「民主党の置き土産」というデマ 第1回


「民主党の置き土産」は間違いで、実は「麻生内閣の置き土産」だった!?
 
 「民主党の置き土産」というのは、平成25年2月頃からネットで拡散され始めたデマです。
適法に3か月を超えて在留する外国人が国民健康保険の加入対象となったのは、麻生内閣の法改正が原因です。
この記事では、麻生内閣当時の国会答弁や国民健康保険法との整合性、政府の資料等、具体的な根拠を提示し、外国人の国保加入要件緩和が、事実上麻生内閣で決まっていたことを証明していきます。

 

・外国人の国保加入要件が1年以上の在留資格から、3か月を超える在留資格に緩和されたワケとは?

 

画像作成者・著作権者 macchan21(2018)

 

 外国人の国保加入要件緩和を批判するならば、まず国籍条項を撤廃したことの方を批判すべきです。

そもそも、国保の国籍条項は昭和61年に中曽根内閣によって撤廃されており、1年以上の在留資格の外国人が加入対象となっていました。

そして、平成21年(2009 年) 7 月に、麻生内閣で住基法改正法(*1)と、入管法等改正法(*1)が成立・公布され、適法に3か月を超えて在留する外国人が住民登録されることになりました。

住民登録されたことによって、外国人も住民票を取る(*2)ことができるようになりました。

ご存じのように、住民票は住所の証明として利用できます。

つまり、外国人も住民登録によって、住所の証明ができることになりました。
国民健康保険法第5条には、「住所を有する者は、国民健康保険の被保険者とする」とあります。
適法に3か月を超えて在留する外国人が住民登録されたことによって、「住所を有する者」に該当することになりました。

以上のように、麻生内閣で法律が成立した時点で、適法に3か月を超えて在留する外国人が、国保の加入対象となることが事実上決まっていたのです。
公布から3年以内に法律を施行することは、法律の附則により決まっていたため、3年後の平成24年7月、民主党政権の時に施行されました。

なお、「民主党の置き土産」の根拠となった民主党政権当時の小宮山大臣の省令については、第3回以降説明の予定です。

*1:法律の正式名は、「法令等の略称」の項を参照ください。

*2:一般的には「住民票を取る」と言いますが、正しくは「住民票の写しの交付」になります。

※国民健康保険のほか、後期高齢者医療、介護保険、児童手当、国民年金も住民登録された外国人が適用対象になっています。

 

  【 も く じ 】
(第1回)

・法令名等の略称
・麻生内閣当時の国会答弁
・国民健康保険法第五条
・厚生労働省の資料
・市役所のホームページ
・外国人住民台帳法と新たな在留資格制度の検討経緯

・「新たな在留管理制度に関する提言」
・正々堂々と事実で批判せよ!
・参考文献

(第2回)

・第一次安倍内閣の資料

・地方自治法の住民の権利

・第一次安倍内閣で、「外国人の国保加入促進」を提言
・外国人台帳制度に関する懇談会
・麻生総理の答弁書
・外国人の住民登録は、移民推進議連の提言だった!
・大規模な移民受け入れを行うための基盤整備!?
・国保の国籍条項撤廃は、昭和61年
・国際人権規約

・人種差別撤廃条約

・住基法改正法附則

・5年も経つのに、そのまんま
・デマを指摘しているブログ、facebook等
・参考

・参考文献


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・法令名等の略称
法令名が長いため、法令名等について、以下の通り略称を用います。

略称  :  正式名称
住基法:「住民基本台帳法」(昭和42年法律第81号)
住基法改正法:「住民基本台帳法の一部を改正する法律」(平成21年法律第77号)

入管法:「出入国管理及び難民認定法」(昭和26年政令第319号)
入管特例法:「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(平成3年法律第71号)

入管法等改正法:「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」(平成21年法律第79号)
外登法 :「外国人登録法」(昭和27年法律第125 号)
国保:国民健康保険
国保法:国民健康保険法

参考:

住基法改正法 参議院議案情報 第171国会で成立

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/171/meisai/m17103171044.htm

住民基本台帳法の一部を改正する法律の概要(外国人住民関係)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000043853.pdf

