サニーデイ・サービス『DOKI DOKI』感想&レビュー【いい歌だなぁ】 | とかげ日記

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●いい歌だなぁ

サニーデイ・サービスの曲は抑制が効いているものの分かりやすくドラマチック。それは、皆がノれる音楽だということ。それでいて繊細な筆致。オシャレで垢抜けていて歌ものとしての歌の力が彼らにはある。

フォーキーな音楽性と歌心はくるりの岸田さんと並ぶ素晴らしさだ。本作『DOKI DOKI』に収録されている#2「幻の光」は、くるりの最新曲である「真夏日」のようなおごそかな味わいがある佳曲だ。

僕がサニーデイ・サービスに出会ったのは高校生の頃だったっけな。なぜか他にも必聴とされる名作が彼らにはあるのに『MUGEN』ばかり聴いていた。特にラストを飾る「夢見るようなくちびるに」の淡い切実感は僕を虜にして止まなかった。そして、それはとても良い経験だった。今でも大切な思い出の一つだ。



1992年に活動開始した彼らは、2000年に一度解散する。それ以降の僕は彼らの音楽を聴いてこなかった。しかし、2010年代に僕がファンになった笹口騒音さん(うみのてetc)をバンマスの曽我部恵一さんが推してくださっているのを知り、その流れで聴き始めた。聴き始めたら、名曲ばかりだった。

2008年に活動再開してからの曲では、「桜 super love」が一番好きだ。 今から5年以上前の曲だが、曲に強度とキャッチーさがあり、ずっと聴いていられる。この曲は亡くなった人との絆を歌った曲なのかなと僕は思っていて、父を亡くした僕の悲しさに寄り添ってくれた。



それでは本作を詳しく見ていこう。

#1「風船讃歌」は歌詞にもあるとおり、風船が空を飛んでいくようなささやかな高揚感があり、アルバムの幕開けにふさわしい曲だ。「世界が終わる日も潮風に乗って/君の方へぼくは飛ぼう」という歌詞の気楽さが切実だ。



#3「ノー・ペンギン」。冒頭でボサノバの曲かなと思っていたら、いきなりハイテンポのロックンロールに様変わりする。僕が聴いているアップルミュージックではe(Explicit Content : 露骨な表現のコンテンツ)指定されていて、なぜかなと思ったら、F●ckという単語が使われているんだね。ボサノバとFu●kが共存する世界観って、珍しいかもしれない。

#4「GOO」はWeezerのように魅力的なパワーポップだし、アジカン「AとZ」と似た強いメロディに翻弄される。そして、#5「メキシコの花嫁」のエスニックな妖しい香りにクラクラする。音楽的な引き出しが多彩だと思う。

彼らの他作品と同様に、物語や光景を細部まで豊かに描き切るバンドとしての美学を感じる。#6「ロンリー・プラネット・フォーエバー」は一曲を通して聴くと、一つの物語を読み終えた気持ちになる。#7「サイダー・ウォー」では四つ打ちで安定して物語は進んで頼もしい。#8「海辺のレストラン」はサーフロック的な軽快な流れとガレージロック的な痛快なラフさが素晴らしい。一つの光景を描けていると思う。

#9「こわれそう」は素朴さと洗練の具合が同居する曲。失恋か死別かは分からないけれども、辛く混乱する思いをこのタイトルのハイテンポ曲に乗せるという発想がいいね!

#10「家を出ることの難しさ」。笹口騒音オーケストラの曲を想起させる、叙情と歌心を感じられる名曲。アウトロのもの言いたげなギターが魅力的だ。

本作を一枚通して聴いても、何か音楽的に新しいことをしているようには思わなかった。昔からのロックやフォークの良いところを取り入れて懐かしさを憶える音楽だと思った。そして、若手バンドでは醸せない、フラワーカンパニーズのような円熟味と青春感の美味しいブレンド的な魅力も感じる。

ああ、いい歌だなぁと思うも、目新しいフックがないので中毒性は無さそうだ。ただただ、自然のそよがせに吹かれているようなオーガニックな音楽で嬉しくなった。



Score 7.8/10.0

🦎おまけ🦎
曽我部恵一さんもカバーした、笹口騒音オーケストラ(愛称:笹オケ)のこの曲をどうぞ🎺


笹口騒音オーケストラ「NEW MUSIC, NEW.LIFE」

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