みなさんこんにちは!
重要な選択肢を選んで解説していきます。
読んで考えるだけで択一・記述ともに実力がつきます。
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Q 正誤問題
AとBが建物を共同で所有し、Aがその建物の敷地を単独で所有している場合において、Aがその土地上に抵当権を設定したが、抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、その抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。
2011(H23)-30-5
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A 妥当でない
本問の場合、法定地上権は成立します。
よって、本問は不正解です。
事案を把握した後、要件にあてはめます。
1 事案の把握
① AとBが建物を共有
② Aが単独で土地を所有(土地はA所有)
③ Aが土地のみに抵当権を設定
④ 土地についての抵当権が実行され、土地のみ買受人Cが取得(建物はABの共有、土地はC所有)
2 あてはめ
要件1 「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合」
要件2 「土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至った」
(1) 土地についての抵当権について
事実①から③をみるに、土地に抵当権が設定された当時、土地建物共にA所有です(建物は半分B所有なので違和感があると思いますが、)。
そして、事実④で抵当権が実行され、建物と土地が各々別人所有となりました(建物はAB共有、土地はC所有)。
よって、法定地上権の要件を満たします。
(2) 結論の妥当性について
結論が妥当かどうか、検討してみます。
いつものように、抵当権者と落札者の立場になって考えますが、今回は抵当権に無関係な建物の共有者であるBの立場も考えてみます。
ア 抵当権者の立場
抵当権者(X銀行とします)は土地に抵当権を設定する際、法定地上権の成立を予測しています。
よって、X銀行は、法定地上権の負担がある土地の担保価格を限度として、Aへの融資額を決定します。
そして、予測通り法定地上権が成立するわけですから問題ありません。
イ 落札者の立場
落札者Cも、登記記録を見て、建物について法定地上権が成立すると予測します。
よって、土地は安値で落札されます。
ウ 抵当権に無関係な建物の共有者の立場
本問では、Aが融資を受けたいがためにA所有の土地に抵当権が設定されました。
そして、その返済が焦げ付いたがために、A所有の土地が競売されてC所有となりました。
このようなAの経済活動のために、たまたま建物の共有者であったBが不当な扱いを受けなければならない理由はありません。
そこで、Bの立場から結論が妥当かを検討してみます。
建物共有者であるBは、もともと土地の所有者であるAに対して何らかの土地利用権(例えば賃借権)をもっていたはずです。
そして、Bの力の及ばぬ所で土地が競売にかけられ、Cが楽札し法定地上権が成立しました。
つまり、Bは特に何もせずに法定地上権を手に入れたのです。
Bは不当な扱いを受けたわけではありません。
エ 結論
以上より、利害関係人に、その予測に反して不当な扱いを受けた者はいません。
当事者意思に合致した結果と言えます。
よって、法定地上権が成立するという結論は妥当です。
オ 応用(参考)
過去問では問われていませんが、本問の応用パターンがあります。
建物がA単独所有で、土地がAB共有の場合において、土地のA持分に抵当権が設定された場合です。
確かに、388条の要件は表面上満たします。
しかし、土地の共有者Bからすると、自身のあずかり知らないAの経済活動のために法定地上権が成立してしまうのは辛い所です。
これはBにとって、ふいうちです。
よって、この場合には法定地上権は成立しません(判例)。
なお、建物がA単独所有で、土地がAB共有の場合において、建物のみに抵当権
が設定された場合も同じ結論になります(この事例の判例は無いようです)。
まとめ
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建物の共有者の一人が土地を単独所有しており、土地のみに抵当権が設定され、競売にかけられた場合
↓
388条要件を満たすため法定地上権成立
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ではまた!