入管法等改正法 参議院議案情報 第171国会で成立

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/171/meisai/m17103171051.htm


略称については、以下の報告書から引用しました。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000040779.pdf

 

・麻生内閣当時の国会答弁

 

 平成21年7月、麻生内閣当時の国会で、「住民基本台帳にある外国人につきましては、国民健康保険の適用の対象になるというふうに考えてございます」と、述べたうえで、

今回の住基法の改正法案が成立した場合には、その施行に合わせまして、国民健康保険につきましても所要の法令上の規定の整備を進め、住民基本台帳と同じ考え方に合わせていきたいというふうに考えておるところでございます」と答弁しています。

したがって、法律の施行に合わせて、住民登録をした3か月を超える在留資格の外国人が国保の適用対象となることが、麻生内閣の時点で決まっていたことになります。

そして、施行に合わせて「法令上の規定の整備」をすることも、この時点で決まっていたことになります。

政府参考人(榮畑潤君) 

住民基本台帳にある外国人につきましては、国民健康保険の適用の対象になるというふうに考えてございます。したがいまして、今回の住基法の改正法案が成立した場合には、その施行に合わせまして、国民健康保険につきましても所要の法令上の規定の整備を進め、住民基本台帳と同じ考え方に合わせていきたいというふうに考えておるところでございます。

平成21年7月7日 参議院 総務委員会

第171回国会 参議院 総務委員会 第24号

出典:国会会議録検索システム

なお、平成21年6月18日の衆議院総務委員会でも、同様に答弁されています。

 

参考:国会会議録検索システム
http://kokkai.ndl.go.jp/


・国民健康保険法第五条

 

 行政サービスは、法令に基づいて適用されます。

国民健康保険については、 国民健康保険法第五条で、「住所を有する者は、国民健康保険の被保険者とする」と規定されています。

外国人も住民登録によって住所を有することが公的に証明され、国保の被保険者に該当することになりました。

国民健康保険法
http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?re=2&vm=01&id=2453
(被保険者)
第五条 市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)の区域内に住所を有する者は、当該市町村が行う国民健康保険の被保険者とする。

住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=342AC0000000081_20200910_502AC0000000041

第一章 総則

(目的)
第一条 この法律は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)において、住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り、あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため、住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め、もつて住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とする。
第四章の三 外国人住民に関する特例
(外国人住民に係る住民票の記載事項の特例)
第三十条の四十五 日本の国籍を有しない者のうち次の表の上欄に掲げるものであつて市町村の区域内に住所を有するもの(以下「外国人住民」という。)に係る住民票には、(中略)ついて記載をする。

行政サービスの提供は、法令の定めによるという答弁

○国務大臣(佐藤勉君) 各種の行政サービスが外国人に提供されるかどうかについては、その個別の法令に定めるところによります。例えば、国民健康保険などについて、現行制度上、在留資格を有する外国人に対して提供される一方で、義務教育や助産施設における助産、結核予防のための健康診断などについては在留資格の有無にかかわらず提供されているところでございます。

平成21年7月7日 参議院 総務委員会

第171回国会 参議院 総務委員会 第24号

出典:国会会議録検索システム

https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117114601X02420090707/31

 

また、総務省のホームページには、住民基本台帳制度の適用対象者として、「住所を有するものが対象者となります」とあります。

したがって、住民登録によって国保法五条の「住所を有する者」となり、国保の被保険者となったことになります。

また、転入届をすれば、国民健康保険などの行政サービスの届出も済ませたことになり、外国人住民の利便性が向上しました。

外国人住民に係る住民基本台帳制度 総務省

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/zairyu/

住民基本台帳制度の対象者 

 日本の国籍を有しない者のうち次の表の左欄に掲げるものであって市町村の区域内に住所を有するものが対象者となります。

外国人住民の方にとっての利便性

・住民基本台帳は住民に関する事務処理の基礎となるものであり、転入届などにより、国民健康保険など、各種行政サービスの届出との一本化が図られ手続が簡素化されました。

 

