「オレに内緒って・・・なんの話をしているのだよ・・・ハニがどうかしたのか?」
内緒にしたかったオレに会話を聞かれた両親のぎくりとした顔は、多分初めて見た表情かもしれない。
「お・・お帰り・・・・なんでもないわ・・具合が悪くて・・・ウンジョにピザを取ったんだけど、スンジョは・・・・・」
オレに隠している事が何なのか大体想像がつく。
両親が隠そうとしている事を聞きだそうと言う考えは気が咎めるが、それがハニの事なら自分の迷いを止められるかもしれない。

「夕食はまだ食べていないし、親父も帰って来たばかりだろ?三人で<ソ・パルボク>に、食べに行かないか?久しぶりにおじさんのククスが食べたくなった。」
この言葉がオレにとってどれだけ重い言葉なのか、血の繋がりのある両親でも分からないだろう。

「ダ・・・ダメよ。今日は、臨時定休日だから・・・・ね、パパ。」
「ああ・・さっき、食べに行くからって連絡したら臨時休業で作れないって、ギドンが言ってたなぁ。他の店にしようか・・・・ほら、昔スンジョがバイトしていたファミレスなら、ウンジョにデザートでも食べさせられるし・・・・・そうしよう、スンジョ。」
二人の何か隠しているのか慌てた様子で、自分には知らせたくないことがあることにスンジョは気づいた。
ママの体調が悪いとウンジョから電話を掛けてきたのに、仕事から帰って来たばかりの父が外食するために電話を掛けたはずはない。
慌てた様子の両親から視線を外さないで、ポケットから携帯を出して、スンジョはどこかに電話を掛けた。

「もしもし・・・・・・ペク・スンジョですけど・・・・ジュングか?」

<ぺ・・・・ペク・・・スンジョ?>
「今から家族で食べに行こうと思うけど、いつもの場所を用意してほしい。」
電話に出たジュングが、スンジョからだと知って慌てている様子がはっきりと伝わった。
ジュングが電話の応対をしている時に聞こえてきた声は、ハニの友達のミナとジュリの声。
その会話の中に、ハニの笑い声がスンジョにははっきりと聞こえた。

<き・・・・今日は・・・・・予約客の貸切で・・シェフが手が外せへんのや・・・・・悪いのぉ・・・・・。明日も明後日もその次も・・・・一週間予約客で・・いっぱいや・・・・・今・・料理を運ばんとあかんから・・・・・・・>
先日ハニがどこにいるのかをギドンの内緒で教えてくれた時のジュングの態度と違っていた。
あの時は、ギドンの内緒でとは言っていたが、ハニをめぐってはライバル関係でも親しい友人のように話してくれた。
ギドンの店は繁盛していても、今まで一度も一週間予約客でいっぱいになることはなかった。
都合が悪いのに電話を切ろうとしないジュングと、電話の向こうが急に静かになり人が慌てた様子で動いている時の音がわずかに聞こえた。

「今は静かみたいだから、食べたらすぐに帰る。じゃあ・・10分ほどでそっちに行く。」
スンジョはジュングが応えることはないと思い、そのまま電話を切った。



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