アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」(ネタバレあり)。の巻。 | 結月そらオフィシャルブログ「*そらいふ~No Create,No Life~*」

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世界と心のアイデンティティとアイロニーの歌。

 
そらです。
 
歳を重ねるほどに、ですよ。
青春ものって響きませんか。
 
うお座感想の前に「青春」を振り返る
 
正直、私は周囲の女の子に比べると、
コテコテの少女漫画にはまる経験が少なく。
たったひとつ、「恋愛カタログ」だけ、
なぜかこよなく愛していた気がします。
それはなぜかというと、高田くんが大好きだったから。
 
「ふしぎ遊戯」とか「美少女戦士セーラームーン」も、
ラブストーリーの濃い少女漫画だと思うのですけれども、
私が楽しんでいたのは世界観や設定、バトルや物語……
おそらく恋愛模様に正直に向き合ってこなかったなと、
思うわけです。
 
でも、結構な大人になってから、
少女漫画独特のラブストーリーに、
魅了されるようになった気がしますね。
 
思い返せば、ですが。
私は小学生の頃は男の子と遊ぶことの方がメインで、
ごっこあそびやゲームに夢中で、
恋だのなんだのって感じじゃなかったんですね。
 
ようやく好きになった男の子にチョコレートプレゼントしたら、
クラスみんなの前で投げ返されたんですよ。
そんな思いをしたので、心はボロボロでしたね。
 
そんな時に出会ったゲーム「アンジェリーク」でも、
大好きなマルセル様と相性サイアクで、
毎夜のように妨害されて、
会いに行くたび嫌な顔をされていました。
 
中学生にもなると、今度はいじめにあってしまったり、
高校は女子高に行ってしまったりで、
気付けば身近に、想像の余地もなかったんですよ。
創作世界で描かれる青春ですら。
 
でも、歳を重ねて、いざ結婚などもするとですね。
素直に向き合うようになるというか、
それが作り話であったとしても、可能性のひとつだったんじゃないかとか。
「あぁ、やりなおしたいなぁ」
「こんな恋愛してみたかったな」
「もう少し頑張ったら、こんな青春楽しめたんじゃないかな」
なんて、思うのです。
 
 
うお座綺麗に改変された物語

 

アニメ版「ジョゼと虎と魚たち」は、
同作の「もうひとつの可能性」でした。
原作では二人は同棲生活を送り、結婚するかどうかは未知数のところで終わります。
実写版では二人は別れてしまうんですよね。
 
綺麗ごとではなく、恋だの愛だのというのは、
障がいも学歴も家柄も、飛び越してしまう。
双方どちらかに致命的な問題があったとしたって、
のめりこんでしまうものだと思うのです。
 
人間なので、惹かれるときは惹かれるし、
疲れるときは疲れるんですよね。
ただ、情が深まるほどに、離れがたくなるから、
あるいは、情がこれ以上深まらないために、
その理由を「どうにもならない要素のせい」にするんだろうな、
と、思うわけです。
 
「ジョゼと虎と魚たち」が分岐した魅力って、
まさにそこにあるなと感じたのです。
 
実写版では、割とジョゼって自立しているし、
ダウナーで女性的な色気を醸し出していますが、
アニメ版では、自立から目を背けていて甘えん坊で、
無邪気な可愛らしさがあるんですよね。
 
アニメ版の良いところは、
時代の閉塞感の清涼剤になるべく、
方向性をシフトチェンジしたところかなと。
 
恒夫もジョゼも、夢がある。
夢を叶えようと頑張る恒夫の眩しさに惹かれて、
ジョゼも頑張ろうとするけれど、
祖母の他界を機に、現実を突きつけられ、打ちのめされて、
一時期は夢を断念して自立をする道に歩む。
 
いざ恒夫が夢を目指せないかも、という状況になって、
ジョゼは、自分の可能性を、
自分で握りつぶしていたことに気付くわけです。
そして、恒夫のために、そして自分のために、
ものすごく大きな一歩を踏み出すんですよね。
 
原作をもとに、かなりオリジナルに寄せた感じもしつつ、
私は……今は、これがいい。
これが観たかった!!!
と、心底思いました。
 
 
うお座ボンズさんの描く映像美
 
さすがボンズさん!!!
と思うのが。
まずアクションシーン!!!!!
 
序盤の車椅子がすごい勢いで走り降りてきて、
ジョゼが吹っ飛んで恒夫がキャッチ……巻き込まれるまでの一連。
そして恒夫が事故で吹き飛ばされるシーン。
さすがとしか言いようがない。
たとえ青春ものに位置づけられる作品であろうが、
手を抜きようがない、得意ジャンル……と思うほど、
これはもう
 
体感してほしい……!!!
 
それにかぎる。
 
あと、ボンズさんと言いますと、
語ると止まらなくなる「赤髪の白雪姫」があるんですけども、
恋愛における機微、表情の機微も素晴らしいのですよね。
あと、背景に使う色味の独特感。
 
空の色とフレアの使い方に注目して……!
 
それが意図されたものなのかはわからないのですが、
言葉で描き切れない場面で、
空の色やフレアの使い方が巧みなんですよ。
景色は言葉以上に心情を語る……。
 
撮影監督も監督も、双方異なるのですが、
もはやボンズさんのカラーなのか。
 
 
うお座アニメ版における「虎」とは
 
虎が割とソフトな描写になっていますよね。
もっと、異性の恐ろしい部分、世間の恐ろしい部分……
そういったものを巧みに描きこむと思ったのですが、
今回はとにかくジョゼが「向き合う」ことを主軸に描かれていて。
 
なるほど、と。
 
「虎」は確かに恐ろしく、怖い存在だけれど、
全ての「虎」が敵ではないんですよ。
それを見極めずに、ただ恐れていたら、
いつになっても一歩も踏み出せず、
そこに閉じこもるままになってしまうんですよね。
 
かといって、そのニュアンスは、
暴力的な面にせよ、性的な面にせよ、
はっきり描くのはこのご時世、なかなか厳しい。
 
全年齢をターゲットにするのならば、
とても良い落としどころと感じました。
 
 
うお座声のキャスティング
 
中川大志さんも清原果耶さんも、とても素晴らしかったです。
最近の俳優さん・女優さんは、声の演技も巧みですよね!
 
パンフレットを読んだら、
絵コンテで収録されたようなことを書かれていたので、
演技に芝居を寄せていった部分もあるのでしょうが、
だとしたら、とても素敵な作品になったのかな。
 
このアニメ映画の物語を実写化するのなら、
そのまま中川さんと清原さんで観てみたいかも、
と、思いました。
 
 
魚しっぽ魚からだ魚からだ魚からだ魚あたま
 
昔から愛されている作品ですから、
実写版の「ジョゼと虎と魚たち」を大いに期待している人にとっては、
豆鉄砲を食らうほどキラキラした物語になっていると思います。
でも、原作と、実写版で描けなかった、もうひとつの、ジョゼと恒夫の物語を、
心の底から見守ってほしい……!
です。
 
そら