外国人住民も住民基本台帳制度の適用対象になりました。 

 我が国に入国・在留する外国人が年々増加していること等を背景に、市区町村が、日本人と同様に、外国人住民に対し基礎的行政サービスを提供する基盤となる制度の必要性が高まりました。
 そこで、外国人住民についても日本人と同様に、住民基本台帳法の適用対象に加え、外国人住民の利便の増進及び市区町村等の行政の合理化を図るための、「住民基本台帳法の一部を改正する法律」が第171回国会で成立し、平成21年7月15日に公布、平成24年7月9日に施行されました。
 本法律の施行により、外国人住民に対して住民票が作成され、翌年平成25年7月8日から、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)及び住民基本台帳カード(住基カード)についても運用が開始されました。

なお、国保法第六条で適用除外が規定されており、職場の健康保険に加入している場合や、生活保護を受給している場合などは国保の対象外です。


・厚生労働省の資料

 

 外国人が住民基本台帳に適用されたことによって、国民健康保険も適用となったことは、厚生労働省の資料でも説明されています。

 

画像出典:平成23年度 全国高齢者医療・国民健康保険主管課(部)長及び後期高齢者医療広域連合事務局長会議 資料

平成24年2月6日 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/topics/2012/02/tp120205-1.html

保険局国民健康保険課説明資料

2.制度関係の主要事項について[3] 
http://www.mhlw.go.jp/topics/2012/02/dl/tp120205-1-12.pdf 

p.4 ③ 住民基本台帳法改正に伴う外国人に対する国保・後期高齢者医療の適用について

 

画像出典:平成24年度 全国高齢者医療・国民健康保険主管課(部)長及び後期高齢者医療広域連合事務局長会議 資料

平成25年3月1日 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/topics/tp130308-01.html
保険局国民健康保険課説明資料

3.保険者に対する助言等について
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/topics/dl/tp130308-01-16.pdf
p.66 住民基本台帳法改正に伴う外国人に対する国保・後期高齢者医療の適用について

 

画像出典:全国高齢者医療主管課(部)長及び国民健康保険主管課(部)長並びに後期高齢者医療広域連合事務局長会議

会議資料 

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000192101.html
 保険局国民健康保険課説明資料<国民健康保険分科会> 平成30年1月30日
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000192092.pdf

p.147 市町村国保における外国人への適用要件

 

・市役所のホームページ

 

 3か月を超える在留外国人が国保の加入対象となった原因について、掲示板やまとめサイト等で「小宮山大臣の省令」や「通達」が原因であるように書かれています。

しかし、市役所等のホームページには、「法改正」や「住民登録」、「住民票の作成」が原因であることが記載されています。

その原因となった法案を、国会に提出したのは麻生内閣であり、麻生内閣の時に法案は成立・公布されました。

つまり、国保の外国人加入要件緩和の原因は、麻生内閣にあります。

横須賀市
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/3070/g_info/20140118.html

国民健康保険が適用される外国人の方

平成24年7月9日より、住民基本台帳法の改正に伴い、今までの外国人登録制度が廃止となり、在留期間が3か月を超える外国人の方も、住民票が作成され、国民健康保険の加入対象となりました。

山口県柳井市
http://www.city-yanai.jp/site/kokuho/kokuho-gaikokujin.html
外国人の手続き(在留期間が3ヶ月以上の人は、国保に加入することになります。)
平成24年7月9日以降、外国人登録制度が廃止され、外国人の方も住民基本台帳法の適用対象に加わります。それに伴い住民票が作成され、3ヶ月を超えて在留する外国人は国民健康保険に加入していただくようになります。


・外国人住民台帳法と新たな在留資格制度の検討経緯

 

 平成20年4月の国会答弁から、新たな在留資格制度の検討は、自民党が平成17年に始めたことが分かります。

また、外国人の健康保険未加入問題についての質問には、「適法に滞在されていらっしゃる外国人に関しましては国籍にかかわらず日本人と同様に適用する」と答弁されています。

副大臣(河井克行君) 
 そもそもこの新たな在留管理制度なんですけれども、自由民主党で平成十七年の三月に治安対策特別委員会で小委員会を設置をしていただきまして、六月に、新たな入国管理政策への提言という形でお取りまとめをいただいて政務調査会で御決定をいただいておりまして、政府としましては、それを受けていろいろと動きを行っております。

https://kokkai.ndl.go.jp/txt/116914533X00620080423/12

 

