「ベイビー・ブローカー」　★★★～「万引き家族」の韓国版

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2022』の掲載にあたって」

「万引き家族」の韓国版 ★★★

ソン・ガンホ

カン・ドンウォン

ペ・ドゥナ

イ・ジウン

イ・ジュヨン

【あらすじ】

　借金取りに追われるクリーニング店の店主サンヒョンと、赤ちゃんポストのある施設で働く児童養護施設出身のドンス。2人は、赤ん坊を裏で横流しするブローカーの顔を持っていた。

　ある夜、若い女ソヨンが赤ちゃんポストに置いていった赤ん坊をこっそりと連れ去り、子供のいない家族に横流ししようとしていたが、翌日思い直して戻ってきたソヨンに稼業がばれてします。

　3人は成り行きから赤ん坊の養父母探しの旅に出ることに。一方で、サンヒョンとドンスを逮捕するため、刑事のスジンとイは、決定的な証拠をつかもうと彼らの後を追う―

【コメント】

　さて、今回劇場で鑑賞したのは、今や日本を代表する名監督・是枝裕和による待望の新作。しかも今回は日本ではなく韓国映画ということで、先日、映画芸術の祭典である第75回カンヌ国際映画祭で主演のソン・ガンホが見事本作で男優賞を受賞したことでも話題となった作品です。

　これほどの話題作、もちろん劇場で観ないわけにはいかないだろうと、6月なのに灼熱の太陽でクソ暑い中、さっそく「立川シネマシティ」に足を運んだ次第です。

　うむ、さすが是枝監督。いつもながらの派手な演出はない淡々とした静かなる映画ですが、観客の目を捕えて離さない展開と、明確に伝わってくるテーマと感動。韓国に舞台を変えても是枝節は微塵も揺るがない、見応えがあって、それでいて色々と考えさせられる作品でしたね。

　本作は所謂ロード―ムービー的な色合いがあって、赤ちゃんを横流しするベイビーブローカーの男2人と赤ちゃんを捨てた若い女が、育ててくれる親を探してちょっとした旅をするというもの。そこに、検挙しようとブローカーを追う刑事や赤ちゃんを取り上げようとするヤクザなんかも関わってきて、さあ最後どうなるか、というのが筋書き。

　とはいえ、スリリングな展開があるわけではなく、この旅を通してそれぞれの登場人物たちが思うこと、心情の揺れ動きなんかが交錯し合う様を静かに繊細に描いたドラマなわけです。僕は本作を観て、同じ是枝監督の2018年の名作『万引き家族』に類似性を感じましたね。設定や全く違えど、血は繋がらずとも芽生える絆や、それぞれが考える幸せというのが根底にある、言わば本作は『万引き家族』の韓国版と言っても良いのではないかと思いますね。

　もっとも、個人的には『万引き家族』のほうが面白いと感じます。本作も見応えはあったんですが、後半ちょっと退屈な場面が多くて、もうちょっと短く出来たんじゃあないかなとも思ったりしました。