差し歯、特に上顎前歯部の差し歯の審美性は、その人の笑顔さえ変えてしまうほどのインパクトがあります。

 

差し歯の審美性が悪いと、歯を見せて笑うことも出来ず、話をするときに手で口元を隠す人もいます。

 

差し歯の審美性でしばしば問題になるのが、歯や歯茎の色と、ブラックマージン(歯と歯茎の境目の黒ずみ)です。

 

 

初診時。前歯の差し歯の審美障害を主訴に来院。色の不調和とブラックマージン(歯と歯茎の境目の黒ずみ)によって審美的な問題を生じている。まず、完全な根管治療を行い、その後オールセラミッククラウンによる治療を行う。

 

 

差し歯になっている歯は、神経が取ってあることが多く、歯根そのものの色が暗く変色しています。

 

したがって、経年的に歯茎が痩せて退縮すると、差し歯の縁が黒く見えるようになります。

 

それから、被せてある材質もブラックマージンには大きく影響します。

 

金属を使用したメタルセラミックや、歯根の内部に入れるコア(土台)が金属であると、歯根の変色が起こりやすく、また歯茎も暗く見えます。

 

これらのことから、現在前歯部の審美修復はメタルフリーが一般的になっています。

 

 

また、歯とセラミッククラウンの適合精度が悪いと、歯茎が炎症を起こし暗紫色になって出血も生じ、やはり審美性に影響を及ぼします。

 

このため、精密なセラミッククラウンを製作するためには、型取りの際に歯肉圧排やシリコン精密印象などが必須となります。

 

 

治療後。歯肉圧排、シリコン精密印象を行い、オールセラミッククラウンを装着した。歯の色は両隣在歯と調和がとれ、歯茎の黒ずみも改善しているのが分かる。

 

 

上顎前歯部は、例え一本であっても、その人の顔の印象を決定づけるほどのインパクトがあります。

 

正しく治療を行えば、元の歯と見分けがつかないほどのクオリティーで審美性を改善することが可能です。

 

全ての手技を妥協なく行うことが、より良い予後を確かなものにするには重要となるのです。