももちろん、

人権の保障というものを日本国内で実効あるものにするために

こういう国内で人権条約の実施を推進する推進役がどうしても必要でございますが、

そのほかに、世界の国と人権に関する価値感を共有するとという意味におきましても

必要でございます。

国連加盟国193ヶ国のうち、122ヶ国がすでに国内人権機関を設置しております。

人権条約委員会からは何度も日本は設置すべきであると勧告をもらっています。

日本でも2012年にこの人権機関として人権委員会を設置する法案が国会に提出されましたが、

これは国会の解散で、廃案になっております。

しかしながら、日本でも、いじめの問題、それから女性差別、障害者差別外国人差別、

ヘイトスピーチ、インターネットによる中傷、入管や難民問題など、

いろんな人権問題を抱えてます。

特に、児童生徒の年間の自殺、300を超えるという痛ましい状況がございますし、

インターネットによるヘイトスピーチ、それから中小、名誉毀損、

そういったことは毎日のように報道されています。

どうしても日本としては、人権機関が必要でございます。

特に、一番大事なのは身体の自由を拘束する施設、こういうところにおきまして、

公的な第三者による監視が必要です。

現在の法律では、「刑事施設視察委員会入国者収容所等を視察委員会」というものを作っております。

これは必要性を人権委員会が監視に当たるということが、

こういう施設の健全な運営を維持するにおいて必要ではないかと思っております。

私は、国際連合のもとで個人の人権を保障するこういうことの柱、

大勢の柱として3本の柱がある、国内人権委員会が設置が必要であると

改めて強調して終わりにさせていただきます。

どうもありがとうございました。







※泉徳治氏(82)について

近著は、この日の講演と直接関連のある「一歩前へ出る司法―泉徳治元最高裁判事に聞く」(日本評論社、2017)です。

2009年の最高裁判所判事退官後、弁護士となられました。

裁判官時代の過去の判決歴に、「2005/03/16、再審請求棄却決定に対する異議申立棄却決定に対する特別抗告事件」(いわゆる狭山事件第2次再審請求・特別抗告、裁判官全員一致棄却)があります。

4頁目/全7頁 でした。


今は、弁護士の傍ら、講演などで、最高裁判決の「間違い」をご指摘されていることを
本講演で、私は知りました。

崇高な精神であられると思います。





※狭山事件から50年目に当たる2013年6月13日、石川一雄さんが外国特派員協会で記者会見にのぞまれた時の画像です
eho

http://blog.livedoor.jp/higurashi/archives/865500.html
(左から、石川 一雄、狭山事件の被告、中山 武敏、狭山事件の主任弁護人,ニマルカ・フェルナンド、IMADR理事長)
反差別国際運動(IMADR)http://imadr.net/sayama-case20130610/







higurashi at 23:56│Comments(0)2021(令和3)年 

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