恋活イベントが終わったあと、まっすぐ帰るのもアレなので、 適当に赤提灯系のお店で一人打ち上げをする。
せっかくなので初めての店に入る
この店の店長がめちゃくちゃ江戸っ子だった。
「兄ちゃん一軒目かい?」
「近くに住んでんの?」
いきなり距離が近い
もう、この距離の詰め方が好きだ大将
しかも大将は全て 「あいよ!」で返事してくれる。
カウンター近くで飲んでると、大将と常連が盛り上がっている。
でも、よく聞くと 今ここにいない常連のダメ出しだった。
『あいつは結婚できねぇよ』
『あいつは酒癖が悪いんだよ』
『好きな人の愛情表現が特殊すぎる』
『性癖が異常だよ』
『やすしいんだろ、あいつとそっくりだわマジで』
やすし、 一体何をしたんだ。
酒のつまみにもってこいの恋愛事情が展開される中、
店長が急に俺にロックオン。
「お客さんは けっこう遊んでんの?!」
「え? いや…全然...そんな...」
オレコミュ障モード発動。
「口ごもるってことは 遊んでるってことだな!笑」
決めつけが早すぎる。
たぶんこの大将は思ったことを3秒以内に口にするタイプ。
そして合間に中国人へのバイトへ日本の文化がなんたるかを語る
「常連さんの顔と、よく飲む酒を覚えたほうがいいぞ!」
「こんなんじゃ どこ行っても通用しないよ!」
バイトの青年、ひたすら 「ハイ…」 とうなずく。
でも、その “ハイ” も小さい。
「もっと 元気よく!ハイッ! って言え!笑」
もう完全に部活のノリ。
酒場の雰囲気と関係ない 精神修行 が始まってる。
俺は 静かにハラミを噛みしめる。
ハラミは美味い。
この塩加減、完璧。
何か絶滅寸前の昭和のノリの居酒屋の大将って感じがする
そんな 昭和の残り香が濃厚な居酒屋 で、
俺はただ 静かに20代の頃に入った居酒屋を思い出す。
気に入らないお客に厳しい大将
バイトは ひたすら修行モード。
仲良くなった常連同士で噂話を肴に酒をあおる。
時代は変わっても、
こういう店はが少しくらいあってもいいかも知れない。
「お客さん、またね!」
大将の元気な声で送り出される
たぶん、この店はずっとこんな感じなんだろう。
大将がガハハと笑い、
余計なお世話な感じがするがバイトに厳しく、人情にアツい
時代は変わっても、こんな店が残ってるのがなんだか嬉しい。
また気が向いたら来よう。
この どうでもいい話を肴に飲める感じ が、
妙に 心地いい夜 だった。