仕事のできる

 

スタッフの

 

退職が続いている。

 

 

 

 

退職理由は

 

仕事の出来ない

 

同僚との確執。

 

 

 

”わたしは、

 

 こんなにがんばっているのに

 

 まわりは

 

 仕事をしてくれない。

 

 やってられない。”

 

 

 

 

 

仕事のできる

 

スタッフから

 

去り際に

 

ひとこと。

 

 

 

”この店は

 

 わたしが辞めたら、

 

 もう終わりです。”

 

 

 

 

しかし

 

あんがい

 

終わらない。

 

 

 

店は

 

明るくなり

 

活発な議論が巻き起こり

 

売り上げは

 

伸びてしまうことがある。

 

 

 

なぜ

 

そんな

 

不思議な現象が

 

おこるのか?

 

 

 

あんがい

 

店をまとめるのに

 

知識や

 

スキルは

 

いらない?

 

 

 

 

じゃあ

 

 

なにが

 

 

必要なのか?

 

 

 

 

 

 

江戸時代の中頃、

 

 

5代将軍と


 

6代将軍の懐刀(ふところがたな)として

 

 

活躍した


 

老中(幕府の重役)がいた。




 

名前を、

 

秋元喬知(あきもと たかとも)といった。




 

すぐれた

 

行政手腕を発揮し、


 

人民を愛し、

 

 

そして


 

人民からも

 

 

深く愛された老中だった。




 

どんな人物?

 

 

 

 


ある雪の日


 

秋元喬知(あきもと たかとも)は、


 

長男と

 

次男の二人の息子を連れて

 

町へ出かけていった。



 

秋元喬知(たかとも)は

 

駕籠(かご)に乗っていたが、

 

二人の息子は、

 

歩かせた。


 

 

二人の息子は、

 

ぶるぶる震えながら、

 

鼻を赤くして 

 

一生懸命に雪道を歩いた。

 

 

もう、

 

二人とも

 

手の感触がないほど体は冷え切っていた。


 

秋元喬知は、

 

駕籠(かご)の中から、


 

ちらり ちらりと

 

二人の息子たちの様子をうかがっていた。


 

やがて、

 

屋敷に帰ってくると、


 

秋元喬知は二人の息子たちを呼んだ。




 

”どうだ。

 

 本日の雪の日の散策をどう感じたか?”

 

 

長男

 

”とても冷とうございましたが、


 父上のお供をして散策できたので、寒さは何とも感じませんでした!”



 

秋元喬知

 

”そうか。

 

 じゃあ、お前(次男)はどうだった?”



 

次男

 

”とても寒うございました。

 

 いくら父上のお供でも、こんな散策は二度とゴメンです。。。”

 

 

 

秋元喬知

 

”そうか。”


 秋元は笑顔で、二人の子供たちに話はじめた。

 

 

 

秋元喬知


 

”兄の方は、心を偽って(いつわって)おる。

 

 ほんとうは、寒くて父の共などいやだったはずだ。”


 

” にもかかわらず、おまえは父に孝行を尽くさなければいけないと思って、


 

 また、弟に手本を示さなければと思って、”無理”をしておる。


 


” 弟の方は、正直だ。


  

 じぶんが感じた、そのままの心を語っておる。”



 

”いいか、

 

 おまえたちは、やがて大きくなったら政治を行う立場になる。

 

 そういう時に、

 

 おまえたちは、

 

 世の中の人々の気持ちを、

 

 自分の気持ちとして

 

 感じとれる人間になってほしい。”


 

 

 


”それには

 

 兄のように、


 無理をすることはよくない。


 

 

 弟のように、


 ”寒い日には、

 

 寒い”と素直に感じて、


 話ができることが大切なのだ。

 

 

 

 そして、

 

 世の中の人々は、

 

 さぞかし寒がっていることだろう。と寄り添うことが大切なのだ。


 


 

 しかし、

 

 また、

 

 おまえたちは

 

 ”武士”だ。

 

 

 

 武士である以上、


 

 寒いと感じたことを 


 

 そのまま

 

 ”寒い”

 

 というのでは、

 

 誇り(プライド)がない。


 

 

 武士は、

 

 誇り(プライド)がなくてはいけない。


 

 

 

 政治を行う者は、 

 

 ここが

 

 むずかしい。

 

 
 

 

 大切なのは、


 

 人々は、

 

 さぞかし寒かろう。と思いつつ、


 

 武士としては、

 
 

 その寒さを口に出さずに、


 

 人々のための政治を行っていくことが大切なのだ。

 


 

 

 わかるか? ”

 


 ふたりの息子たちは深くうなずいた。

 

 


 

秋元喬知

 

”わたしは、おまえたちのような息子を持って、しあわせだ。

 

 さがって、すぐに風呂に入り温まりなさい”




 

秋元喬知は、

 

 

周囲のものから、

 

 

”叱っても、怒らない人”といわれていた。


 

そして、

 

秋元の教え方は、

 

 

”自分の欠点を、

 

自分で考えさせる。”というものだった。