○副大臣(西川京子君) 御質問の健康保険制度についてお答えさせていただきます。
 我が国におきましては、社会保障制度、これはもう国民生活を守るセーフティーネットとして大変重要なわけでございまして、これは原則として、適法に滞在されていらっしゃる外国人に関しましては国籍にかかわらず日本人と同様に適用する、そういうことになっております。

出典:第169回国会 少子高齢化・共生社会に関する調査会 第6号 参議院
平成二十年四月二十三日(水曜日)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/169/0099/16904230099006c.html

012 河井克行、013 西川京子

新たな在留資格制度の検討経緯
http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact/newimmiact.html
政府における検討
平成17年7月19日
犯罪対策閣僚会議の下に「外国人の在留管理に関するワーキングチーム」を設置
平成19年6月22日
「規制改革推進のための3か年計画」閣議決定(抄)
平成19年7月3日
「外国人の在留管理に関するワーキングチームの検討結果」を犯罪対策閣僚会議に報告
平成20年3月25日
「規制改革推進のための3か年計画(改定)」閣議決定(抄)

出入国管理政策懇談会・在留管理専門部会おける検討
平成19年2月1日
法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会の下に在留管理専門部会を設置
平成20年1月31日
最終報告書「新たな在留管理制度に関する提言(案)」を取りまとめ,出入国管理政策懇談会に報告
平成20年3月26日

報告書「新たな在留管理制度に関する提言」を法務大臣に提出

外国人台帳制度については、下記の懇談会で検討されていました。

 

外国人台帳制度に関する懇談会
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/zairyu_1.html

平成20年4月17日~平成20年11月13日

 

参考:「新たな在留管理制度に関する提言」 平成20年3月

http://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/nyukan_nyukan44-11-3.html

(PDF)http://www.moj.go.jp/content/000007263.pdf

第1はじめに 1 在留管理専門部会設置の経緯

 

「外国人台帳制度に関する懇談会報告書」平成20年12月18日
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/pdf/daityoseido.pdf

※これらの提言や報告書は、入管法等改正法と住基法改正法の法案に反映されています。

 

・「新たな在留管理制度に関する提言」

 

「新たな在留管理制度に関する提言」 

平成20年3月26日

http://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/nyukan_nyukan44-11-3.html#3-10
第3 10 適法に在留する外国人の利便性の向上
(2)その他の利便性の向上

 (1) 適法に在留する外国人の台帳制度の整備による行政サービスの向上
 市区町村において,適法に在留する外国人の台帳制度が整備されれば,外国人住民に対して教育,医療,福祉等各種行政サービスが円滑に提供されることが期待される。また,同制度と住民基本台帳制度の連携により,混合世帯が実態に沿った形で正確に把握できるようになれば,混合世帯に対する児童手当の支給等各種行政サービスの提供が円滑に行われるようになることも期待される。

(2)  各種分野における新たな外国人支援施策の促進

 法務大臣が正確に把握する情報や市区町村の長が上記台帳制度により把握する情報を活用することにより,現在,政府全体で進めている,日本語教育の充実,外国語による情報・サービスの提供等の外国人が暮らしやすい地域社会づくり,就学促進等の外国人の子供の教育の充実,外国人の労働環境の改善,社会保険の加入促進といった生活者としての外国人を支援する各種施策が推進されることが期待される。

・正々堂々と事実で批判せよ!

 

 民主党を批判するなら、正々堂々と事実のみで批判すべきです。

デマで批判するのは卑怯です。

 この記事では、「民主党の置き土産」がデマであることを、明確な証拠を示して証明しました。

外国人の国保加入要件緩和は、麻生内閣の法改正が原因だという証拠はまだあります。

興味のある方は、第2回も読んでいただけると幸甚です。

 

「民主党の置き土産」というデマ

~外国人の国保加入要件緩和の真実②~

https://ameblo.jp/kycxy981/entry-12391696821.html

 

テーマ:民主党の置き土産というデマ

 

 

・参考文献

 

「フェイクニュースの見分け方」 新潮新書 烏賀陽弘道著 新潮社

 

 


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