国鉄民営化とは何だったのか? ローカル線建設と鉄道建設公団の誕生 | 鉄道ジャーナリスト加藤好啓(blackcat)blog

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福祉と公共交通の視点から、鉄道のあり方を熱く語る?
blackcat こと加藤好啓です。
現在の公共交通の問題点などを過去の歴史などと比較しながら提言していきます。
随時更新予定です。

東海道新幹線の建設は自前資金

 

国鉄は、東海道本線の線増として、東海道新幹線を建設します。

この新幹線建設に、世界銀行からの借款はありましたが、政府からの出資はありませんでした。

あくまでも、国鉄の自前の予算と借入金で建設したものでした。

また、建設費の高騰があって、当初予算の倍になったと言うことが問題視され、十河総裁が新幹線建設途上で退任することとなり、その後継として、国鉄監査委員長をしていた石田礼助氏が昭和38年、国鉄総裁に就任することになりました。

 

実は、東海道新幹線の建設は当時の世論も含めて非常に反対派が多く、当時の世論では新幹線など誰が乗るのかと言う意見が圧倒的で、作家の阿川弘之も、当時は新幹線建設に批判的で、世界4大馬鹿(万里の長城・ピラミッド・戦艦大和)を揶揄して海軍士官などで言われた世界3大馬鹿と言う言葉に引っかけて、新幹線もそこに並ぶものとなるとして言った言葉)と表現していました。

結果としては、新幹線は成功を収め、国鉄時代には赤字線にあえぐ国鉄にあって優等生として、国鉄を支えることになったのは周知の事実であり、JR東海が膨大な利益を上げ続けることが出来るのも、東海道新幹線の運営に携わっているからに他なりません。

 

新幹線建設でローカル線建設は停滞

当時の国鉄では、運輸省に鉄道建設審議会という組織があり、ローカル線の建設などを答申する組織があり、鉄道敷設法に基づき打診がおこん割れていましたが、建設の有無は最終的には、国鉄の判断によることとされていました。

当然のことながら、新幹線建設で少しでも、資金を確保したい国鉄はローカル線の建設スピードは遅くなります。

田中角栄は、東海道本線に続き、上越新幹線の建設をするよう圧力を掛けてきますが、当時の国鉄総裁十河は無視を決め込むことに。

後年、新幹線は東海道以外作ってはならぬと言ったと言うことを聞いて違和感を感じたことがあるのですが、これは田中角栄との確執があったからなのだろうなぁと納得した次第。
その後、田中角栄が大蔵大臣になると、鉄道建設公団を国鉄とは別に設立、鉄道建設を一手に引き受けさせることになりました。

余談ですが、上越新幹線は、田中角栄が推進したことはもちろんで、鉄道建設公団が工事を担当、東北新幹線も当初は仙台止まりでしたが盛岡まで延長させたのは、鈴木善幸の功績(鈴木は岩手県出身の代議士で、三陸鉄道設立も鈴木の誘導であった、彼も典型的な地方利益誘導形の政治家であったと言えます)

注記:田中角栄元首相(日中国交回復などの成果があったが、最近再評価が行われつつあるがその功罪は、改めて検証されるべきでしょう。
地方の発展に拘ったものの、国鉄とのパイプも太く、何かと介入していたこともある、国鉄分割民営化も一貫して反対していたのは、田中角栄であり、JR発足後も、数年後の見直しで、再度国有化されるのではないかと言う淡い期待もあったが、脳梗塞に倒れたことから、国鉄再統合の夢ははかなく消えたとも言われています。

 

鉄道建設公団の概要

昭和37年鉄道建設審議会の席上、下記のように発言されたことが発端であったと言われています。

昭和三十七年五月三十一日付の鉄道建設審議会はその建議の中でつぎのようにのべている。「鉄道新線の建設は、日本国有鉄道の公共的使命から、従来、その負担のみにおいて実施されてきた所であるが、独立採算制の立前から、とかく企業性の範囲内に制約され勝ちであって、これを積極的に推進し得ないのが実情である。しかるに鉄道新線の建設は一般国民に与える有形無形上の使命の増大と国家経済に与える効果の多大なるとに鑑み、国家的な政策上の見地から論ずべきであり、日本国有鉄道の企業的立場からのみこれを論ずべきではないことは明らかである。した、かって、この矛盾解決の方法としては、鉄道新線の建設を道路、港湾整備等と同様に政府の公共投資とする以外にないものと思料せられる。よって、今後の新線建.設については、政府が公共事業として、その主たる財源を負担すると共に、日本国有鉄道はその公共性の立場から、地方公共団体はその受益の立場から、それぞれ財源の一部を負担するを適当と認める」とし、「これを積極的に推進するため日本国有鉄道とは別箇の組織(例えば鉄道建設公団の如きもの)をもって対処するを適当と認める」と建議した。

国鉄線昭和41年10月号 鉄道新線建設の現状 から引用

これにより、 法律第三号(昭三九・二・二九)  

日本鉄道建設公団法 に基づき発足することになります。

第一条の目的には、

(目的)

第一条 日本鉄道建設公団は、鉄道新線の建設を推進することにより、鉄道交通網の整備を図り、もつて経済基盤の強化と地域格差の是正に寄与することを目的とする。

この制度により、鉄道建設公団では次回後述しますが、無償譲渡のローカル線といわれる、AB線と、幹線系のCD線に分類されることとなり、前者のAB線は無償路線といえ、実際には走らせれば赤字が増えるような路線ですから、赤字が増えることになります。

また、CD線に関しては、当初から有償路線ですので、使用料を公団に支払わなくてはならず、こちらも長期に亘り赤字を抱えることになります。

このように、国鉄の赤字を増大させる仕組みが、鉄道建設公団でした。

 

続く

 

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日本国有鉄道研究家・国鉄があった時代

 

 

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