鉄道建設公団といってもピンと来ない方も多いのではないでしょうが。
現在、この組織は JRTT 鉄道・運輸機構 ( 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 )と呼ばれる組織であり。元を正せば。
運輸施設整備事業団 と鉄道建設公団が合体した組織でした。
両組織の概要は以下の通りです。
- 運輸施設整備事業団・・・ 船舶整備公団 と 鉄道整備基金(旧新幹線鉄道保有機構 を改組したもの)が一体化して1997(平成9)年10月に統合された組織
- 鉄道建設公団・・・・・・1964(昭和39)年3月に設立された組織
には鉄道建設審議会が残り、国鉄に対して新線建設の指示を出してきたわけです。
しかし、独立採算制を建前とする国鉄にしてみれば、建設しても赤字になる路線を建設することは経営上も好ましくないこともあり、十河総裁の時代には思い切って新線建設の費用を圧縮してきたのでした。
そのあたりの事情は、国鉄の部内紙交通技術 1964年5月号 建設線あれこれ公団誕生の背景に詳しいので、引用してみたいと思う。
公団誕生の背景
自民党の高度成長政策は、都市と農村の所得格差をもたらし、人口の郡市集中を生んだ。しかし自民党の基盤は農村にあるため、これが対策は誠に頭の痛いことである。ただ交通の便利を与えることになり、このような格差是正はかなり救われるし、かつ工事そのものが、職を与えるといった考えが、建設線の基本的な考え方である。この点、 世は道路時代ではあるが、わが国特有の山岳地形と雪国の多いことから、鉄道に対する希望は依然として強く、鉄道の使命を改めて見直さんとする動きが自民党交通部会を中心として起っていた。これに対し、国鉄は運賃値上げの道具として建設線を徹底的に圧迫して、これのリアクションが運賃値上げ後表面化し、忠実に建設総の義務を履行せざるを得なくなったのである。
しかし国鉄の従来の経緯からして 、 国鉄はこれ以上踏込んでやることができなかったのは事実であり、これがため昭和37年5月、鉄道建設審議会において政府の公共投資とすべきことを勧告し、別組織をもって建設することが議決された( 別表参照)。これの主たる原動力となったのは現大蔵大臣の田中角栄氏で、当時政調会長であった。その後第 2 次池田内閣で田中氏は大蔵大臣となった関係上、財政的に反対すべき理由を失ったのである。この間運輸大臣は斎藤昇氏から綾部健太郎氏にパトンタッチされた。
参考:別紙:鉄道建設公団の建議
再建計画で鉄道路線の新規建設がストップ
鉄道建設公団は、鉄道敷設法に基づき、運輸審議会が答申する路線を建設する組織として誕生したわけで、国鉄は完全にその権限を奪われてしまう形となります。
国鉄は輸送量が見込めるCD線(大都市交通線・幹線)に冠しては有償譲渡ですので、国鉄はその建設費用の償還を鉄道建設公団に対して行う必要があり、更には最終的には国鉄の所有となるので、地方納付金の対象とされていました。
その反面、無償譲渡のAB線の場合は、貸与という形となるため地方納付金の発生はないものの、その運用は国鉄が行わなくてはならず、その路線で発生するであろう赤字は国鉄が負担することとなっていました。
結果的に、国鉄としては新線(特にローカル線)が開業する度に、その赤字が増大すると言う結果となり、国鉄の経営を更に悪化させる結果となるのでした。
そこで、鉄道建設公団をどうするかと言うことが真剣に議論されるようになりました。
その辺はもう少し資料を探してみることとしますが。
当初は、青函トンネルを除く全ての建設中の路線が中止されたことから、廃止しても良いのではないかという意見も出されたのでした。
結果的には、三陸鉄道の例(鈴木善幸が首相であったことから、実現したとも言えるわけですが)から、地元がその建設を求めて開業させる場合に限りその工事を再開できるとして、智頭急行や北近畿タンゴ鉄道(運営はウイラートレインズ)ほくほく鉄道などが開業することとなり、鉄道建設公団は生き残ることとなります。
さらに、国鉄が建設主体となっていた、東北新幹線盛岡以北、及び九州新幹線、鹿児島ルート、長崎ルートに冠しては、鉄道建設公団が引き継げるように法律案が改正されています。
旅客鉄道株式会社が建設主体とされている新幹線鉄道の建設に関する事業の日本鉄道建設公団への引継ぎに関する法律(昭和62年法律第104号)
この記事が気に入りましたらぜひ、クリックをお願いします。m(__)m
*****************************************************************
取材・記事の執筆等はお気軽にお問い合わせください。
下記、入力フォームからお送りいただけると助かります。
http://jnrera.starfree.jp/contact.html
日本国有鉄道研究家・国鉄があった時代
*****************************************************************